3D的な迫力で音像が展開。オーディオボードの新革命、ティグロンの“6層構造”ボードの実力は?
ティグロン(TIGLON)から新世代の画期的なオーディオボードが誕生した。高級耐水バーチ材をベースとした6層ハイブリッド構造であり、接地面との間に使用する新開発の「D-REN EX」も付属。この1台のボードに同社のどれほどの技術が集約されているのだろうか?園田洋世氏がその音を体験する。

純マグネシウムボードをベースにした6層構造
ティグロンから新フラグシップ・オーディオボード「TMB-500EX」が誕生した。アース線を繋がなくても、アース線を繋いだ仮想アーシングボードと同等以上の高いS/Nと解像度が得られる「ファントムアース効果」で話題となった旧フラグシップ「TMB-300」が生産完了。しかしその優れた性能から後継機を待ち望む声が非常に多かった。
このたびついに誕生したTMB-500EXのパフォーマンスは、TMB-300のそれを大きく上回るものだ。
最上部に高級ロシアンバーチの積層板、中段に振動吸収性に優れた「最高純度のピュアマグネシウム板」と世界三大銘木チークの中でも特に音質に優れた「ビンテージ本チーク材」、そして最下部に高密度MDF板を使用しているのはTMB-300と同様だが、TMB-500EXはピュアマグネシウム板に新技術「マグネティック ZEROプロセス」を施しただけでなく、その上に防振・絶縁材を介して、電磁波ノイズを遮断する「銅シールド層」を重ねてある。
加えてスペーサー「D-REN EX」が4枚付属。合計なんと6層にもなるハイブリッド構造である。
このD-REN EXはTMB-500EX専用に開発されたもので、通常モデルの「D-REN Pro」からさらに強度を高め、内部の「マグネシウム合金箔」を新開発の「純マグネシウム箔」にグレードアップ。

接地面が硬い床の場合はTMB-500EXの下に、逆に厚いカーペット等柔らかい床の場合は下ではなく上に、すなわち機器との間にこのD-REN EXを挟む。どちらでも振動吸収性が高まるが、特に前者の場合だとガタも取れるだけでなく、床とボードの間に「空気」が通って、音の抜けが良くなるらしい。

「ファントムアースダクト」で仮想アース効果も
「空気」。私も今回初めて知ったのだが、TMB-300で話題を呼んだ「ファントムアース効果」も実は「空気」が関わる効果なのだという。
TMB-300だと後面(メーカーロゴの反対側の側面)に5個、TMB-500EXだと側面4面に4つずつ、計16個のごく小さな穴が開けられている。この穴の名は「ファントムアースダクト」。新旧フラグシップともに底面のMDF材の上に取り付けられているチーク材とマグネシウム板は、「空気層を介して」側面のバーチ板に接している。そしてこのボード側面のバーチ板に開けられたダクトはこの空気層に繋がっていて、なんとこのダクトからボード内部の空気圧を放出するというのである。
これにより不要振動が外部に開放されるのだろう、仮想アースに似たS/Nの改善・解像度の向上効果が得られるばかりでなく、音像がストレスから解放され抑圧感が低減し、さらに音場も拡大するらしいのだ。
実体感や立体的な音像感も圧巻
早速試聴してみよう。まず大人気DRシリーズの「DRS-50」をラックの棚板とアキュフェーズのSACDプレーヤー「DP-770」との間に敷いてみる。ミケーレ・ラッビア「Nimbus」は特に冒頭無音部の静寂感が増し、超低音はより深く沈み込む。「Lost River」は各種電子音から付帯音が取れてスッキリした音像に。
次も現行の「TMB-DR20E」。バーチ・マグネシウム・MDFの3層構造で、付属するアース線「D-REN Earth」と繋ぐことにより仮想アース効果が得られる。今回はボードの素の性能を聴きとるべくアース線は繋がないで聴いたのだが、それでも遠近ともにノイズフロアがグッと下がり、バスドラムの音像は引き締まってタイトに。金属製の物体が転がる音の軌道に立体感も出た。
次は旧フラグシップTMB-300。ノイズフロアがまたさらに下がり、各音の音像には、これも不要振動低減効果なのだろう、伸びやかさを増した余韻が伴う。そして音場の大地のくびきから解き放たれたかのように、各音像がポオッと宙に浮かぶ。
最後にいよいよ新フラグシップTMB-500EX。ノイズフロアにまだ下がる余地があったことに驚く。超絶静かな、かつ大きく拡大した音場に展開する各音像は宙に浮き解像度が桁違いに高く立体的。制御しきれず拡散しがちだった超低音の音像には芯が生まれ確かな実体感を保って深く沈み込む。しかも遠近ともにS/Nがさらに高まっているので、奥から手前に移動する音像のその近づき方がまさに3D的迫力!
制振が効き過ぎて音像本来の豊かさが失われるようなこともなく、むしろ密度感を高め豊かさが増しているのも凄い。オーディオファイル必聴の傑作ボードである。
(提供:ティグロン)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー196号』からの転載です、