連載:オーディオワンショット

SHUREのカートリッジ撤退、SAECトーンアームの復活。アナログオーディオは今後どうなる?

藤岡 誠

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2018年07月12日
オーディオ評論家・藤岡誠氏が自身の推薦するオーディオ機器、関連アクセサリー、あるいはコンポーネントの組合せ、またある時は新技術や様々な話題など、毎回自由なテーマで進めていく本連載。今回は同氏が今注目するオーディオ業界の動向について解説する。

衝撃だったシュアのカートリッジ撤退

最近、私が興味を持った内外オーディオ業界の動向、製品について分かり易く述べてみよう。実際には音の入り口から出口まで幅広いわけで整理しないと混沌としてしまうが、ここではカートリッジとトーンアームに限定して触れることにする。

SHURE「M97xE」

まず「本当か?」と驚いたのは、アナログレコード再生が主流だった時代に、MM型フォノカートリッジの分野で世界のオーディオ界を席巻していたアメリカのSHURE(シュア)社が、今年2018年の夏にこの分野から撤退することを去る5月1日に発表したことだ。通常、この種の話は何処からともなく情報が洩れ伝わってくるものだが、今回はそれが一切なかったから私はなおさら驚いたのである。そこで旧知の業界人の数人に確認したが、ほとんどが寝耳に水で、私と同様に驚愕していた。

かつて私は、多くの人たちにシュアの製品を推薦したし、自分自身もオルトフォンの「SPU-GT」「SPU-GTE」と共にシュアーの“V-15系”を使っていた。最初に聴いた「V-15」は1964年(昭和39年)頃に聴いた最初の「V-15」。その2年後には「V-15タイプII」、そして1973年頃には一層に完成度を高めた「V-15タイプIII」を使ってジャズ系のレコードを楽しんだ。今回、そのシュアがフォノカートリッジから撤退するという現実を知った時、あの頃のアナログレコード再生の日常が思い浮かんできた。名機「V-15タイプIII」に興味がある方は早い時期に手を打っておいた方がいいだろう。とにかく、SHUREがフォノカートリッジから撤退するという現実を知った今、まさにオーディオ界の時代の流れを実感する。

オルトフォンからは創立100周年カートリッジが発表

その一方、デンマークのオルトフォンは、去る5月中旬にドイツ・ミュンヘンで開催された「HIGH END 2018 MUNICH」で、創立100周年記念モデル2機種を発表した。「MC Century」と「SPU Century」がそれだ。

MC Century

これらはその名もズバリ“Century(センチュリー)シリーズ”の一環。特に注目は限定生産の「MC Century」で、何とダイヤモンドカンチレバーを採用したMC型。針先形状はシバタ針とのことである。ボディは、既発売の「MC Windfeld Ti」(¥500,000/税別)と同様にチタンボディを採用。具体的には、SLM(セレクティブ・レーザー・メルティング)と呼ぶ、金属(ここではチタン粉末)などの粉末をレーザー焼結・積層させて立体的に造形する方式。従来からの金型や切削による製造よりも遥かに自由度や精度が高いのが特徴とのことだ。

SPU- Century

もう一つの「SPU Century」は、今秋にも発売予定され、シェルは伝統のSPU形状で、そのボディには“Since 1918”の刻印がある。価格はいずれも未定である。

マニアが愛してきたサエクのトーンアームが復活する

こうしたカートリッジとは別に、「HIGH END 2018 MUNICH」ではターンテーブル、プレーヤーシステム、そしてトーンアームにも注目が集まったようだ。ここではトーンアームに注目しよう。

“トーンアーム”と一口でいってもその内容は様々で、例えば、いわゆるリニアトラッキング方式だが、最近はこれまでなかった新しい機構を備えた実に興味深いタイプが幾つか実用化されている。それらは実に興味深いものがあるが、特殊といえば特殊だ。そこでここでは、私たちにとってずっと身近で日常的なスタティックバランス型のトーンアームのプロトタイプについて触れよう。

それは、年末までには発売予定されている日本のSAEC(サエク)のプロトタイプである。同社のトーンアームは現在、すべてが生産停止されていることは周知の通りだ。そこで簡単に同社のトーンアームについてに述べよう。

オリジナルを再現しつつ工作精度を大きく向上させた「WE-4700」

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