PR中焦点レンズと超短焦点レンズで画質をチェック
「ただ息を呑む」高画質。エプソンが粋を極めたフラグシップ・4Kプロジェクター「EH-QL3000」を徹底レビュー
■6000ルーメンの桁外れな明るさを実現したフラグシップモデル
エプソンの4Kプロジェクター「EH-QL3000」は、桁外れのプロジェクターである。従来のホームプロジェクターの範疇にないといってよく、最大輝度6000ルーメンの明るさがそれを象徴する。本機は広く明るい部屋で大勢が見ることのできる高画質なプロジェクターを求める、北米市場のニーズに答えて企画されたモデルという特徴をもつ。
従来は、ビジネス用プロジェクターでまかなっていたが、発熱量が多いためファンノイズが煩く、色域もSRGBに合わせていたこともあり、動画視聴に向いているモデルではなかった。
同社は、ホームプロジェクターで従来以上に明るく、そして色が美しくきめ細やかな階調を叶える製品を新たに開発することが決まり、誕生したのがEH-QL3000だ。設計は、国内で販売されている“EB-PQシリーズ”などをはじめとするビジネス用の4Kプロジェクターと共通点が多いが、明るさを6000ルーメンに設定し、画質を徹底的に追求している。
同社で長くホームプロジェクター開発に携わってきた開発陣は、「EH-QL3000は150型以上の大画面でも、パワーを持て余すほど」とアピールするほどの自信作である。
■高画質技術を結集させ、交換式レンズシステムも導入
EH-QL3000は、3LCD方式を採用、ボイスコイルモーターで1画素を上下左右4方向へシフトする2軸シフトテクノロジーを用いることで、4K映像の出力を可能としている。
本機は1.04型ワイドポリシリコンTFT液晶パネル(16:9)の大型デバイスを使用。デバイスサイズが非常に大きいため、開口率が高く明るい映像に寄与している。しかし、大型サイズのデバイスを使用していても、ホームプロジェクターとして導入しやすいサイズ感を実現できていることも魅力。これには、エプソンの長年のノウハウが生んだ4分の1サイズの高効率レーザー光源モジュールが役立っており、他のハイエンド・プロジェクターと比較しても重すぎない質量を成し得ている。
高輝度機種が生む問題点として発熱量の多さが挙げられるが、本機は冷却機能に「ベイバーチャンバー」「プロペラファン付ヒートシンク」「FIN一体型蛍光ホイール」といった新開発の技術を導入することで解決しており、高輝度ながら発熱を抑え、さらに静音性も高めている。シーン毎にHDRトーンカーブ自動調するダイナミックトーンマッピングを持ち、HDRフォーマットはHDR10に対応している。
本機のユニークな特徴が、ビジネス用途から引き継いだ交換式投写レンズシステムである。ワイド/テレレンズを購入時に選択できるホームプロジェクターは過去にあったが、本機は超短焦点/短焦点/中焦点/長焦点の焦点距離から12タイプのレンズを選ぶことができる。もっとも需要が多そうなのは中焦点だが、超短焦点も用意しているため、本格的なホームシアターからリビングシアターまで、幅広いユーザーの視聴環境に応えてくれるだろう。
八角形のユニークなボディ形状の本機は、オプションのアウターパネルを装着して外装色の変化を楽しめる。プロジェクターを家庭にいかになじませるか長年提案と工夫を重ねてきたエプソンらしいアイデアだ。
■中焦点レンズをチェック、すみずみまで光の行き渡った端正で力強く美しい
EH-QL3000の視聴は、最初に中焦点レンズの「ELPLM15」を装着した状態から。画質面で有利なやや長打ち(ロングスロー)投写となり一般的な(100 - 150型)のホームシアターでの標準と考えられる。フジノン製で前球(フロントエンド)までオールガラスのきわめて高品位で贅沢なレンズである。
フィルム撮影の日本映画『海街diary』(4K UHD BD・韓国盤)から視聴を開始する。スクリーンサイズは100型だが、冒頭のデイライトシーンはスクリーンから光がとうとうと溢れ出る明るさである。
この時のEH-QL3000のカラーモードは「シネマ」。本機のポテンシャルは6000ルーメンだが、シネマモードでは少々抑え気味の明るさとなるが、それでも勢い余ってぎらぎらしているのでもっと抑えたく、レーザーライト出力をデフォルトの80%まで下げ、さらにイメージ強調をデフォルト3から下げてみると、見事な画が現れた。
すみずみまで光の行き渡った端正で力強く美しい映像であり、明るさの余裕の生む説得力をまざまざと見せつける。ディスプレイの世界には、明るさは七難隠すという至言があり、明るさに余裕があるディスプレイは調整次第で望み通りの画作りが可能という意味が含まれているが、今まさに4Kプロジェクターでその意味を実感している。
プロジェクターでレンズの性能と最適化がいかに大きなものを占めるか思い知らされる。フォーカスの精緻さ、解像感、階調のきめこまやかさ……俳優たちの浮き上がるような立体感に息を呑む。鎌倉、藤沢でのロケーションシーンで細やかな自然光が女優たちを包んで美しい。家庭用プロジェクターでありえなかった光のパワーがこの瑞々しい映像を産む。