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PR“定番モデル” のバージョンアップで上位機「Px8」に肉薄

「ワイヤレスヘッドホンの音も遂にここまで来たか」。Bowers & Wilkinsの新モデル「Px7 S3」速攻レビュー

公開日 2025/04/25 06:30 高橋 敦
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特に驚かされたのは音抜けと空間表現の素晴らしさ。太さや厚みを無闇に強調しない素直な鳴りっぷりの低音表現、超低域や超高域も同じく強調しない整った帯域特性など、あくまでも自然な高音質に仕上げられているのも好ましい。つまりは「よりB&Wらしいサウンドに進化」ということだ。

ヨルシカ「晴る」の試聴は特に印象的だった。この曲は冒頭のギターカッティングからそこに入ってくるドラムスが見事な音で収録されているのだが、このヘッドホンで聴くそれらの抜け感や空気感からは、それこそ晴れやかさを感じられた。アタックの瞬間からの音抜けにすっとした速さがあり、響きの空気感は軽やか。

「Px7 S3」装着イメージ

 

ギターのピックと弦が触れる瞬間を描き込みつつ、その音がカチッと硬くなりすぎないのもよい。それを両立できるオーディオはなかなかにないのだ。もちろん声の描き込みも繊細。空間の広がりによって音場のセンター、ボーカル周囲のスペースが確保されていることで、歌声の立ち姿も際立っていた。

ネイト・スミスのソロドラム曲「Big/Little Five」でもまた冒頭時点で、そこで鳴り響くバスドラムに思わず笑み。踏み込まれたバスドラムの胴の内側で高まる空気の内圧、その圧を受けてこちらに飛ばされてくる低音の速さと勢い。スピーカーだったら超ハイエンド大型機でしか味わえないそれを、もちろん聴こえ方の違いはあるが、このヘッドホンは鼓膜に届けてくれる。超低域・低域・中低域のどこかを強調することもどこかが不足することもなく、フラットな広い面で鳴ってくれるのもよい。

高域側では、シンバルの金属の質感を、ギラっとさせずほぐれた音色にしてくれたのもよい。それでいて描写にぼやけはなく極めて明瞭だ。

何というか「ワイヤレスヘッドホンの音も遂にこれほどのレベルに到達したか……」という感慨を覚えさせられた。相当のこだわりを持つオーディオファン以外は、有線接続の必要性をもう感じないのではないだろうか。

なおANC性能も高音質志向モデルの中では特に優れた部類に達しており、室内空調ノイズ相手には無音寸前まで追い込み、電車内ノイズ相手にも不足は感じられなかった。

高音質志向モデルながら、高いANC性能も有する

 

「Px7 S3」比較レビュー:上位機「Px8」に肉薄するノイキャン性能

そのPx7 S3のサウンドとANCは、S2eからの変化や進化という観点からはどうなのだろう。その点も実機で比較した。

これまでS2eの音に不満を抱いたことはなかったが、S3を聴いた後だと、S3の美点として挙げた部分がS2eとの差としても感じられてしまったのは否めない。

「Px7 S3」アンスラサイト・ブラック

 

S2eでは、ギターのピックと弦が触れる瞬間にカチッという硬さが残る。低域の鳴り方においても低域から中低域にかけての厚みを少しプッシュ。S2eは高域側も低域側も「聴かせどころを立たせる」印象だ。それはそれで悪くない、しかし対してS3は「癖のない再生によって聴かせどころが自然と浮き上がる」の域に達しており、よりB&Wらしいサウンドと言えるだろう。

ANCについては、電車内でも違いはあったが、より大きな差は室内利用時に感じられた。S2eも空調騒音のおおよそを抑え込んでくれるが、高音ノイズはサーッと微かに残る。対してS3はそれを残さない。大きな騒音の処理の部分よりも微細な騒音の処理で差が出るということか。

上位機「Px8」とも同じように比較。高域側の感触は両者かなり近しく感じられた。同一の振動板を継承するS2eよりも材質から異なる振動板であるPx8の方に近い感触ということから、Px7 S3での高域の変化は他の要素、主には音作りの面からの進化なのだろうと想像できる。

「Px8」ダーク・フォレスト(写真左)、「Px7 S3」アンスラサイト・ブラック(写真右)

 

低域側は、Px7 S3はフラットな鳴り方であるのに対して、Px8はもっちりとした弾力を備える印象。低音表現の充実感としてはPx8を好む方も多いだろう。だがB&Wのハイエンドスピーカーの鳴り方に近いのはPx7 S3か。優劣の判断は難しいところだ。

ANCについてはほぼ互角かと思う。強いて言えばPx7 S3の方が少し静かかもだが、そうと言い切れるほどの差ではない。

◇◇◇

と見てきたように、B&W「Px7 S3」の内容は超充実だ。初めてのB&Wヘッドホンとして検討中という方は迷わず購入でよいだろう。では、すでに従来モデルを愛用しているなら? それについては、毎年モデルチェンジされるスマートフォン定番モデルの買い替えのように考えるのもよいかと思う。

ファンとして毎回最新モデルに即買いもあり。バッテリー劣化を感じたときに買い替えるのもあり。どのタイミングの最新モデルを購入しても、あなたが気に入っているそのモデルであることに変わりはなく、慣れ親しんだ使い心地と確かな進化を共に与えてくれるだろう。定番モデルならではのその強みを、Px7 S3はすでに手にしている。

ただこのシリーズは発売後にもカラバリをどんどん追加してきた実績があるし、スマホの「無印とPro」のようにこちらにも「Px7とPx8」があるので、Px8の動向も気になる。悩ましい……でも結局すぐに購入して楽しみまくるのがお得なのでは? 買っちゃえ! ということになりがちなのも、定番モデルあるあるかもしれない。

ただ、本稿でチェックさせていただいた通り、定番モデルと位置づけている「Px7」シリーズの最新モデルPx7 S3の完成度は定番モデルの域を超えてしまっている。そのサウンドを、お手にとって確かめていただきたい。

(提供:ディーアンドエムホールディングス)

 

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