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28基のスピーカーを“音質重視”で設置

ソニーのオーディオ技術光る「AFEELA 1」のカーオーディオを体験!クルマの中を“最高のリスニングルーム”に

公開日 2025/12/29 07:05 栗原祥光
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「ソニーとHondaが手を組み、新しい価値を提供する」。2022年に突如持ち上がったソニー・ホンダモビリティ誕生は多くの人々の驚きと関心を集めた。

あれから3年。第1弾となる電気自動車「AFEELA(アフィーラ)1」が、米国を皮切りにデリバリーが始まる予定だ。AFEELA 1の試作車、そのオーディオをご紹介する。

銀座のカーギャラリー「G735 Gallery」にて「AFEELA 1」を2026年6月まで展示中!

ソニーの技術で開発された28基のスピーカーを搭載

「将来あるべき自動車の姿」を追求するAFEELA 1。その1つが高度な運転支援である。

現在販売している車両の多くが、高速道路でのハンドル支援付き前走車追従型クルーズコントロールを搭載しているが、AFEELA 1は将来の自動運転機能レベル3を視野に入れた、18個のカメラ、1つのLiDAR、9個のレーダー、12個のソナーと計40個のセンサーを搭載している。これらによりドライバーに対し高度な運転支援を提供するという。

最先端の運転支援技術を搭載。車内エンタテインメントの新たな可能性を模索している

先進技術により安心して移動できるようになるAFEELA 1。となると次に「どのように車内を過ごすか」が、これからの自動車の価値として問われてくると担当者は語る。

そのひとつが車内エンタテインメントだ。映画、音楽、ゲームなどのコンテンツを車内に集めて、自宅でそれらを愉しむかのような体験ができるという。

車の上部にカメラと独自開発のLiDAR(中央)を設置。車両周辺の情報を詳細にモニタリングできる

サイドミラーにもカメラを設置し死角をなくす工夫がなされている

そこでAFEELA 1では、「音楽を聴く」ことから「音楽に包まれ、その世界に入り込む」という新しい価値を提供すべく、フロント3ウェイ(ウーファー・ミッドレンジ・トゥイーター)×2、リア3ウェイ(ウーファー・ミッドレンジ・トゥイーター)×2、センタースピーカー2個、サテライトスピーカー2個、ルーフエキサイター2個、サブウーファー2個、シートスピーカー2個×4と、計28基ものスピーカーを車内に配置。

AFEELA 1に搭載される28スピーカーの配置図

驚くべきは、車両設計の初期段階からスピーカー配置を決定したこと。通常、自動車の設計においてスピーカーの場所は、かなり限定されてしまう。だが妥協を排した追求は、その常識を打ち破ったというわけだ。

ユニークなのは、通常トランクルームに設置されるサブウーファーを、センターコンソール下側に配置に対向配置(アイソバリック方式)で設置したこと。サブウーファーの小型化はもちろんのこと、低域の遅延解消に効果がある。

さらにユニットは専用設計品。トゥイーターは振動板素材にシルクを⽤いたドーム型、フロントのミッドレンジとウーファーには多層カーボンファイバー複合振動板が奢られ、その他のスピーカーには多層カーボンファイバー混抄振動板、そして全てのユニットの磁気回路にはネオジム磁石が用いられているという。その設計手法はソニーのホームオーディオ技術が投入されているのは言うまでもない。

ドアに設置されたミッドレンジスピーカー。AFEELAのために専用開発された

再生モードは、臨場感が得られる「Immersive Theater Sound」、ステレオ再生に近い「Hi-Fi Audio」、後席でのエンタテインメントシステム向けの「Zonal Sound」の3種類。

一般的に、2chステレオ音源のサラウンド再生の中には、不自然な音場が提示されることもあるが、AFFILA 1では、AI解析を用いて元の音源から高精度でボーカルや楽器、コーラスなどの音源を分離。自然な音場再生を目指しているという。

また、国産車としては珍しくドルビーアトモスにも対応。ストリーミングでAmazon Prime(Music)にある映画や音源が愉しめる。

ヘッドホンのような不思議な包まれ感

「Immersive Theater Sound」モードでドルビーアトモスを使ったデモンストレーション音源で聴いた。

やや冷涼で知性と品のよさを感じさせる音触は、「SS-AR1」や「SCD-DR1」などといったソニーのハイエンドオーディオコンポーネント群の音そのものだ。

フロントのタッチパネルディスプレイで選曲やボリューム調整などが行える

解像度がカーオーディオとしては比類がないほど高く、またオーディオシステムはもちろんのこと車両そのもののS/Nも高い。

でありながら、これみよがしの解像感を誇示しない。それゆえ聴き疲れすることはなく、「この音楽はどのように再生するのだろう?」「この音楽にこんな音があったのか」といったオーディオ面での知的好奇心を満たしてくれる。

ソニーがハイエンドオーディオから離れて久しいが、そのDNAがAFEELAに受け継がれていることに驚きと感動、そして嬉しさがこみあげてきた。

音場は運転席とそれ以外の席で印象が異なる。運転席では、まるでヘッドホンで360 Reality Audioのような不思議な体験。「ヘッドホンをしていないのに、この音は何なんだ?」「このような音場をクルマで聴いたことがない!」と、没入感にただただ驚かされた。

後席は、そのような没入感は得られないものの、感心したのはシームレスな音場再現だ。

ドルビーアトモスは、オブジェクト指向とはいうものの、セッティングによっては「左上のスピーカーが鳴っている」などと場所が分かることがある。

車内の場合、スピーカーと試聴位置が近いことから、なおさら分かりやすい。だがAFEELAではスピーカーを意識することなく自然に音場が定位するではないか!

後席にもディスプレイを配置。自然なオーディオのつながり感も感じられる

自動車メーカー各社は、車内を「第2の家」と捉えて、様々な取り組みを行っている。AFEELAは、移動する最高のリスニングルームであり、移動するホームシアターを明確に目指しているといえるだろう。ソニーでなければ得られない体験がそこにある。

「もっと音場の拡がりが得られるよう、セッティングを詰めていきたい」と担当者は語る。嗚呼、早く完成版を聴きたい! 新たなるカーオーディオの地平を拓くAFEELAの発売が愉しみで仕方がない。

取材に対応してくださった開発スタッフ。左からソニー・ホンダモビリティ(株) 商品・サービス企画部 プロダクトコミュニケーション企画課 シニアマネジャー 光嶋良介さん、車両開発企画部 完成車企画2課 インテリアプロジェクトリーダー 内山博文さん、商品・サービス企画部ゼネラルマネジャー 纐纈 潤さん 

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