音質向上にリソースを集中した最新モデル
音質/機能に妥協なしの“薄型”AVアンプ − マランツ「NR1609」を従来機種と比較レビュー
2018年06月29日
マランツの薄型AVアンプ NR1600シリーズは、薄型筐体を採用しつつ音質・機能の両面で妥協のない仕様を実現。リビングなどの生活空間で多彩なソースを高音質再生できる“コントロールセンター”として、AVアンプの中でもトップクラスの売上を誇っている。
その最新モデル「NR1609」では、前モデルで機能面の進化に一区切りを付けられたこともあり、その開発リソースを「音質追求」に集中投入。音質面で一歩踏みこんだ向上を実現できたという。今回、山之内正氏がステレオ再生とサラウンド再生の両面でNR1609のサウンドが従来機からどれだけ進化したのか、実際に比較しながら検証を行った。
■さらに音質を突き詰めた薄型AVアンプ「NR1609」を前モデルと比較試聴
最近のテレビは余分なものを削ぎ落としたスリムなデザインが人気だ。映像だけが宙に浮いているような雰囲気を演出し、没入感を高める効果も期待できる。そんなスタイリッシュなリビングシアターを狙うならスピーカーやTVラックもスリムな製品を組み合わせるのが理想だが、そこで問題になるのがAVアンプのサイズである。高さと奥行き方向にかさばる一般的なAVアンプはスリムなラックに入らず、置き場所の確保は簡単ではない。
そんな悩みを解決するとっておきの製品が、高さ105mmの薄型ボディを実現したマランツの「NR1609」(関連ニュース)だ。奥行きも378mmしかなく、小さめのラックにも無理なく収まる。7ch分のパワーアンプを内蔵する本格派のAVアンプで、ここまでコンパクトな製品はかなり珍しい。「こんな製品を待っていた」という映画ファン、音楽ファンは少なくないはずだ。
NR1609は2017年発売の「NR1608」をベースにデジタルとアナログ両面で大幅な音質改善を果たした最新作で、機能面ではMM対応のフォノ入力を追加したほか、ブラックに加えてシルバーゴールド仕上げを選べるようになった点が新しい。だが、重要なのはあくまで音質面でのリファインだという。前作NR1608との比較も交えながら、本機の音質をレポートすることにしよう。
■ステレオ再生では、Hi-Fiアンプと肩を並べるクリアな音色を再現
まずはディスクプレーヤーをアナログ接続でつなぎ、ステレオアンプとしてのクオリティを確認する。スピーカーはB&W「706 S2」を組み合わせた。
最初にカティア・ブニアティシヴィリが独奏を弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を聴く。ピアニシモからフォルテシモまで9小節間で音量を増す冒頭の独奏ピアノは、クレッシェンドの頂点の和音が想像していたよりも一段階強く鳴り響き、強弱のレンジの広さとコンサート用グランドピアノならではの低音の支えの厚さを強く印象づける。ピアノ全体が隅々まで鳴り切って、オーケストラの弦と木管の分厚い響きとほぼ対等の厚い音を聴かせるのだ。
同じ条件で聴いたNR1608のピアノも澄み切った音色が美しいが、重量級の低音が身体を包み込むところまではいかず、比べてしまうともう少し厚みが欲しくなる。
フィリップ・ジョルダン指揮パリ・オペラ座管弦楽団の『展覧会の絵』から「バーバ・ヤーガの小屋」を再生すると、ティンパニや低弦の質感が従来モデルから明らかに改善されていることに気付く。超低音から低音にかけて最大級のエネルギーをとらえた優秀録音だけに、アンプの性能が如実に出てしまうのだが、NR1609の低音には量感だけでなく切れの良さがあり、打楽器群の強打で音がふらつくこともない。
今回のリファインで電源回路のブロックコンデンサーや整流ダイオードなど基本パーツを強化した成果が音に現れているとみて間違いないだろう。スリムな外見から軽めのサウンドを想像しがちだが、実際に出てくる音は相当に重心が低く、大編成のオーケストラならではのスケール感も無理なく引き出してくる。
ジャズのピアノトリオでは、ピアノとドラムのにごりのない高音域に改善の効果を聴き取ることができる。一音一音のアタックが鮮明で輪郭が緩まず、シンバルの立ち上がりには余分な付帯音が乗らず、にじみが非常に少ない。
NR1608も基本的な音の傾向にそれほど大きな違いはないのだが、じっくり聴き比べてみると、音の粒立ちがやや甘く感じられたり、シンバルやスネアのテンションが緩めに聴こえるフレーズがある。その差は僅かなものだが、演奏から受けるトータルの印象やサウンドの鮮度に影響を及ぼすことはたしかだ。
その最新モデル「NR1609」では、前モデルで機能面の進化に一区切りを付けられたこともあり、その開発リソースを「音質追求」に集中投入。音質面で一歩踏みこんだ向上を実現できたという。今回、山之内正氏がステレオ再生とサラウンド再生の両面でNR1609のサウンドが従来機からどれだけ進化したのか、実際に比較しながら検証を行った。
■さらに音質を突き詰めた薄型AVアンプ「NR1609」を前モデルと比較試聴
最近のテレビは余分なものを削ぎ落としたスリムなデザインが人気だ。映像だけが宙に浮いているような雰囲気を演出し、没入感を高める効果も期待できる。そんなスタイリッシュなリビングシアターを狙うならスピーカーやTVラックもスリムな製品を組み合わせるのが理想だが、そこで問題になるのがAVアンプのサイズである。高さと奥行き方向にかさばる一般的なAVアンプはスリムなラックに入らず、置き場所の確保は簡単ではない。
そんな悩みを解決するとっておきの製品が、高さ105mmの薄型ボディを実現したマランツの「NR1609」(関連ニュース)だ。奥行きも378mmしかなく、小さめのラックにも無理なく収まる。7ch分のパワーアンプを内蔵する本格派のAVアンプで、ここまでコンパクトな製品はかなり珍しい。「こんな製品を待っていた」という映画ファン、音楽ファンは少なくないはずだ。
NR1609は2017年発売の「NR1608」をベースにデジタルとアナログ両面で大幅な音質改善を果たした最新作で、機能面ではMM対応のフォノ入力を追加したほか、ブラックに加えてシルバーゴールド仕上げを選べるようになった点が新しい。だが、重要なのはあくまで音質面でのリファインだという。前作NR1608との比較も交えながら、本機の音質をレポートすることにしよう。
■ステレオ再生では、Hi-Fiアンプと肩を並べるクリアな音色を再現
まずはディスクプレーヤーをアナログ接続でつなぎ、ステレオアンプとしてのクオリティを確認する。スピーカーはB&W「706 S2」を組み合わせた。
最初にカティア・ブニアティシヴィリが独奏を弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を聴く。ピアニシモからフォルテシモまで9小節間で音量を増す冒頭の独奏ピアノは、クレッシェンドの頂点の和音が想像していたよりも一段階強く鳴り響き、強弱のレンジの広さとコンサート用グランドピアノならではの低音の支えの厚さを強く印象づける。ピアノ全体が隅々まで鳴り切って、オーケストラの弦と木管の分厚い響きとほぼ対等の厚い音を聴かせるのだ。
同じ条件で聴いたNR1608のピアノも澄み切った音色が美しいが、重量級の低音が身体を包み込むところまではいかず、比べてしまうともう少し厚みが欲しくなる。
フィリップ・ジョルダン指揮パリ・オペラ座管弦楽団の『展覧会の絵』から「バーバ・ヤーガの小屋」を再生すると、ティンパニや低弦の質感が従来モデルから明らかに改善されていることに気付く。超低音から低音にかけて最大級のエネルギーをとらえた優秀録音だけに、アンプの性能が如実に出てしまうのだが、NR1609の低音には量感だけでなく切れの良さがあり、打楽器群の強打で音がふらつくこともない。
今回のリファインで電源回路のブロックコンデンサーや整流ダイオードなど基本パーツを強化した成果が音に現れているとみて間違いないだろう。スリムな外見から軽めのサウンドを想像しがちだが、実際に出てくる音は相当に重心が低く、大編成のオーケストラならではのスケール感も無理なく引き出してくる。
ジャズのピアノトリオでは、ピアノとドラムのにごりのない高音域に改善の効果を聴き取ることができる。一音一音のアタックが鮮明で輪郭が緩まず、シンバルの立ち上がりには余分な付帯音が乗らず、にじみが非常に少ない。
NR1608も基本的な音の傾向にそれほど大きな違いはないのだが、じっくり聴き比べてみると、音の粒立ちがやや甘く感じられたり、シンバルやスネアのテンションが緩めに聴こえるフレーズがある。その差は僅かなものだが、演奏から受けるトータルの印象やサウンドの鮮度に影響を及ぼすことはたしかだ。
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