HOME > レビュー > DACチップで音はどう変わる? ティアックのロングセラー「505シリーズ」、最新“X”モデルを徹底試聴

【PR】「AK4497」からESS「ES9038Q2M」に変更

DACチップで音はどう変わる? ティアックのロングセラー「505シリーズ」、最新“X”モデルを徹底試聴

2021/10/04 角田郁雄
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■音質に定評あるDACチップを搭載しさらにブラッシュアップ

ティアックが2012年に発売した「UD-501」は、まだまだハイスペックなハイレゾに対応する再生機器が少なかった時代に、優れたデザインと音質、そして10万円代というお求めやすい価格で、ハイレゾ再生を大いに普及させたモデルである。高音質なヘッドホン再生の大きなムーブメントが誕生した時代でもあり、A4サイズという小型筐体のメリットも活かし、デスクトップで実現できる高品位なヘッドホンアンプとしても高い評価を獲得した。

その後、デザインはオリジナルを踏襲しながらも変化を加え、次々と高次の技術を搭載しながら、現在は第3世代目となる「505シリーズ」にその思想は受け継がれている。そして今回、さらなる音質的ブラッシュアップを加えたUSB-DAC/ヘッドフォンアンプ「UD-505-X」、USB-DAC/ネットワークプレーヤー「NT-505-X」が登場した。

TEAC「NT-505X」(206,800円/税込/上)と「UD-505X」(173,800円/税込/下)。写真のブラックのほか、シルバーもラインアップする

機能面ではXのつかない前モデルと変わらない。変更点は主に音質に関わる部分にある。1つ目は、DACチップをESS社の32bit SABRE 2M DACシリーズ「ES9038Q2M」を新規に搭載したことだ。このDACチップは、新規にHyper Stream II技術を採用し、DA変換時の過渡応答特性や高調波歪みのリニアリティ(直線性)を向上させているとのこと。米粒ほどの小さな形状であるのにもかかわらず、優れた性能値を実現しているため、世界中のハイエンドブランドにも搭載されるものだ。

UD-505-Xの内部。左手前にトランス、中央上に見えるのがDAC基板、下にアナログ系基板が入っている

NT-505-Xの内部。基本はUD-505-Xと共通だが、右上の部分がネットワークボードとなっている

ESSの「ES9038Q2M」は、音の輪郭が明瞭で、弱音をも引き立てるダイナミックレンジの広い高解像度再生を得意とする。また、空間再現性が極めて高いことも特徴として挙げられる。UD-505-XならびにNT-505-Xにおいては、左右に各1基モノラル使用という贅沢な構成がなされている。1基のステレオ使用と比較して、変換リニアリティも一層向上しているだろう。

さらに、両モデルとも7種類のプリセットされたPCM再生用のFIRフィルターを搭載しており、お好みに合わせて設定ができる(フィルターオフモードも搭載)。さらにアップコンバート機能も搭載しており、最大384kHz/32bit、DSD24.5MHzまでの再生が可能だ。

デジタルフィルターは7種類から選択できる

アップコンバート機能も搭載する

■DACチップの性能を更に引き出すべくバッファアンプを進化

次に変更点の2つ目を紹介しよう。それは、DACチップの変更により、電流伝送能力を高めるための電流強化型バッファアンプを進化させた「TEAC-HCLD2」回路を搭載したことだ。

XLRバランス出力の場合は、これを1chあたりホット、コールドの2回路構成とすることで、ディファレンシャル(差動)モードで動作する。一方、RCAアンバランス出力では、2回路パラレル(並列)モードで動作するため、歪み率などの諸特性が向上し、駆動能力も高めている。結果としては、両出力ともに、より低インピーダンス化され、電流供給能力を高めていることが、大きな注目ポイントとなっている。

強力なトロイダルトランスを左右独立で2基搭載することも大きな特徴

さらに、両モデルに共通するアナログ音量調整器「TEAC-QVCS」にも触れておこう。これは、左右独立で、伝送ラインのホット、コールドも独立した4回路構成の可変ゲインアンプ型電子ボリュームであることが特徴。ボリュームツマミのエンコーダーで電子制御されるが、IC内部では、抵抗ラダーを切り替えることで0.5dBステップの高精度アナログ音量調整器として機能している。

Bluetooth再生にも対応、スマートフォンとヘッドホンだけで高品位な音楽再生も実現できる

最後に3つ目の特徴を紹介しよう。それは、筐体メカだ。天板を強固に取り付けず、サイドパネルで挟み込んだ半固定状態とすることで、開放感に溢れた響きを実現している。

天板は固定せず、サイドパネルで挟み込む形となっている。サイドの六角ボルトを外すことで中を確認することができる

3点支持のフットについては、ラックの微細振動に影響されず、安定した設置を可能にするオリジナルの「Stressless Foot」を採用した。削り出しスチール製フットを筐体底板に、ぶら下がる状態で取り付けることにより、安定感のある、より自然で豊かな響きを実現させている。

「UD-505-X」の裏面。新設計のStressless Footで3点支持となっている

■DACチップのポテンシャルを存分に引き出す高度な空間描写性

「UD-505-X」と「NT-505-X」の両方を再生して共通して感じたことは、空間描写性と解像度特性が、一層、高まったことだ。これは、明らかにESSのDACチップを採用し、それを左右2基モノラル使用した効果と言えるであろう。

リファレンス音源の一つである「クワイエット・ウィンター・ナイト」を再生すると、録音場所である残響豊かな教会の空間が拡大され、特に奥行き感がよく再現された印象を受けた。女性ヴォーカルの空間実在感も増し、微妙な声使いも鮮明となり、時折、体の向きを変えて歌唱する様子もよく再現されている。バスドラムの響きも雄大で力感があり、ベースは引き締まり、木質感がある。トランペットでは、そのきめ細かな響きがクローズアップされた印象も受ける。また、鈴のようなパーカションでは、美しい微細な響きが、中央付近で左右に広がる。新しいTEAC-HCLD2の効果と思われるが、弱音再現性とドライブ力が高まった印象を受ける。

NT-505-Xは、オーディオサーバー「fidata」と組み合わせて、UD-505-XはMacBookにインストールした再生ソフトウェア「Roon」から、USB出力で接続して再生を行った。あえて違いを述べるなら、NT-505-Xはやや暖色系の音色を示しており、UD-505Xの方が、音の鮮度の高いフレッシュな音色を感じた。

「NT-505-X」には専用の再生アプリケーション「TEAC HR Streamer」が無料で利用できる

さらに進化を遂げたUD-505-X とNT-505-X。このデザイン、機能、搭載、音質が高品位にバランスしたことを考えると、価格もリーズナブルで、多くの方に推薦したい。さらに、導入後、10MHzマスタークロックジェネレーター「CG-10M」を追加してアップグレードするという楽しみもある。

スピーカー再生はもちろん、ヘッドホン再生のクオリティも折り紙付き。UD-505-Xには4.4mmのPentaconn端子を搭載しフルバランス出力も可能

ティアックの10MHzクロックジェネレーター「CG-10M」(オープン価格、市場実売価格148,000円前後)。505シリーズと接続することでさらなるデジタル再生のグレードアップが可能

どちらが欲しくなるのであろうか。迷うことであろう。ぜひご自身の耳で試聴して頂きたい。

(協力:ティアック)

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE