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【特別企画】オーディオ銘機賞2022 ベストセラー賞受賞

伝統と最新技術を融合させたデノン「PMA-A110」。記念モデルに具現化されるサウンド思想の真髄は?

2022/02/04 角田郁雄
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デノンのサウンドフィロソフィーである「Vivid & Spacious」を具現化したリファレンスモデル「PMA-SX1 LIMITED」から数多くのカスタムパーツや高音質パーツを受け継ぎ、サウンドマスターの山内慎一氏による徹底したサウンドチューニングが施された渾身のプリメインアンプ「PMA-A110」。

人気と実力を兼ね備え、オーディオ銘機賞2022では栄えある「ベストセラー賞」を獲得した。今回は、審査員を務める角田郁雄氏がベストセラー賞を受賞した理由を徹底解説する。


Denonのプリメインアンプ「PMA-A110」393,800円(税込)

■静と動が入り混じり、歴史的な音楽の記録を朗々と聴かせる

ワーグナーの『ニーベルングの指環』を聴く。あるいは、マイルス・デイヴィスのアグレッシブな『ウィ・ウォント・マイルス』を聴いてみる。そこから見えるのは、空間を斬るかのような鮮烈な響き、そして空間を震わすほどの波動だ。心に響くスリリングな音楽が展開される。

続けて、ダイアナ・クラールの「ウォールフラワー」やカサンドラ・ウィルソンの「ニュー・ムーン・ドーター」といった、穏やかなヴォーカル曲を聴いてみる。ちょっとダークでハスキーなヴォイスが生々しく空間描写し、その歌唱に酔いしれてしまう。イザベル・ファウストの「バッハ:無伴奏ソナタとパルティータ」のソロも良い。壮大かつ美しいソロには、巧みな演奏のさまも眼前で堪能できる。

こんな力感に溢れた熱演や弱音を極めるような音楽を、高解像度な音質で堪能させてくれるのは、デノンの110周年記念モデルとして登場したプリメインアンプ「PMA-A110」だ。湖の底までも見えるような、透明度の高い弱音。グランカッサの俊敏で壮大な強音までも、このモデルでは体験させてくれる。静と動が入り混じる歴史ある音楽の記録を、朗々と聴かせるのだ。

■デザインから内部技術まで、所有する喜びを感じる

それでは、デザインを見てみよう。PMA-A110では、伝統的な大型ボリューム・ノブやスイッチの配置などはベースモデルの「PMA-2500NE」を踏襲しながらも、本体カラーには美しいグラファイト・シルバー仕上げが採用された。天板やフットにもアルミ材が使用され、グレードの高い佇まいを湛えている。同じ110周年記念モデルのSACDプレーヤー「DCD-A110」と並べれば、部屋も上質な雰囲気を演出してくれるだろう。

アルミ製トップカバーを採用


写真上が、Ultra AL32 Processing搭載の創立110周年記念となるSACDプレーヤー「DCD-A110」336,600円(税込)

機能面では、ライン入力を装備するほか、MM/MCフォノイコライザーとハイレゾ対応のDACも搭載していることが特徴だ。同ブランドのレコードプレーヤー「DP-450USB」に同じく110周年記念モデルのMCカートリッジ「DL-A110」をセット。レコード再生だけではなく、USBメモリに録音して、アーカイブスのハイレゾ再生も楽しめる。デザイン的にもベストマッチで、これらのコンポーネントを全て導入する熱烈なデノンユーザーは、その音楽だけではなく、操作や所有の喜びまでも感じることだろう。

USBメモリーへのダイレクト録音に対応したレコードプレーヤー「DP-450USB」84,700円(税込)


MC型カートリッジの銘機「DL-103」に専用ヘッドシェルが付いた創立110周年記念モデル「DL-A110」75,900円(税込)

PMA-A110は、内部技術も素晴らしく見応えがある。内部を開けると、まず目にするのは、2式の大型トランスと左右の放熱器の付いた出力段。この出力段には、伝統の大電流を流すことができるUHC-MOS FETをシングルプッシュプルで使用している。出力素子を多数使用する出力段よりも、微妙な特性の違いをなくすことができるという考えの表れだ。

それだけではなく、たったワンペアの素子で音の鮮度を向上させて、繊細で柔らかくデリケートな弱音から俊敏に立ち上がるアグレッシブな強音まで、ダイナミックレンジの広い音質が表現できる。また、従来のドライバー段を含めた3段増幅回路を進化させ、発振の安定性に優れた2段増幅回路構成のAdvanced UHC-MOS FET増幅回路としていることも特徴だ。この1段の違いで、音の鮮度を向上させるだけではなく、安定したスピーカー制動力にも貢献しているのだ。

「繊細さと力強さ」を高い次元で両立するために、UHC-MOS FETをシングルプッシュプルで用いるシンプルな回路を実現。また、発振に対する安定性に優れた差動2段アンプ回路を採用している

デリケートな信号を扱うプリアンプ部は、PMA-2500NEのハイゲインによる1段増幅とは異なり、可変ゲイン型プリアンプと出力段による2段構成とした。これにより、一般的な音量では、プリアンプで増幅せず、出力段のみで増幅する方式となった。

その魅力は、大幅なS/Nの向上や音の透明度、微細な音の浮き上がり、豊かな倍音の再現など多岐にわたる。MM/MCフォノイコライザーでは上位モデル「PMA-SX1 Limited」と同様に2段構成のCR型イコライザーを採用。音の鮮度を重視し、フラットレスポンスの高音質を実現している。ヴォリュームも、滑らかな操作感を失わない高精度電子ボリュームを採用した。

センサーからノブの回転角を検出し、その情報を元に高精度な電子ボリュームで音量をコントロールする。左右バランスやトーンコントロールにも同様の構成を採用し、信号ラインの短縮を実現している

次ページサウンドマスター山内氏の「生々しい空間描写」という強いポリシー

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