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いま買うべきディスクプレーヤーをガチンコ対決で決める!

デノン「DCD-A110」vs マランツ「SACD 30n」 最強のミドル級プレーヤーはどっちだ!?

公開日 2021/02/26 06:30 土方久明/生形三郎 構成:季刊・オーディオアクセサリー編集部
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“この音で聴きたい”と思う魅力が両モデルにあった

土方 2モデルを聴き比べましたが、音質的にはどちらを選んでも満足できるくらいよかったですね。

生形 単体でいうと、気持ちを上げる方向で聴かせてくれる感じが好きならマランツがいいし、より冷静な表現を味わいたいならデノンがいいと思いました。あえて優劣をつけるなら、音楽的に楽しく聴けて多機能な、マランツが総合的に良いと私は思いました。普段、録音や編集などでモニターの音を聴いている機会が多いので、マランツのサウンドを聴いていると、オーディオっていいなって改めて感じさせてくれます。デザインや機能性も含め、ツールとしての魅力も非常に高かったです。

土方 僕はなんでオーディオやっているかというと、とにかく良い音でひたすら音楽を聴いて、アーティストに近づきたいからなんですね。名曲や今ではライヴで聴くことのできないアーティストを身近に感じたいんです。その魂を感じさせてくれたのが、デノンでした。そういったプレーヤーって、この価格ではなかなかないと思うんです。音楽の作り手や、アーティストの魂を感じられる時がある、このプレーヤーにはその瞬間を垣間見ることができました。

生形 演奏者の魂みたいなものを収めている作品を、しっかり再現できているんでしょうね。デノンは組み合わせ次第で、伸び代は計り知れないかもしれない。緻密に製品を選択していくと、どんどん好みのサウンドに近づけて楽しめそうですね。逆にマランツはどんな製品と組み合わせても、大概良く鳴らしてくれる。初心者にも薦められますし、これからオーディオを育ててくれる若い世代にもぜひ使用していただきたいです。リスニングスタイルもデザインも機能も、もちろん音質も、今後のオーディオの流れを変えてくれる新世代のモデルであることに、魅力や大きな可能性を感じます。

土方 デノンは、全コストをディスク再生に費やしているじゃないですか? つまり、それくらいしないとDCD-SX1 LIMITEDの音に近づかなかったんじゃないかと思っています。ディスク再生にこだわるなら、とんでもなくコスパがいいですよ。

生形 DCD-SX1 LIMITEDは本当に素晴らしいですからね。土方さんがおっしゃっていたように、両モデルとも“この音で聴きたい”と思わせる大きな魅力がありましたね。

土方 聴きたいと思わせる良い音のプレーヤーが出てきたからこそ、プレーヤーの存在価値ってあると思うんですよ。CDやSACDのコレクションを最良の音で聴きたい欲求を2モデルはしっかり満たしてくれるので、自分好みのサウンドで聴けるのは、オーディオにのめり込める時間が多いこの時期には、本当にぴったりな選択肢だと思います。

総括〜比較視聴を終えて〜

個性を持たせつつ音の透明性を重視するトレンドを牽引した音(生形)

今回の対決は、D&Mグループ内において、同じ価格帯、同じ時期に発売されたSACDプレーヤーとして、デノンとマランツ両者の方向性が如実に表われる結果となり、実に面白い内容であった。デノンは、機能をディスク再生に絞りリソースを全て音質に注ぎ込むと共に、あくまでシンプルで伝統的なCDプレーヤーとしての在り方を徹底的に追求した。一方のマランツは、今後、同ブランドで展開される新たなデザインコンセプトが投入された第一弾製品として大胆なデザインを纏うと共に、次代のリスニングスタイルを意識し、同ブランド最高と謳うまでに高められたネットワーク再生音質を持つものとなっている。伝統と革新、それぞれが体現された存在と言えるのではないだろうか。しかしながら、両者の音質は、キャラクターを強く出すというより、個性を踏まえながらも音の透明性を重視する今のトレンドを牽引するものだと感じた。次回のアンプ対決も、じっくりと両機を比較検証して、それぞれの魅力を存分に炙り出したい。


エモーショナルな表現と音像定位優れたステージングを実現した(土方)

「これぞまさに好敵手!」本試聴で率直に感じた印象だ。ズバリ、この2台のSACDプレーヤーは、設計思想から音色および音調まで大きく異なる。“Modern Musical Luxury”をシリーズの新コンセプトとして掲げた 「SACD 30n」は、SACD/CDに加え、ハイレゾファイルやストリーミング、さらにUSB-DAC機能など、新旧のデジタルソースに対応した、まるで七色の変化球を持つ投手。対するDCD-A110は110周年記念モデルらしくSACD/CDに特化して物量を徹底投入した、こちらは豪速球の投手といったところ。そして、マランツは尾形好宣氏が、デノンは山内慎一氏が徹底した音質チューニングを実施している。開発時期はオーバーラップしているからお互い威信をかけているはずで、その結果もたらされた両者の音質は、普段はデジタル楽曲ファイルメインの筆者でさえ「これほどの音で聴けるならあえてディスクを用いたい!」と思わせるほどの、エモーショナルな表現と優れたステージング、音像定位を実現していた。



本記事は季刊・オーディオアクセサリー180号からの転載です。

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