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【特別企画】ユーザビリティの高さも兼ね備えた隙のなさ

これぞデノン、音質最優先。ブランド初完全ワイヤレス「AH-C830NCW/C630W」レビュー

2021/10/08 野村ケンジ
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大口径ドライバー&サウンドマスター山内氏チューニングの“音質最優先”モデル

とはいえ、110年の歴史を持つ老舗オーディオメーカーのデノンだけに、最大の魅力は、やはり音質だろう。2製品のチューニングを担当するのは、デノン製品のサウンドマスターである山内慎一氏だ。

ちなみに、山内氏は2015年にデノンのサウンドマスターに就任。新たなサウンドフィロソフィー「Vivid & Spacious」を掲げ、上級クラスのフルサイズコンポーネント「Eraシリーズ」からピュアオーディオ志向のサウンドバー「DHT-S216」まで幅広い製品を手がけるなど、まとめ上げの巧みさに高い定評がある。そんな山内氏が正面切って音質チューニングを手がけるだけに、そのサウンドは大いに興味が惹かれるところだ。

AH-C830NCWには11×10mmという特殊なサイズのダイナミック型ドライバーが搭載されている。一方のAH-C630Wには、10mm口径のダイナミック型ドライバーが採用されている。どちらも音質を重視した上でのチョイスだという。

左がAH-C830NCWの11×10mmドライバー、右がAH-C630Wの10×10mmドライバー

一般的な完全ワイヤレスイヤホンは、口径6mm前後のユニットを採用しているケースがほとんど。それを考えると、デノンの採用ユニット、特にC830NCWは、異例中の異例といえる大口径だ。しかも、装着感のよい小柄なイヤホン本体にそれを無理なく搭載しているのだから驚きである。そんな音質最優先な2製品は、どのようなサウンドを聴かせてくれるだろう。

老舗オーディオメーカーの技術が光るサウンド

ということで、さっそくAH-C830NCW/C630W両製品の音質ををチェックさせてもらった。まずはスタンダードモデルAH-C630Wから。試聴にはスマートフォン(Xiaomi「Mi 11 Lite 5G」)を使い、コーデックはAACで接続している。

スピード感のある高域と、フォーカスの良さと量感の高さを併せ持つパワフルな低域によって、メリハリのよい迫力あるサウンドを楽しませてくれる。とはいえ、さすが老舗オーディオメーカーと言うべきか、よくある重低音系とは一線を画す質の良さだ。中域から低域までにじみの少ないクリアなサウンドによって、演奏が普段よりもダイレクトな表現、躍動的な演奏に感じられるので、聴いていて楽しい。

音色もニュートラルに近いため、音楽ジャンルをあまり選ばず、クラシックからJ-POPまで、様々な楽曲の本来の魅力をたっぷり味わえる。強いて挙げるとすれば、ベストマッチはヴォーカル系かもしれない。たとえば女性ヴォーカルは、普段よりも幾分ヌケのよい清々しい印象の歌声を披露、いつまでも聴き続けたくなる楽しさがある。この音質をもつ完全ワイヤレスイヤホンが1万円を切った価格で入手できるというのは魅力的だ。

さすが老舗オーディオメーカーというべきサウンドを聴かせてくれる。装着感が非常に良いこともポイントだ

続いて、AH-C830NCWを試聴。基本的なキャラクターはC630Wと同じで、キレのある中高域と質のよい低域で躍動的なサウンドを楽しませてくれる。しかし11×10mmドライバーの恩恵だろう、S/N感が大きく向上し、その結果としてフォーカス感、解像度の高さ、ダイナミックレンジなど、基礎体力面で大きなグレードアップを果たしている。

おかげで、アコースティック楽器はよりダイナミックな、臨場感溢れる演奏に感じられるし、ヴォーカルは距離感の近いリアルな歌声となる。完全ワイヤレスイヤホン、しかもAAC接続でここまで躍動的なサウンドを楽しませてくれるのかと、大いに驚かされた。機能面もさることながら、ただ音質だけを考えても、大いに魅力的な製品といえる。



完全ワイヤレスイヤホンを選ぶ際は、まず機能性を優先して、次に音の好みで選ぶ、というのがいまのセオリーだが、デノンのAH-C830NCW/AH-C630Wは、音の好みだけでチョイスしたくなる。それでいて、機能性もしっかりと充実させているのだから隙がない。

オーディオ製品本来の魅力をしっかりと感じさせてくれる、完成度の高い製品だと言えるだろう。

(協力:D&Mホールディングス)

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