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オーディオ銘機賞2018で製品特別大賞を受賞

エソテリックの一体型プレーヤー/プリメイン最高峰。「Grandioso K1/F1」を聴く

公開日 2017/11/24 10:00 鈴木 裕
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高精度ルビジウム発振器を採用した「Grandioso G1」

G1は、エソテリックにおいて第4世代のマスタークロックジェネレーター。心臓部には10MHzの正弦波のクロック出力を4系統装備する。出力段には高周波帯域の特性の良い高速トランジスターを使ってディスクリート回路を組んでいる。また、バッファーアンプ部が4系統に対して、電源部も4つに独立させている。

エソテリックのマスタークロックジェネレーター第4世代機「Grandioso G1」

今回、クロック出力の基準としての電位、グラウンド0Vを保つモードを新設したのも大きい。グラウンド電圧の変動によるノイズ(ランダム・ジッター)防止に対応しているという。ただしその最大の特徴は、G1を接続した時の再生音にある。たとえば音場空間のフォーカスの精度だけでなく、音楽としてのゆらぎ、生きた音楽性を目指して音を詰めていったという。

Grandioso G1の背面部。10MHz専用の正弦波クロック出力にBNC×4系統を用意。グラウンドを常に0Vに保つ「アダプティブ・ゼログラウンド」モードを新たに装備する

バランス接続では太い低音で各音像がリアルに見えてくる

試聴はエソテリックの試聴室にて行った。スピーカーはTANNOYの「Kingdom Royal Carbon Black(キングダムロイヤル・カーボンブラック)」を使用した。

TANNOYの「Kingdom Royal Carbon Black」を用いて試聴

まずはK1+F1を通常のバランス接続で聴く。太い低音が印象的でありつつ、中高域をマスキングすることなく各音像がリアルに見えてくる。質感として、いい意味で若干ウェットな感じを持っている。音の色彩感はやや濃いめで、シックなニュアンス。オペラの一場面を聴いた時のソプラノの艶やかさや、合唱隊のフォルテがきれいに立ち上がってくるのも、なかなか聴けない領域の音だ。

続いて接続をES‐LINK Analogに変更する。クリアネスが増して全体的に音が鮮烈になる。質感の湿り気がアキュレートな方向にスライドし、よりリアルで発色の良いハイビジョンを見ているかのようだ。K1とF1を単体で聴いたこともあるが、K1由来と思える音の色彩感が特別に良い。また、スピーカーを十全にハンドリングしているF1の駆動力の高さにも瞠目させられる。

K1/F1を組み合わせ。バランス接続では低音が太く各音像がリアル、ES‐LINK Analogではさらにクリアになってより鮮烈なサウンドを鳴らす

G1の接続では色彩感が躍動し、良く音楽が鳴る感覚が横溢する

最後にG1の出力をK1に接続してみる。色彩感がよりヴィヴィッドになり、しなやかで低音の揺蕩う感じも印象的である。キーボードのグミのような透明で色合いの良いソフトな質感も快感。音というよりも触感であり、肌に当たる空気感を楽しめる感覚がある。音場空間の見通しの良さや音像の実在感はさらに高まるが、音楽としての情緒、録音した現場で感じていたと思われる居心地の良さ、良く音楽が鳴っている感覚が横溢している。クロックの有無は今までも色々と体験してきているが、これほど大きい変化は初めてかもしれない。

(鈴木 裕)



本記事はオーディオアクセサリー164号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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