[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域 【第236回】

“数十年” 使えるヘッドホン誕生! 約3万円で買える基準機、ソニー「MDR-M1ST」レビュー

高橋 敦

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2019年08月24日
待望の新スタジオモニターヘッドホン!MDR「ST」新世代モデルが登場

時代が平成へと移り変わった1989年。その年に登場して以降、国内スタジオモニターヘッドホン分野における圧倒的な定番、デファクトスタンダード的な地位にあり続ける名機、それが「MDR-CD900ST」だ。純粋な性能だけではなく、現在に至るまで補修パーツが問題なく供給され続けている継続性など、製品としての在り方までを含めて、これぞ真のプロユース機と言える存在である。だからこそプロならぬ多くのヘッドホンファンにも愛され続けている。

MDR-CD900STは使いどころさえ適正であれば、その実力は現在においても十分に通用する。しかし、現在の最新技術をもって全く新規に設計すれば、今求められている様々な要素に幅広く応えられる、新たなモニターヘッドホンを生み出すことも可能なのではないか……

そして2019年、時代が“令和”となった今、他ならぬソニーおよびソニー・ミュージック自身がその期待に挑み、そして具現化させた新たなモニターヘッドホンが登場した。

それが「MDR-M1ST」(Amazon)だ。税抜3万1500円で8月23日に発売された。

「MDR-M1ST」は、現代のソニーヘッドホンのシルエットに900ST的な要素も融合させたかのようなルックス

ポイントは「MDR-CD900STを置き換えるものではない」というところ。900STもM1STと並び、今後も継続販売される。

900STを完全に置き換える製品となると、そのモデルには音や装着感を筆頭に、あらゆる面で「900STらしさ」を強く継承することが求められたはずだ。

平成のMDR-CD900ST(左)、令和のMDR-M1ST(右)

しかし、それは設計における制約事項となる。900STからの継承を強く意識すればするほど「現在の技術をもって『全く新規に』設計する」ことはできなくなってしまうのだ。

仮にそこまでしたとしても、それはやはり900STそのものではないわけで、900STを今後も使い続けたい、導入し続けたいと考えるユーザーからの不満は避けられなかったかと思う。

900STは900STとして継続し、新モデルは「900STとは別の新たな選択肢」として提供するという今回の方針は、900STにとってもM1STにとってもベストなものだったと言えるだろう。

現代ソニーヘッドホンの技術で、現代モニターヘッドホンの要求を満たす

そうして誕生した「MDR-M1ST」であるが、その外観の印象としては、コンシューマー向けリスニングヘッドホン「MDR-1A」シリーズと近しいものを感じる方も多いことだろう。「MDR-1Aをベースに900STの要素も盛り込んだハイブリッドなルックス」と感じる方もいるかもしれない。

MDR-1AM2とMDR-M1STのイヤーカップ周辺。大枠としては似た雰囲気?

MDR-CD900STとMDR-M1STのイヤーカップ周辺。エッジの処理の仕方などに似た雰囲気がある


MDR-1AM2とMDR-M1STのバンド調整部周辺。スイーベル機構周りなど意外と異なる部分も

900STとM1STのバンド調整部周辺。例の一目で視認できる「L」「R」バッジを継承!

だが、M1STは1Aシリーズをベースに開発されたというわけではない。それでいて「結果的に」似た雰囲気を纏うことになったのには理由がある。

M1STには1Aシリーズを筆頭に、近年のソニーハイエンドヘッドホンで確立された技術が導入されており、またM1ST開発の中心を担った潮見俊輔氏は、MDR-1A、そしてMDR-Z1R、MDR-Z7M2の開発においても活躍したエンジニア。つまり恣意的に別のデザインに仕立て上げようとしない限りは、結果として共通性のあるデザインに到達するのは自然なことなのだ。

900STからの継承もありつつ、音も使い勝手も現代的に進化!

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