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4312シリーズの最新モデル

JBLの新定番スピーカー「4312G」レビュー。モニター的だが懐も深い、限定機と最新機の「良いとこ取り」

公開日 2018/12/26 08:08 生形三郎
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試聴はラックスマンのフラッグシップ・プリメインアンプ「L-509X」で駆動した。音楽ソースは同じくラックスマンのDACコンバーター「DA-06」から再生。

JBL「4312G」を試聴

まずは、ジャズボーカルソースを再生してみると、たっぷりとした低域再生が胸に迫ってくる。ローエンドは、深い沈み込みよりもベース帯域の充実感が魅力的だ。鳴りっぷりがよく、ボリュームを上げると大型ウーファーならではの面で迫ってくる低音が心地良いのである。同時に、ウーファーのクロスオーバーが640Hzということも相まってか、ボーカルが厚みと温かみのある声で表現されることが心地がよい。

伴奏のピアノも、温かみに溢れるタッチが印象的で、ピアノトリオを再生してみても、同様にピアノのタッチやウッドベースのボトムが温かみを持って奏される。音の余韻が豊かで、輪郭のふくよかな音像となっており、心地よい聴き心地が得られるのだ。

そして、ユニット配置がインラインではなく同心円状に並んでいることもあってか、各帯域の音が豊かに混じり合った、一体感の高い音が届いてくることが実に快い。細部を突き詰めて聴かせる方向ではないのだが、帯域のバランスが良好で、ボーカルはもちろんのこと、それぞれの楽器の存在を的確に掴むことができる。神経質にならずとも音楽を的確に把握することができ、むしろ音楽を主体的に楽しみながらモニターもできてしまうのが、さすがJBLのコントロール・モニターシリーズである。

ポップスの女性ボーカルでは、温かくも瑞々しさを持った歌声で描かれ、思わずほっとするようなサウンドが味わえた。自然な開放感がある懐の広さがあり、ボーカルがスッと心に染みこんでくるかのような訴え方だ。それでいて音色のバランスもウェルバランスで、先述のように高い一体感でよく混じり合った、まとまりのよい落ち着いた音を楽しむことができる。特に、ロックやポップスなどのソースでよく聴けるような、スタジオ空間で各楽器の音ひとつひとつが明瞭に録音されたソースとの相性が絶妙だ。

オーケストラを再生してみると、スケール感の再現性が実に豊かだ。ティンパニなどの打楽器のボトムがふくよかに響き渡り、余韻たっぷりと豪快に聴かせる。やはりバランスがよく、嫌味や癖、そして抑制感のない、生き生きとした質感を味わえるのだ。バッフルが大きいものの、ステージの奥行きの見通しも良好である。まさに再生ソースのジャンルを選ばないことを実感させる。

また、先述した通り、フロント上部に、トゥイーターとミッドレンジ用の連続可変アッテネーターが搭載されていることも本機ならではの魅力だ。一般的にスピーカーから発せられた音は、設置状況やリスニングポイントに応じて、リスナーの耳に届く段階では大きく周波数特性が変化してしまう。それだけに、いくらスピーカー自体が良好な特性を持っていても、環境が整っていなければ本来の性能を十二分に味わうことは難しい。

そこで重宝するのがこのアッテネーターの存在だ。部屋の響きや設置状況に応じて変化してしまった音色バランスを、このアッテネーターによって任意に細かく調整することができる。ソース本来のバランスに、より簡単に近づけて楽しめるということだ。実際に、試聴時も調整したが、これによってより良好な音色バランスを手軽に得ることができた。これは、装置の組み合わせが鍵となるオーディオにおいて、それら機器の相性を最適化するためにも極めて有用な機能だろう。

本体前面の上部にアッテネーターを備える

以上のように、4312Gは、4312SEの魅力を遜色なく受け継いだ待望のレギュラーモデルといえる。ウェルバランスな音色感と快活さで、一体感高く音楽を楽しませてくれる、実に心地良いスピーカーである。

モニター的で音楽全体を俯瞰できる客観性を持ちながらも、細に入りすぎず、その鳴りっぷりの良さ、そしてアッテネーターの存在も相まって、実にユーザーフレンドリーなスピーカーであるかと思う。ジャンルを選ばない懐の広さも魅力だ。

なお、細かい点だが、ハーマンインターナショナルによると、4312SEに比べて4312Gは箱の強度が若干アップしているとのことで、機会があればぜひとも両機の聴き比べもしてみたいところだ。

(生形三郎)

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