“全部入り”のワイヤレス機をレビュー

ノイキャンが大幅進化、音質は成熟の域へ。デノンのBluetoothヘッドホン「AH-GC30」の充実ぶりに驚いた

山本 敦

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2019年03月28日

優れたノイズキャンセリング性能と音楽性高いサウンドを両立する

本機が対応するBluetoothオーディオのコーデックは、ハイレゾ相当のワイヤレス伝送が行えるaptX HDからaptX、スタンダードなAAC/SBCまで幅広い。最初にGoogle Pixel 3 XLに接続してaptX HD再生の音質を確認した。静かな室内で試聴したので、ノイズキャンセリングのモードは「オフィス」にしている。

ノイズキャンセリングのモードを変更してみても、音のバランスを崩すことなく鳴らしてくれる

楽曲はジャミロクワイのアルバム『Automaton』のハイレゾ版から「サマー・ガール」を選曲した。ボーカルがセンターの位置にどっしりと力強く定位する。とてもエネルギッシュで熱気が伝わってくる声だ。音場は立体的で奥行きも深い。低音が粘っこく、躍動感にも富む。ストリングスの音色がゆったりと響いて濃厚な余韻を残す。パーカッションの音はややウェットな感じもするが、足もとが重く感じるほどではなく、音色が明快に描き分けられる良さがあった。

プレーヤーをiPhone Xに換えて、Spotifyから伊藤由奈の楽曲『trust you』を聴いた。やはりボーカルの声がふくよかで色っぽい。弦楽器のハーモニーも肉厚で響きがリッチだ。それぞれ耳にとても心地よい潤いを与えてくれる。柔らかいのに、芯が強い低音。ボーカルはハイトーンまで力強く、明るく伸び伸びとしている。AH-GH20も特長としていた力強さと快活さに、AH-GH30ではさらにバランスとつながりの良さが加わった。デノンのフラグシップヘッドホン「AH-D9200」にも搭載されているフリーエッジ構造を採用する40mm口径のカーボンファイバー・フリーエッジドライバーが奏功しているのだろう。

スピーカーユニットと同様の構造を備えるフリーエッジ・ドライバーを、デノンのHi-Fiヘッドホン上位モデルと同様に採用する

屋外に出て、地下鉄にも乗りながらAH-GC30のノイズキャンセリング性能を試した。モードは「飛行機」に切り替えた。ノイズキャンセリングのバランスが強くなる分、「オフィス」モードに比べて音の密度感もぐっと高まるような感覚もあるが、音のバランスに狂いは生じない。

本機を屋外で楽しむためのチューニングも万全と感じるところは、やはり充実した中低音の再現力の高さだ。立体的に弾むビートはスピード感も鋭利。騒音に囲まれる場所でも音楽のエッセンスをストレートにぶつけてきて、自然に耳に馴染む。山中千尋のアルバム『シンコペーション・ハザード』から「ヘリオトロープ・ブーケ」ではビブラフォンの余韻が、甘くとろける感覚を味わえる。これは筆者が最近聴いたほかのノイズキャンセリング・ヘッドホンでは、出会ったことのない感覚だ。


有線ヘッドホンとしても優れたクオリティを発揮する

同梱のアナログケーブルによる有線接続に切り替えて、ノイズキャンセリング機能はオンにしたまま、もう一度ジャミロクワイの「サマー・ガール」を聴いてみた。つまりハイレゾ再生を確認した。ディティールの解像感は上がるものの、ワイヤレスとワイヤードで音のバランス、つながりの良さは変わらない。一貫したAH-GC30の音だ。低音も肉厚なのに暴れない、ピタリと制動されて緊張感も豊か。EDMやロック系の楽曲にとても良くあった。有線・無線を切り替えても崩れないバランス感覚は、例えば飛行機での長旅の時に機内エンタテインメントと音楽リスニングを交互に切り替えながら楽しむ用途にも相応しいと思う。

アナログケーブルを繋げば、通常のワイヤードヘッドホンとして利用することも可能だ

生の音楽が持つリアリティと躍動感をありのまま忠実に伝えてくれる

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