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<山本敦のAV進化論 第184回>

“イマーシブサウンドスタジオ”でソニーの新世代立体音響技術「Sonic Surf VR」を体験してきた

2020/02/19 山本 敦
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ソニーが開発した新世代の立体音響技術「Sonic Surf VR(ソニックサーフブイアール、以下SSVR)」や「360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ」に対応するコンテンツも制作できる “イマーシブサウンドスタジオ” が、2019年末に都内にオープンした。今回は新たなスタジオを開設する狙いをソニーPCLの担当者に聞きながら、SSVRの特徴である波面合成技術によるサウンド体験などを報告したい。

立体音響技術「Sonic Surf VR」を体験した

ソニー独自の波面合成による立体音響技術SSVR

ソニーPCLは、映像・音響コンテンツやインタラクティブコンテンツの企画・制作サービスなどを提供しているソニーグループの会社だ。常に最先端の技術を取り込みながら、長年に渡って蓄積してきたノウハウをソニーグループ内でのコンテンツの制作にとどまらず、様々な企業に提供してきた。新しいソニーPCLのイマーシブサウンドスタジオも、最終的には多種多様なサラウンド体験をあまねくユーザーに届けることをミッションに掲げている。

今回は特にイマーシブサウンドスタジオがコンテンツ制作から技術的ソリューションの提供に至るまで、全体をパッケージにして最先端の提案ができる空間音響技術SSVRにスポットを当てたいと思う。

SSVRは20年以上も前から学術領域で研究されてきた、波面合成という音響技術を土台にしている。

波面合成の基本は、同時に鳴らした複数個の音源を、リスナーの耳に到達するまでの時間と音量の情報を元に合成して、作り出した「音の波=波面」により立体的な音響体験を生むというものだ。ソニー独自の波面合成アルゴリズムによるソフトウェアと、スピーカーにアンプなどのハードウェアをパッケージにしたSSVRは、2018年の2月に発表され、ソニーPCLでは同年4月にSSVRによる音響ソリューションサービスをBtoBカスタマー向けに提供を開始した。

擬似的に音のパーティションを作り出すこともできる

SSVRでは他のオブジェクトベースの立体音響技術と同じく、シミュレーションにより導き出した音響空間の中に音を自由に配置したり、自在に動かしながらリアルなサラウンド感が作り出せる。1つの広い空間の中に音のパーティションを擬似的に作り出して、異なる音響空間に分割することも可能だ。現在はスピーカーによる再生を基本としているため、ヘッドホンやイヤホンは使わない。

ソニーPCLのデモルームでSSVRの音源を何種類か体験させてもらった。室内にはSSVR専用のコンポーネントによる再生環境が構築されている。

1つのボックスに8基のユニットを内蔵する専用スピーカー「RYZ-AS108」が16台壁面に並べられ、2台のコントロールユニット「RYZ-CU164」でドライブする。SSVR対応のコンテンツは専用のオーサリングソフト(RYZ-ASW)によって作られ、同じく専用のプレーヤーソフト(RYZ-PSW)をインストールしたPCで再生。IPネットワーク上で同期を取りながら16台のスピーカーに信号が振り分けられる。これらのSSVR専用のソフトとハードは、最良の立体音響体験を得るためには不可欠だ。

専用スピーカーを横一列に配置

ソニーPCL クリエイティブ部門の綱島 洋氏にうかがってみたところ、SSVR専用スピーカーは横一列に並べるセッティングを基本としているそうだが、コンテンツによってはリスナーの前後を挟むよう1列ずつスピーカーを並べて配置したり、左右に1列ずつ回廊のように設置することも可能だそうだ。スピーカーはリスナーの耳(=頭)の高さに合わせて配置すると理想的な波面合成の効果が得やすい。奥手方向の効果はチャンネル数(スピーカー長)に比例するため、今回のセッティングでは、奥手方向には約3メートルぐらいまで離れても有効な立体感が得られるという。ソニーPCLのデモルームで試した限りでは綱島氏の説明通りの効果が感じられた。

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