HOME > レビュー > 中級機なのに“ハイエンド級” サウンド。マランツ「SA-12OSE/PM-12OSE」が遂げた大いなる飛躍

【特別企画】音質特化のチューンナップを実行

中級機なのに“ハイエンド級” サウンド。マランツ「SA-12OSE/PM-12OSE」が遂げた大いなる飛躍

公開日 2020/02/21 06:30 土方久明
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

尾形氏はそれを実現する為に、12シリーズでコストダウンされた部分を改めて確認し、音質に影響が大きい部分から優先的にチューニングを行なった。また、ベースモデルの音色的なキャラクターは変えずにクオリティを向上させるため、音色を大きく変えるコンデンサーはあえてそのままにした。

そのチューニング内容は、大きく4点ある。まず1点目は、SN比を上げるために銅メッキシャーシに変更したこと。2点目は、サウンドステージを広くして奥行を出すため、天板に5mm厚のアルミ製トップカバーを採用したこと。3点目は、S/N感と透明感の高い音を獲得するためにアルミ削り出しインシュレーターに変更したこと。4点目は、SA-12ではオーディオ出力段を中心に35点、PM-12ではプリアンプ回路周りを中心に17点もの金属皮膜抵抗を変更し、徹底した音質チューニングを実施したということである。

SACD/CDプレーヤー「SA-12OSE」

新旧モデルを比較試聴。SA-12/PM-12は「コストを感じさせない優秀さ」

今回は筆者宅1Fの試聴室にSA-12OSE/PM-12OSEとSA-12/PM-12を持ち込み、音質を比較した。つまり新旧モデルを対決させたのである。

自宅に届けられた4機種を並べてみたが、既に外観の時点で同じクラスには見えない。パソコンやスマホの画面で製品写真をパッと見た程度では、デザインは同じように見えるかもしれないが、実物から感じ取れるイメージは大きく違う。

右がPM-12OSE 。厚みのある天板と平面度を合わせたメッシュが組み合わされた事で外観のグレードさえ違って見える

右奥がSA12-OSE。天板が装着された事で視覚上のグレードが上がった

OSEモデルは天板に厚みがあり、インシュレーターの質感も異なる。更に筐体を裏返すとその差は歴然で、銅メッキ処理されたシャーシは強烈な存在感がある。もはやSA-12OSEは最上位のSA-10とほぼ変わらないように見えてしまうし、天板から内部が確認できるPM-12OSEは、クラスの違いを筆者に誇示しているようだ。

シャーシの違いにおける音の優劣は想像以上に大きいが、「12シリーズの開発時にコストの都合でダウングレードした中でも、音に影響のある部分を中心に改良した」と尾形氏が話すとおり、外装周りはPM-10に近づいた(戻った)のだ。

写真左がPM-12で、右がPM-12OSE。銅メッキのシャーシは強烈な存在感を放ち、またインシュレーターの質感も違うことがわかる

しかし、何と言っても多くのオーディオファイルが気になるのは、SA-12OSE/PM-12OSEが受けたこれらの変更で音質が向上したのか? 前モデルと音質や音調がどう違うか? というところだろう。

まずはベースモデルであるSA-12/PM-12の組み合わせで、ジャズとクラシックのCDを再生してみた(SA-12とSA-12OSEはSACDに対応するが、基本となるCDの音が悪くては意味がないので、筆者は最初にCDをかけることにしている)。

クラシックのリファレンスにしているアンドリス・ネルソンス「ショスタコーヴィチ:交響曲 第6番 & 第7番、他」のトラック4「劇付随音楽《リア王》からの組曲 作品 58a: 序奏とコーデリアのバラード」では、一聴して解像度が高く、高域から低域までのfレンジ、Dレンジも秀逸。特に良いと感じたのは、サウンドステージが広く、天井高もしっかりと表現することだ。尾形氏の求める音の方向性がよくわかる。

ジャズからは、ブルーノートやマイルス・デイヴィス関連の著書を多く執筆する持つジャズジャーナリストの小川隆夫氏が、日本ジャズ界の人気グループ・クオシモードの平戸祐介氏と組んだスーパーバンド「SELIM SLIVE ELEMENTZ(セリム・スライヴ・エレメンツ)」の「VOICE / ヴォイス」を再生。

2サックス、2ギター、4リズムによる、21世紀のエレクトリック・マイルス・サウンドが眼前に現れ、クラシック同様、解像度が高く立ち上がりの良い音に聞き惚れた。今回組み合わせたB&Wのスピーカーだと、ほんの僅かだが分析的な傾向も聞き取れるが、これは好みの範疇だろう。結論を書けばSA-12とPM-12の音質はコストを感じさせない優秀な音質だ。

次ページいよいよOSEモデルを試聴。その違いとは?

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE