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培ってきたノウハウと新技術を融合

【AEx2020「金賞」受賞】新たなプリメインアンプのフラッグシップ「E-800」

公開日 2019/11/21 15:03 石原 俊
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ここでクラスA動作について若干の解説をしておきたい。クラスA動作は真空管時代の初期からあった概念で、当初はシングルアン プの真空管が信号のプラス領域もマイナス領域も担当することを意味していた。時代が進んでプッシュプル回路が登場すると、ペアとなる2本の真空管の片方がプラス領域を、もう片方がマイナス領域を受け持つクラスB動作という方式が考案された。

大型のトランスと大容量コンデンサーによる電源部を中央に配置。新開発の重量級ボリュームセンサーユニットは、より静かで滑らかなボリューム操作を実現するため、C-2850で採用されていたものをベースに改良を加えたものである

クラスB方式は効率こそ良いものの、プラス領域とマイナス領域が切り替わる際にスイッチング歪み等が生じる。そのため両方の真空管がプラス領域もマイナス領域も扱うことがクラスAの意味するところとなった。半導体においても概念は同様である。ペアとなる素子がプラス領域もマイナス領域も扱うということは、あらかじめ素子にバイアス電流を流しておかなければならない。したがって効率は悪いのだが、歪みを排除する方法としてクラスAに優る方式はない。オーディオエレクトロニクスの低歪み化を社是とするアキュフェーズがクラスAにこだわる背景には、このような理由があるのだ。

■プリアンプ部は上級機と同等のゴージャスな構成

本機のパワーアンプ部は終段の利得よりも入力段の利得の方が大きい。細かいことだが、これは回路の低雑音化によく効く手法であ る。出力の保護回路は一般的なリレーではなくMOSスイッチが用いられている。NFBは出力端子の直前から増幅段の入力側に帰還 している。MOSスイッチと出力 直前からのNFBによってダンピングファクターは1000にまで達した(ちなみにE‐650のそれは800)。出力トランスを持つ真空管アンプやクラスD動作のアンプにとってダンピングファクターはあまり意味のない数字だが、 終段の素子がスピーカーの逆起電力にさらされる伝統的なアナログアンプにとっては重要な要素だと筆者は考えている。

プリアンプ部はゴージャスだ。 AAVA式音量調整回路は、何とC‐3850と同じものが奢られている。入力段、音量調整段、トーンコントロール段、プリ出力段 ともバランス伝送で、パワーアンプ部もバランス式だから、全段バランスという理想的な構成といえるだろう。他のアキュフェーズ製 プリメインアンプと同様、リアパネルには2つのオプションスロットが設けられている。

オプションのボードを2枚まで搭載できる

本機とはアキュフェーズの試室で初対面を果たした。デカいな、と思った。だが、見慣れると違和感はなくなる。いやそれどころか 大きさが頼もしく感じられるようになる。ボリュームノブとセレクターノブの操作感は極上だ。筐体の重量があるからか、操作時の安心感はC‐3850以上かもしれない。巨大なヒートシンクを擁しているせいか発熱は比較的少なく、 夏場でも問題なく使用できるだろう。

次ページミュージカリティの高さには驚かされた

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