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PRオーディオシステムに “プラスオン” で高音質ストリーミングを楽しめる

20万円台では出色のクオリティ。SHANLINGネットワークプレーヤー「SM1.3」を聴く

公開日 2025/07/15 06:30 小原由夫
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高音質ストリーミング&ダウンロードサービス・Qobuz(コバズ)の立ち上げを機に、ストリーミングを高品質に楽しみたいという人が増え始め、同時にネットワークプレーヤーにも注目が集まっている。

そこでこの度、小原由夫氏が20万円から100万円までのミドル〜ハイエンドクラスのネットワークプレーヤー13機種を集め、一斉比較試聴を実施。その中から、SHANLING(シャンリン)ブランド「SM1.3」の試聴レポートをお届けする。

Android 12ベースのシステムに電源部も強化したRoon Ready対応機

ポータブルオーディオプレーヤーをはじめ、イヤホンやディスクプレーヤーなど幅広いラインナップを揃え、日本でも高い人気を誇るシャンリン。同社としては初のRoon Ready認証取得モデルが「SM1.3」だ。

SHANLING「SM1.3」(予想実売価格:税込207,900円前後)

Android 12をベースにカスタムしたシステムに、Rockchip社製の64bitデジタルオーディオプロセッサーを搭載。また、31Wトロイダルトランスを2基搭載するなど、機能とサウンドを高次元で両立している。

アルミ合金製で精悍かつ堅牢。トロイダルトランスも強力

横幅と奥行が300mm弱のスクエアなデザインで、アルミ合金製のボディがなかなか精悍かつ堅牢な印象。その前面にタッチスクリーン式5.8型液晶パネルを備える。内蔵DACチップは旭化成「AK4191EQ+AK4499EX」。Roon Ready対応で、MQAデコード機能を内蔵している点もポイント。ヘッドホンアンプは3段階ゲイン切り換えを備えるなど、なかなか本格的だ。カスタムメイドのトロイダルトランス2基を備えた電源部も強力。出力端子はRCA/XLR併設で、固定/可変が選択可能。

内蔵DACチップには、AKMのフラグシップチップセット「AK4191EQ+AK4499EX」を採用する
デジタル部とアナログアンプ部にそれぞれ独立した「電源分離設計」を採用している

Android対応の専用アプリ「Eddict Contoroller」はやや特殊で、スマートデバイスを本体とミラーリングして操作することになり、本体とまったく同じ操作性が叶う。最初は戸惑ったが、使ってみると案外快適。

シャンリンが用意する「Eddict Controller」アプリを用いて再生した

3次元的な階層が表現できている。第一印象はとてもいい感じ

テストは機器の内蔵ボリュームを使わず固定出力としてアキュフェーズ「E-3000」に結線した。再生はアプリをタブレット(iPad)にダウンロードして実施。すなわち再生等の操作は本体で行っていない。その主旨はつまり、既存のオーディオシステムにプラスオンしてストリーミングを楽しむことを前提としている。既にある程度高いクオリティが備わったオーディオシステムをお使いの読者の使用環境を想定してのことだ。

試聴はアキュフェーズのプリメインアンプ「E-3000」(495,000円/税込)にオプションのデジタル入力ボード「DAC-60」(99,000円/税込)を組み合わせ、そこにRCA接続して行った

もうひとつ配慮したことは、B&W「805 D4 Signature」およびクリプトン「KX-1X」という性格の異なるスピーカー2機種を準備し、同じコンテンツを使ってそれぞれの音の印象を確認したこと。分析的なレビューと、音楽的な楽しみという異なる角度から各機器の特徴を探ろうというわけだ。試聴曲についても、ボーカル、ジャズ、クラシックという3つのジャンルを用い、幅広く適性を探ってみた。

805 D4 Signature
音元出版試聴室のリファレンススピーカー、B&W「805 D4 Signature」(1,848,000円/税込・ペア)をメインに使用
KX-1X
さらなる検証用スピーカーとして、クリプトン「KX-1X」(357,500円/税込・ペア)も用意。サマラ・ジョイの楽曲を聴き比べた

まずは805 D4 Signatureにて試聴。サマラ・ジョイの声はサラッとした生成りの印象で、質感再現が柔らかで瑞々しい。音像には克明なボディ感もあり、しっかりとしたフォルムを感じさせる。S/Nも良好で、ステレオイメージには奥行きを感じる。

音場のレイヤーとしてボーカル、4管のアンサンブル、リズムセクションという3次元的な階層が表現できているのも申し分ない。4管のそれぞれの定位位置も明確に分離されており、リズムセクションは繊細かつ力強い。今回のテスト機中で最も安価なモデルながら、第一印象はとてもいい感じだ。

上原ひろみは、ローエンドががっちりとした重心の低いバランスで、表現力に大きな不満はない。やや膨らんだベース・トーンではあるが、力強くて安定感もある。ピアノのタッチは克明で、ドラムのトランジェントも良好。エフェクトのかかったトランペットがフワッと広がって立体的な響き。上原ひろみの曲に関しては、かなり満足度の高い再生音である。

しかしながらショスタコーヴィチでは低域がやや鈍重な印象で、コントラバスやティンパニの音をもう少し引き締めたいところ。欝屈した感じや迫力は出ているのだが、やや重たくて緩さが先にくる。一方でバイオリンの音色には悲哀さ、滋味深さが感じられ、ドラマティックな雰囲気がよく現れていた。

KX-1Xに替えての試聴では、柔らかで瑞々しく、しなやかな声のサマラ・ジョイが楽しめた。それでいて声には芯があって骨格ががっちりとしており、安定感もある。重心も低い。管楽器の質感がナチュラルで、硬さや粗をまったく感じない音だ。

アンサンブルが立体的に醸し出され、4管それぞれの短いソロのリレーもくっきりとセパレートしている。リズムセクションは精巧かつダイナミックだ。クリプトンの持っている音像定位の良さと音場再現力が本機と絶妙にマッチングし、相乗効果と相成った印象。20万円強でこのクオリティには脱帽だ。

この価格にしてはたいへんよくできたネットワークプレーヤーだ。欲をいえば、設置や接続ケーブル等の工夫で低域を引き締める方向のチューニングを試みたい。

【試聴楽曲】

・サマラ・ジョイ『ポートレイト』から「ラヴバードの蘇生」(96kHz/24bit)
・Hiromi's Sonicwonder『OUT THERE』から「XYZ」(96kHz/24bit)
・バイバ・スクリデ、ネルソンス指揮ボストン交響楽団『ショスタコーヴィチ:バイオリン協奏曲第1番、第2番』から「第3楽章:Passacaglia. Andante」(96kHz/24bit)

 

【SPEC】

SHANLING
ネットワークプレーヤー「SM1.3

オープン価格(予想実売:税込207,900円前後)

●ディスプレイ:5.8型 1080P Sharp HDタッチスクリーン ●メイン制御チップ:Rockchipデジタルオーディオプロセッサー ●RAM:4GB ●ROM:64GB ●対応サンプリングレート:PCM 768kHz/32bit、DSD512 ●周波数特性:20Hz - 40kHz(-0.5dB) ●THD+N:0.0003% ●ダイナミックレンジ:118dB(RCA出力)、121dB(XLR出力) ●チャンネルセパレーション:117dB ●S/N:118dB(RCA出力)、121dB(XLR出力) ●入力端子:同軸デジタル×1、光デジタル×1、USB-C×1、USB-A×2 ●出力端子:RCA×1、XLR×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1、I2S-LVDS×1、USB-A×1、ヘッドホン×1 ●サイズ:280Wmm×110Hmm×280Dmm ●質量:6.4kg ●取り扱い:(株)MUSIN


本記事は、『季刊・オーディオアクセサリー 197号』特集から抜粋/再編集したものです

 

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