オーディオ通に愛されるGRADO。最上位ヘッドホン「Signatureシリーズ」で音楽の“本質”に触れる
GRADOファンの評論家、最新 “Signatureシリーズ” をいち早く聴く
趣味の世界には “通好みのブランド” があるものだ。オーディオ分野、特にヘッドホンの世界で言えば、GRADO Labs(グラド・ラボ)は、その代表格だと感じている。
GRADOは、アメリカ・ニューヨークに本拠を置く1953年設立の老舗オーディオメーカーで、現在はヘッドホンやイヤホン、さらにフォノカートリッジがコアなファンから高く評価されているが、その理由は、音質のキャラクターに明確な個性があること。実際、評論家になる以前から、筆者がGRADOのヘッドホンを何台も使ってきた1人だということは、ここで白状したい。
それだけに、昨年11月に発表された同社の新たな最上位シリーズである “Signatureシリーズ” の第1弾モデル「Signature HP100 SE」と、待望の第2弾モデル「Signature S950」のレビュー執筆依頼をもらった筆者は、二つ返事で快諾した。
数日後、自宅に2台のヘッドホンが届いた。GRADOらしい白い外箱が、期待感を高める。
Signature HP100 SEは、GRADO Labsの創設者ジョセフ・グラド氏が1990年に発表した代表モデル「Signature HP1」へのオマージュとして生まれたという。アルミニウムから削り出したハウジングはスペースグレーに仕上げられ、製品名が丁寧に刻まれている。当然のように開放型である本機の背面はGRADOらしく、しっかりと編み込まれたグリルが装着される。

振動板は52mm口径で、新設計の紙の複合コーンによる振動板と、強力な高磁束磁気回路、軽量銅メッキアルミニウム製の新型ボイスコイルを組み合わせている。注目点は、4ピンミニXLRプラグと6.3mmステレオミニプラグを備えた12芯のアニール処理がされた着脱式ケーブルが付属すること。
これまで同社のヘッドホンは、ハウジングに直結する固定式ケーブルを長年採用してきた。というのも、現社長のジョン・グラド氏が着脱式ケーブルに対して消極的だったためだという。しかし今回、開発チームが強く提案したことで、初めて着脱式の仕様が実現した。周波数特性は3.5Hz - 51.5kHz。公称インピーダンスは38Ωだから、比較的小型のDAPでも駆動しやすいはず。
一方、シリーズ第2弾となるSignature S950は、同社で初めてブラジリアンウォルナット材をハウジングに採用した開放型ヘッドホンだ。ドライバーは52mmで、HP100 SEに搭載されたものをベースにした派生バージョンを使用している。周波数特性や公称インピーダンスもHP100 SEと同等で、ケーブルも着脱式。

なお、両モデルともイヤーパッドは、耳のフィット感やサイズが異なる「Gクッション」と「Fクッション」の2種類が付属。アメリカ・ブルックリンで手作業によって組み立てられている「メイド・イン・USA」仕様である。