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いま買うべきディスクプレーヤーをガチンコ対決で決める!

デノン「DCD-A110」vs マランツ「SACD 30n」 最強のミドル級プレーヤーはどっちだ!?

2021/02/26 土方久明/生形三郎 構成:季刊・オーディオアクセサリー編集部
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お互いキャラクターが全く異なっている

土方 技術的な部分では、デノンが「Advanced S.V.H. Mechanism」、マランツが「SACDM-3L」のメカを採用していますね。

生形 トレイの感触だと、デノンがアルミダイキャストで、マランツは樹脂を使用しているようですね。

土方 共振するから、音にも影響があるでしょうね。

生形 デノンはディスク再生の機能に絞っていて、そこへの強いこだわりを感じますね。

DCD-A110は、ディスクドライブに「Advanced S.V.H. Mechanism」を搭載。メカカバーに銅板、ディスクトレイにアルミダイキャスト、メカニズムブラケットには2mm厚のスチールを採用する

SACD 30nは、専用設計のオリジナル・メカエンジン「SACDM-3L」を搭載。 シャーシへの固定に、より太いネジを用いるなど、入念な振動対策を施すことで優れた読み取り精度を実現している

土方 S/Nが122dBというのは、トップエンドのCDプレーヤーと肩を並べる数値で驚きですね。逆にマランツは多機能が特徴的で、特にフルディスクリート回路に強いこだわりを感じますね。他にもトロイダルトランスや、ヘッドホンアンプまで入っている。ネットワーク周りも強力ですね。

生形 HEOS対応で、ジッタークリーナも新搭載していますね。

DCD-A110は、PCM信号に対して、前世代の2倍となる1.536MHzのアップサンプリングと32bitのビット拡張処理を行う最新のアナログ波形再生技術「Ultra AL32 Processing」を搭載

SACD 30nは、ディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering」に、超低位相雑音クリスタルのクロック回路、そしてネットワーク再生の強化にプレミアム・クロック・リジェネレーターを追加した

土方 共通モジュールを使用しているHEOSの音をよくするのって、非常に難しかったはずです。それに、Amazon Music HDのサービスがスタートして、ストリーマーというジャンルも勢いを見せていますから、ネットワークのサウンド強化は嬉しいトピックですね。

生形 ロスレスのストリーミングが一気に来たことも、後押ししているでしょうね。

土方 そうですね。こうやってみても、お互いキャラクターが全く異なっていますね。デノンは多機能で先進的なデザインシリーズがある一方で、マランツは「M-CR612」という多機能モデルはありますが、あくまでもシリーズではありません。そういう意味でも、今回のモデルは、それぞれのラインアップで“顔”となる役割を果たしているのかもしれませんね。

DCD-A110は、2つの超低ジッタークロック発振器(44.1kHz系/48kHz系) を搭載。再生ソースのサンプリング周波数に応じた切り替えをすることで、徹底的にジッターを抑制している

SACD 30nは、ワイヤレス・オーディオシステム「HEOS」を搭載。ロスレスの配信サービス「Amazon Music HD」をはじめ、「Spotify」、「AWA」などの音楽ストリーミングサービスに対応する

「熱量を感じられるデノン」と「余韻まで美しいマランツ」

生形 音質の性格も全然異なっていましたね。デノンは、落ち着いた印象ですが、しっかりとそれぞれの楽器が見えていて、バランスも良くて聴きやすかったです。

土方 セリーヌ・ディオンやグレース・マーヤを聴くと、歌声に血が通ったような熱量を感じました。分解能も高いんだけど、各楽器の中低域の温度感もある。情緒的で表現力、各楽器の一体感やグルーヴ感も抜群でした。

生形 カチッと音が定位して、シンバルの音も明瞭感がありました。その印象が土方さんのおっしゃっている、中域の熱量みたいなものにつながっているのかもしれない。

土方 音楽の旨みを引き出すことに、非常に長けているんだと思います。日野皓正のトランペットは音色的にも実際のような質感が出ていましたし。ジャズを聴くと音楽的にのめりこめると感じましたので、ジャズ聴きにはぜひ聴いてもらいたいですね。

生形 僕は余計な味付けを抑えて、元の表現をしっかり聴けているんだと思いましたよ。上原ひろみは、低域弦から高域弦までのバランスがイーブンに出ているからこそ、演奏者を冷静に客観視して見ることができました。また、包容力や幅の広さも感じられましたね。

土方 一方でマランツは、空間の余韻の出し方が、みんなが好むような音離れで気持ちよかったです。音場や質感表現が一辺倒にならず、フレキシブルさがあり、癖も少ないですね。

生形 中・高域が幾分華やかで、低域は少しふくよか。煌びやかで、マランツらしい美しさが感じられました。その辺が余韻の広がり方にも繋がっている印象です。また、ピアノの音色は、高域の倍音のきらきらした感じもしっかり出ていました。

土方 上原ひろみは、シンプルなソロの演奏なので、高域側の鍵盤の出し方がわかりやすくて良かったです。みんなが思っている上原ひろみのテクニシャン的な凄みを、よく表現していると思います。

生形 クラシックとかのアコースティックソースで、音色的にもあまり加工をしていない音源でも、適度なハリをもって聴かせてくれるから、彩りがあって合いやすいのかなとも思います。面白いのが、Amazon Music HD から聴いてみると、バランスや明瞭感がよりナチュラルになるんですよね。

土方 聴き放題のハイレゾが、この音質で聴けるのは驚異的ですよ。


<レファレンスシステム>
【スピーカー】B&W「702S2 Signature」
【プリメインアンプ】ACCUPHASE 「E-280」、DENON「PMA-A110」(DCD-A110と組み合わせて試聴)、MARANTZ「MODEL 30」(SACD 30nと組み合わせて試聴)

<レファレンスソフト>
【SACD】上原ひろみ『Spectrum』、グレース・マーヤ『ラストレコーディング・アット・ダグ』、セリーヌ・ディオン『ザ・ベリー・ベスト』
【CD】『生形三郎レック・コレクション』季刊・Audio Accrssory 174号付録



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