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デュアルDACを採用

パイオニア「XDP-20」レビュー。良い音とカジュアルさを両立したポータブルプレーヤー入門機

公開日 2017/12/07 10:00 折原 一也
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■”手触りの良い”3.5mmの出力と圧倒的な2.5mmバランス出力

ハイレゾの音源でXDP-20の音質を徹底的にチェックしていこう。XDP-20は3.5mmのアンバランス出力の他、2.5mmのバランス端子出力も可能。音質チェックのイヤホンはSHUREの「SE535」にサエクのMMCX対応で3.5mmプラグのリケーブル「SHC-220FS」をリファレンスとして利用。バランス接続には同じ線材の2.5mmバランスプラグ採用リケーブル「SHC-B220FS」を用意して検証している。

上位機種に見られる、口金によるジャックの補強こそ行っていないが、きちんとバランス端子を用意している

まずは3.5mmのアンバランス端子で接続したXDP-20のサウンドは、一言で表現するななら、エントリー機とは思えない“なめらかな質感”を備えたナチュラルサウンドだ。

映画『ラ・ラ・ランド』サントラであるジャズ「アナザー・デイ・オブ・サン」を聴くと、自然に広がる心地のよい音。ウッドベースの質感は適度にウォームで、基本的な傾向はフラットながらも抑揚もしっかり描き分ける。解像感の表現も上位機譲りだ。RADWIMPSの「前前前世 (movie ver.) 」を聴いても、ベースラインは先鋭感ありきというよりはしっかり細部を描き込んでじっくり聴かせるというイメージだ。

また以前からリファレンスとして使っているSHANTI「Killing me softly」は、アコースティックギターと歌声のシンプルな編成の楽曲なのだが、鮮度感のある録音をフラットに再現してくれる。ニュアンスの表現も豊かだ。クラシックはカラヤンを聴いたが、ダイナミズムを引き出しつつ特定のクセを感じさせない。ここでもナチュラルな音質傾向が活きている。

エッジが丸いため、比較的手に収まりやすい形状

続いて2.5mmバランス接続による「ACG」モードに切り替える。搭載された2つのアンプのうちの1つでグランドを強固に安定させるというこのモードでは、見違えるほどに音がクリアネスを増す。「アナザー・デイ・オブ・サン」では、ボーカルの音がよりクリアになり、バスドラムやウッドベースは音の輪郭まで明瞭に描く。ピアノの音の質感や空間の見通しなど、シングルエンドとは別物といえるサウンドが味わえる。

RADWIMPSの「前前前世 (movie ver.) 」では、音のクリアネスや分離感が大きく向上。一方で、高域まで無理なく伸びるナチュラルな傾向はしっかりと維持している。通常のBTLによるバランス接続「Balanced」モードでは、音のクリアネスよりはエネルギー感がより全面に出る印象だ。いずれも楽曲によって好みで選べるという差である。

ボリュームを操作した時現れるメーターはナナメに増減する

なお、バランス出力の設定は、音源を再生したままホーム画面に戻り画面中央にあるボタン(「Balanced」「ACG」がトグルで切り替わる)を押すことで、音源を再生したままで切り替えが可能(一瞬音が途切れ、ACG→Balancedではノイズが入る)なので、聴き比べも簡単だ。

■多岐に渡る音質設定が可能。DSD/MQAの魅力も引き出してくれる

XDP-20は、他にもサウンドに関わる音質関連の設定が多数用意されていて、再生画面から簡単に切り替えられる。「アップサンプリング」はオフ/96k・88.2kHz/192k・176.4kで切り替え可能だが、上位にするほどより空間再現に振ったサウンドになる。「Hi-bit32」をオンにすると、音のダイレクト感はやや後退しつつも、密度感と質感が向上する。

サウンド設定の他、音楽ライブラリの構築やWi-Fi設定なども再生画面から設定メニューに飛ぶことができる

「デジタルフィルタ」の設定は標準のSHARPからSLOWに切り替えると若干音がマイルドになり、SHORTにすると音の立ち上がりが早くなる。「ロックレンジアジャスト」の設定は、WIDE〜Normal〜Narrowの間を合計7段階で調整可能。段階に応じて音のディテールの微妙なニュアンスが変わっていくが、今回試聴した楽曲では、Narrow側に2つずらした位置あたりがベストと感じた。

これらの設定とは別に通常のイコライザーも利用可能で、5段階で有効にできる(デフォルトは0=オフ)。フラットを含む6種類と、3つのカスタム設定が記録できる。カスタムでは帯域を指定したゲインの調整ができるので、自分の音を追求するベースとしてはこの上なくマニアックだ。

自分好みに帯域バランスを変えたいならイコライザーの出番。プリセットから選んだり、手動で設定もできる

対応音源については冒頭でも触れた通りDSDとMQA音源も対応。DSDはAliceの「short straps」を聴いたが、音の粒立ちのひとつひとつまで丁寧に描く高水準なサウンドを聴かせてくれる。MQAはテクノボーイズの「good night citizen」で試したが、楽器ごとの質感を巧みに引き出してくれる。いずれの音源も、特にバランス接続の際のサウンドが非常に好印象だった。



XDP-20はカジュアルな方向に振ったモデルと思いきや、ツインDAC構成や2.5mmバランス接続対応など仕様は上位機譲りで、特筆すべきバランス出力の音質をはじめ価格を超えるサウンドの水準を備えている。バランス駆動に対応したポータブルオーディオプレーヤーへのデビューを考えているなら、XDP-20は特にお薦めしたいモデルだ。

(折原 一也)

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