評論家・岩井喬がチェック

〈レビュー〉JVCの新機軸ハイレゾイヤホン「SOLIDEGE 01 inner」を聴く

岩井 喬
2017年12月29日
■JVCの定番イヤホン“WOOD inner”と対をなす新たな軸“SOLIDEGE inner”

SOLIDEGE 01 inner「HA-FD01」

JVCのイヤホンといえばウッドハウジングとウッドドーム振動板を使った“WOOD inner”シリーズが他にはない個性として定番アイテムとなっているが、もう一つの新たな個性を持つ定番を目指して開発されたモデルが誕生した。それが“SOLIDEG 01 inner”「HA-FD01」だ。ドライバーユニットをはじめ、筐体構造も新設計という同社の意気込みの高さがうかがえるプロダクトである。

Dignified(凛とした)、Distinct(明確な)、Delightful(心地よい)というサウンド性を意味するキーワードの頭文字から命名された11mm径「D3ドライバー」ユニットは、振動板のドーム部にダイヤモンドライクカーボン(以下、DLC)コーティングを施したPEN素材、タンジェンシャルエッジにカーボンコーティングPET素材を用いたDLCデュアルカーボン振動板を導入。ドライバーケースにチタンを用いたほか、独自のアキュレートモーションエアダンパーを取り入れている。

ノズル部が360度回転し、通常掛けだけでなく、耳掛けスタイルにも変えられるユニークなファインアジャスト回転機構を備えるステンレスボディはずしりと重く、4万円クラスの製品の中では一際剛性の高い仕上がりだ。

ノズル部の素材をステンレス・チタン・真鍮の3パターンを用意し、バヨネットマウントのように装着するJマウントノズル交換システムも非常に個性的である。他社で見受けられるねじ止め式のフィルター交換機構と違い、確実に固定・脱落しない構造とするため極小のピンを仕込んだ構造となっており、この点に関しても4万円という価格でここまでこだわったつくりとなっていることは驚きという他ない。

さらにイヤーピース内側にディンプルを設けて音のにごりを抑制するスパイラルドットイヤーピースも肌に近い力学特性を持つ、低反発新素材SMP iFitをイヤホンとして初めて採用し、「スパイラルドット+イヤーピース」へと進化を果たした。SMP iFitは肌に馴染みやすいため、装着性の向上に繋がるだけでなく、適度な振動吸収性能を持っており、低域をタイトにまとめるなど、音質への効果も期待できる。

またMMCX端子を取り入れた着脱式ケーブルは左右分離ハイグレードブルーヴケーブルを取り入れ、プラグや分岐部にもメタルパーツを取り入れ、振動抑制効果を持たせている。ゆくゆくは同じような構造を持つバランス駆動用ケーブルのオプションも期待したいところであるが、MMCX端子を用いていることからサードパーティ製を含めリケーブルの選択肢は多く、ユーザーごとに好みのものを選ぶことができる点が好ましい。

■試聴:「新機軸と呼べるサウンドであることは間違いない」

試聴にはソニーのウォークマン「NW-WM1Z」を用いてみたが、ハウジングだけでなくドライバーそのものもメタルパーツでがっちりと抑え込んだ制動性の高いタイトなサウンドが特徴で、不要な振動をとことん抑え込んだ解像度の高さ、クリアな音場感を堪能できる。

試聴に用いた個体はまだ製品版となる前のサンプルであり、実際のサウンドとは違う部分もあるそうだが、ダイナミック型ならではのシームレスなレンジ感と躍動ある中低域の弾力感、BA型にも負けないクリアでヌケ良いシャープな高域特性を両立させた、JVCの新機軸と呼べるサウンドであることは間違いないだろう。

サウンドチューニングにおいても、アキュレートモーションエアダンパーの調整など、低域の再現性についてギリギリのタイミングまで取り組んでいたそうで、その苦労の甲斐あるハイレゾ時代にふさわしい情報量と制動性のバランスを兼ね備えた性能を実現している。

Jマウントノズル交換システムの効果についてもチェックしてみたが、標準のステンレスではタイトでハリ良くクリアなサウンド性であるのに対し、チタンでは高域の華やかさをより前面に押し出した、ブライトで煌びやかなものに変化。ピアノのアタックもハードな響きで、ハーモニクスの余韻もクールに輝き、女性の声もハキハキとしたシャープなエッジ感を際立たせる傾向にある。メリハリが良いのでアニソンなどの煌びやかなサウンドには親和性が良いだろう。

そして最後の一つ、真鍮では重心の低い落ち着いた響きとなり、リズム隊のアタックも密度感良く描写。ピアノのアタックも重みがあり、ハーモニクスも自然でしっとりとした上品さを感じさせるものとなった。スムーズで空間性も高く、バランスの良い傾向に感じられる。異種金属の組み合わせによる振動抑制効果がもたらす音質変化を耳元でダイレクトに味わえる面白い機能性といえるだろう。以降の試聴ではバランス性を重視し、真鍮ノズルを用いることにした。

クラシックでは管弦楽器のハリ良く爽やかな旋律をクリアかつ軽快なタッチで表現。余韻の響きは煌びやかさが伴い、低域の引き締まったS/N良い音場に華やかなハーモニーが広がっていく。ジャズ音源ではウッドベースの弾力良い引き締めと、ピアノの澄んだ響き、ホーンセクションのキレ良い鮮烈な表現を味わうことができる。

11.2MHz音源では落ち着き良く響くピアノの澄んだ倍音表現とアコギの爽やかなピッキング、肉付き良く明瞭なボーカルのハリ良い口元感をナチュラルに描き出す。ロックのリズム隊も重心低くタイトなアタックを聴かせ、音場はS/N良くクリアに表現。ギターワークもキレ良く描くが、ボディの腰の太さ、ボーカルの口元のしっとりとした質感など、細やかなディティールもトレース。煌びやかさの中にも安定感あるサウンドである。

アニソンにおいてはボーカルのハキハキとした鮮度の良さ、リズム隊の締まり良い明瞭なアタック感により、キレあるスピーディーなサウンドを煌びやかに演出。エレキギターの鮮やかなカッティングも鋭さがあり、クリアなピアノの響きも澄んでいる。ベースの重心バランスも取れたライブなサウンドだ。

最後にケーブルをORB製「Clear force MMCX 4.4φ Ver.2」へと交換し、バランス駆動でのサウンドも確認してみた。キレの良さが全面的に支配するフォーカス鮮やかなサウンド傾向で、分離良く付帯感のない表現だ。

音像の輪郭はシャープに描かれ、リヴァーブの余韻は爽やかに広がる。11.2MHz音源では音離れの良さが際立ち、質感も丁寧に引き出す。ピアノの響きも含めた余韻は清涼で、階調細やかな描写だ。S/N良く、定位感も明確で音場の表現もスムーズでリアリティ溢れるものとなっている。

その持てるポテンシャルの高さを実感するに至り、JVCの新たなスタンダードとなり得るサウンドを持つモデルであることを確信した。価格面においても非常にこなれたものであり、機能性の豊かさもまた同価格帯の製品では味わえない魅力の高さといえる。ハイブリッドモデルを中心とした人気実力機がひしめくなかにあっては、非常に個性的でありながらも、基本に忠実な設計思想を持っており、上位クラスにも負けない、ハイレゾ音源の緻密な表現を引き出せるハイC/P機だ。

■試聴音源
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
・The Cars『Heartbeat City』〜You Might Think(192kHz/24bit)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源
・劇場版『ソード・アート・オンライン -オーディナル・スケール-』O.S.T.〜ユナ(神田沙也加)「Ubiquitous dB」(96kHz/24bit)

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