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フォノイコ内蔵で高品位パーツを搭載

10万円以下で本格サウンド!スタンダードクラスのアナログプレーヤー厳選5モデルをレビュー

公開日 2023/09/21 06:30 生形三郎
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■TEAC「TN-4D-SE」



TEAC「TN-4D-SE」¥OPEN(直販サイト税込価格80,080円)

ティアックはエントリーグレードのプレーヤーを得意とする国産ブランドで、「TNシリーズ」は、Bluetooth搭載モデルからミドルクラスまで、実に数多くのモデルを揃える人気シリーズ。本機はその中で上位のモデルで、モーターの回転力を直接プラッターに伝えるダイレクトドライブ方式を採用するほか、傑作トーンアームを生み出した名門「SAEC」製のユニバーサルトーンアームを搭載。

TN-4D-SEのカートリッジ部

TN-4D-SEのトーンアーム部

付属カートリッジにも定評あるSUMIKO「Oyster」が付属するというこだわりの仕様が奢られている。もちろんフォノイコも内蔵。下位モデルもそうだが、アームリフターの指掛け部分が平らで大きく、安定して指がフィットするので、アームの上げ下げ操作もしやすい。また、スタート/ストップと回転数の切り替えが同一ツマミのスイッチになっているなど、細やかで効果的な仕様も嬉しい。

TN-4D-SEの背面部

分解能が高くリアルな描写と温かみのある音色
8万円台の本機は、やはり価格が下のものよりも、価格分のクオリティを確かに実感できるサウンドが魅力。全体的に分解能が高くリアルな描写を楽しませるが、低域のボリュームが豊かで恰幅のよいボトムがあり、音像の線が細くならない温かみある音色で聴き心地がよい。

とりわけ印象的なのはボーカル再生で、歌声が中空へとスッと浮かび上がる実在感の高さが白眉だ。女性3人が同時に歌うエレクトロポップでも、ひとりひとりの声の線が細くなりすぎず、しかし重なるハモリの存在も分離よく描き出す。オーケストラソースも、空間の奥行きや休符時の間や静けさも確かに再現した。

TN-4D-SEの音質傾向

■DENON「DP-450USB」



DENON「DP-450USB」¥84,700(税込)

本機は、この度新発売となったハイエンドモデル「DP-3000NE」を除くと、デノンのラインナップの中で最も上位に位置するモデルだ。デノンは初めて純国産の蓄音機を開発した110年近い歴史を持つブランドだが、本機が33.3や45回転だけでなく、78回転盤(SP盤)の再生にも対応する3スピード仕様な点もそのバックボーンを感じさせる。

DP-450USBのカートリッジ部

DP-450USBのトーンアーム部

一方で、フォノイコの内蔵、そして前面にあるUSB端子にUSBメモリーを挿して、フロントボタンを押すだけでレコードがワンタッチでデジタル化できるなど、時代に即した機能性や使い勝手を備えるユーザビリティも同社ならでは。トーンアームには、デノンが1971年に発売し高い人気を獲得した名機「DP-5000」の仕様を基に、新開発されたユニバーサルアームが奢られている。特徴的なS字形状と、なだらかな傾斜を持たせたウェイトの針圧表示が何とも特徴的なデザインである。

DP-450USBの背面端子部

立体感が豊かで定位や空間の広がりも確実に再現
どこにも強調のないナチュラルな音色感と、情報量の多いサウンドを楽しめるプレーヤーだ。どのようなソースも音のエッジが鋭くならず耳触りのよい質感を堪能することができる。その分、クラシックソースなどでは、タッチの強弱を克明に出すという方向性ではなさそうだが、各楽器の音像は立体感に富み、細かい定位の表現や空間の広がりもしっかりと再現する点が実に素晴らしい。

全ての周波数帯域の音圧が高いポップスやロックなどのソースを聴いても歪み感がなく心地よい音で再生されるため、長時間聴いても疲れにくいサウンドといえる。

DP-450USBの音質傾向

■AUDIO-TECHNICA「AT-LP7」



AUDIO-TECHNICA「AT-LP7」¥OPEN(予想実勢価格90,000円前後)

オーディオテクニカは老舗のカートリッジおよびアナログアクセサリーメーカーであるとともに、エントリーグレードのプレーヤーを得意とするブランドだ。その中にあって本機は、60周年記念モデルの特別なアクリル製プレーヤー「AT-LP2022」を除くと、実質的な最上位機にあたるモデルだ。

AT-LP7のカートリッジ部

AT-LP7のトーンアーム部

それだけに、重厚なボディに装備した20mm厚のプラッターをベルトドライブで駆動するという物量を投入。同社伝統のJ字型ユニバーサルアームは高さ調節も可能で、幅広いカートリッジへとセッティングを追求可能だ。フォノイコも搭載するほか、付属品として、アルミニウム製ヘッドシェル「AT-HS10」や同社上位モデルとなる接合楕円針VMカートリッジ「VM520EB」が奢られているなど十全たる仕様だ。

AT-LP7の背面端子部

落ち着いた重厚さとクリアで明るいサウンドを両立
そのサウンドは、しっかりとした重量のあるプレーヤー筐体から想像する通りの、どっしりとした腰の落ちた重厚なものである。同時に、オーディオテクニカらしいクリアで明るいサウンドが両立している。大きな音や低い音をピックアップした際にも決して音が揺らぐことが無く、演奏が持つ緊張感もしっかりと聴手に伝えてくれるさまが快い。

例えば、ソロピアノのフォルテシモの和音からエレクトリックなキックドラムのアタックまでが芯のある音で、レスポンスの良さが痛快なのである。高域方向はエネルギッシュな幾分華やかなサウンドで、それがクリアな質感に繋がっていると推察する。しかしながら、弱音部のソフトな質感や滑らかな表現も的確に拾い上げる能力を備えている。カートリッジ交換でさらに多彩かつ高性能なサウンドも引き出せるだろう。

AT-LP7の音質傾向


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