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<山本敦のAV進化論 第184回>

“イマーシブサウンドスタジオ”でソニーの新世代立体音響技術「Sonic Surf VR」を体験してきた

公開日 2020/02/19 06:30 山本 敦
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128chのスピーカーによる迫力あふれる立体サウンドを体験

デモ音源はいくつか種類の異なるものを聴いた。ひとつは空間の中に散りばめられた多数の音が自在に動く煌びやかな音源。サウンドは16台のスピーカー(計128ch)で構成されており、各チャンネルの音を制御することで、リスナーが部屋の中を歩き回っても均一なリスニング感が得られる。

複数のスピーカーからシームレスな波面を作り出すために、ソニーのSSVRはリスナーの耳に到達する音の時間と音量の差を緻密に解析しながら、さらに独自に開発した波面合成フィルターを用いている。このフィルターがより自然で違和感のない包囲感を生み出す。音が前方向に飛び出してくるような立体演出や、頭の前後左右に移動する音の鮮明な切れ味にも富んでいた。

SSVRの音響デザインは、配置を自由に動かせるオブジェクトのほかに、波面合成を行わずに鳴らす独立チャンネルの音源が持てる。動きを付けたメインの音は波面合成によって作り、背景にステレオ音声の効果音をBGMとして置くといった使い方をスタンダードとすれば、それぞれ最大16個まで配置できる。つまり、16音源のオブジェクトと16音源のチャンネルで、合計32音源がレイアウト可能となる。この日に体験できたデモンストレーションは9つのオブジェクトで波面合成を行い、背景に左右ステレオチャンネルのBGMを置く構成としていた。

オブジェクトの配置は直感的操作で行える

もうひとつのデモは室内を3つの音響空間に分割して、左右と中央で異なる言語によるダイアローグを流したり、ソプラノ・アルト・バスのコーラスを別々に聴かせるという変則的な使い方を想定していた。ソフトウェアのアルゴリズムによって音に指向性を付与して、驚くほどに明瞭なセパレーション効果を引き出している。綱島氏の説明によると音のパーテーションは幅も自在に変えられるそうだ。ミュージアムの展示解説やイベント、商用の音声付き広告など多彩な用途に一歩進んだ目新しい演出が加えられるだろう。

独自の音響技術がクリエイターの関心を引きつけている

何十年も前から存在していた波面合成の音響技術が、今日になって再びスポットライトを浴びるようになった理由について、綱島氏はスピーカー技術の発展や製品のコストダウンにより、再生環境の構築が従来よりも容易に行えるようになったことを挙げている。ある程度小さな筐体のスピーカーでも低域から高域までばらつきなく音が鳴らせるようになったことで、近距離にスピーカーを配置しながら高精度な波面合成が行えるようになったのだという。

SSVRの体験を広めるための試みとして、ソニーグループでは国内映画館とのコラボレーションによる体験型イベントを実施したり、クリエイターを巻き込んだ音のインスタレーション展示の実施などにも力を入れている。

これらのイベントは一定の期間を決めて実施されているものだが、SSVRの音の効果を体験できる常設スペースも2019年末にオープンした。場所は東京・渋谷にある商業施設、渋谷フクラス・東急プラザ渋谷の中にある「待ち合わせスポット GMOデジタル・ハチ公」(GMOインターネットグループ運営)だ。壁面全体を覆うLEDビデオウォールの映像と、SSVRの没入感あふれるサウンドが街を行き交う人々を魅了する。招聘されたアーティストたちによるSSVRを活用した期間限定のインスタレーションも楽しめる。

「待ち合わせスポット GMOデジタル・ハチ公」イメージ

ソニーPCLでは今後もこのような常設施設やイベントへの技術協力を通じて、SSVRによる音楽体験の魅力を伝えて、クリエイターの関心を引き付けていく考えだ。SSVRの技術そのものの伸びしろについても、一例として人が身に着けたセンサーから送られてくる位置情報を頼りに、人の動きをトラッキングしながら音が追いかけてくるような体験も考えられると綱島氏が話す。美術館やアトラクション施設向けのボイスガイドに新しい体験価値が提案できそうだ。

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