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<山本敦のAV進化論 第146回>

【レビュー】ソニー新ウォークマン「A40」の音質は “大胆なほどアップグレード” していた

公開日 2017/09/27 09:46 山本 敦
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May J.『ReBirth』から「ふたりのまほう」

A40はボーカルの声の輪郭線がくっきりと描かれ、しなやかで艶っぽい表情が活き活きと浮かび上がってくる。低域はグンと一気に立ち上がるようなスピード感が加わった。エレキベースの余韻が伸びやかに広がる。エネルギッシュなA40のサウンドがハイテンポなポップス系のサウンドにとてもよくマッチした。

MISIA『星空のライヴIII@山中湖シアターひびき』から「Everything」

ピアノの音色が鮮明で、アタックの鋭さが増している。音場が広々と描かれ、楽器の音はA40の方がより色濃く強い存在感を感じた。きらめくような高域の明るく透明な音がとても高い位置に定位する。アコースティックギターの弦の音色がきれいに解れて広がる。低音の響きも深くリッチだ。A30に比べると低いリズムの音像が引き締まっていて弾力感がある。ボーカルは細かなニュアンスの密度が高く生々しい。ライブ録音の作品はいっそうリアルな空気感を新しくなったA40シリーズで味わうことができそうだ。

Michael Jackson『Off The Wall』から「Off The Wall」

A40ではボーカルの肉付きがさらに良くなった。コーラスが重なり合ってきてもメインボーカルの印象が痩せることなく、ふくよかなハーモニーをつくり出す。比べると特にA30の音から感じる高音の張りや固さが柔らかくほぐれてグルーブにゆとりが生まれている。余韻の柔らかさも、比べて聴くと新しいA40が進化したポイントであることが見えてきた。ドラムスの細かな音も粒立ちが鮮明で、空間の立体表現力が上がっている。ベースラインもどっしりとしていて演奏の土台が安定している。

Hiromi『SPARK』から「Wonderland」

演奏の冒頭、パーカッションのスモーキーな余韻が広がる中を、ピアノの音が鋭く切り裂く。軽やかなベースが立ち上がり、演奏の躍動感が一気に高まる。A30のサウンドにも十分な力強さを感じるが、A40の音はよりいっそう引き締まっていて心地よい緊張感が伝わってくる。音のつながりも良くなった。ピアノの右手が伸びやかなメロディをうたいあげる。エレキベースにバスドラム、フロアタムのタイトな低音が描くスピード感の豊かなグルーブに包まれた。

MQA音源の再生も試してみた。クリスチャン・エッゲンのピアノ曲『Chaconne opus 32』はノイズがなくクリアな情景が広がる。音色が非常に鮮明で、指先の動きが脳内で生々しくビジュアル化されて浮かび上がってくるほど、音色のリアリティがリッチに再現された。ピアノの音がすっと立ち上がり、余韻が静寂の中にきれいに溶けていく。MQAらしい過渡特性の高さを実感できるサウンドを味わえる。

情家みえの『FLY ME TO THE MOON』ではボーカルの細かなニュアンスが見えてくる。ピアノのアタックが鋭く立ち上がり、ひんやりとするような空気を肌で感じさせる。MQA再生ならではの魅力と言える、この独特の緊張感をハイレゾ対応ウォークマンのエントリーモデルでも味わえるようになったことは非常に歓迎すべき出来事だ。本機を手に入れた方はぜひ一度MQAサウンドを体験してみて欲しい。

手応え充実のハイレゾ対応ウォークマン入門機

A30と並べた時の外観の大人しい変化とは裏腹に、A40の音質は大胆なアップグレードを遂げていた。スマホのサウンドに飽き足らなくなってきた方には「はじめてのハイレゾDAP」としてオススメしたいし、メインのハイレゾDAPのほかにもう1台サブ機を増やすなら「そろそろウォークマン」も良いのでは。新しいA40シリーズが100%期待に応えてくれるだろう。

もしバランス出力やDSDネイティブ再生などもうワンステップ上を目指したい方には、同日発売のNW-ZX300がオススメだ。同じ時期に揃った2つの強力なウォークマンをぜひ店頭やイベントで聴き比べてみてほしい。

(山本 敦)

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