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海上忍のラズパイ・オーディオ通信(35)

ラズパイ・オーディオの “HDMI経由” でハイレゾ/マルチ再生環境を構築(前編)

2017/08/15 海上 忍
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HDMI経由での音声出力は以前から可能だが、現行Linuxカーネル/ALSAには制約がある。HDMIで出力する場合、信号を受信する機器のスペックに関係なく、48kHz/16bitにダウンサンプリングする仕様なのだ。最大8chのマルチチャンネル再生に対応するが、やはり上限は48kHz/16bit。これでは、音源の価値が大きく損なわれてしまう。

Moode Audio v3.7でFLAC 96kHz/24bit/2chを再生したところ。48kHzにダウンサンプリングされていることがわかる

Moode Audio v3.7でFLAC 96kHz/24bit/5.1chを再生しようとしたが、エラーとなり停止された

そこで注目したのが、こちらのやり取り(詳細は→ (1)(2))。おおまかにいうと、ALSAにマルチチャンネルを扱うためのAPIを追加し、処理できる最大チャンネル数(8ch)のうち2chを流用することで、Raspberry PiのSoC「BCM2835」で5.1ch再生を可能にするというアイデアだ。多少乱暴な方法だが、これでRaspberry PiオンボードのHDMIを利用して最大192kHz/24bit/5.1chを再生できる。

しかし、冒頭に書いたとおり、カーネルの再構築にはスキルが必要。経験者ならばともかく、開発ツールを整えたうえでカーネルのソースコード(しかもパッチが対応するバージョンにあうもの)を入手し、パッチを当てる作業を進める作業は一筋縄ではいかない。この連載で紹介するとしたら、すべての作業を自動化するシェルスクリプトをあわせて公開しなければ、無責任なことになってしまう。長らく材料として温めていたところに現れたのが、Moode Audioの最新バージョンだ。

Moode Audio v3.8のカーネルバージョンは「4.9.40-v7+」。素のカーネルとはちょっと違う

Moode Audio v3.8では、新機能として「HDMI audio interface support for 24bit 192kHz」がうたわれている。どのパッチが当てられているかは明かされておらず、文面からはマルチチャンネル再生時の話かどうかも判断できないが、HDMI経由で最大192kHz/24bitの信号を出力できるらしい。しかも、オプションとして提供されるカーネル(Advanced Kernel)ではなく、デフォルトのカーネルで対応するということだ。

MPDではコーデックなど再生系全体が絡むため、問題が起きた時に分かりやすいようaplay(ALSA標準の再生コマンド、WAVしか扱えない)を利用してテストした。なお、「aplay -l」を実行したときにHDMIはCARD 0/Device 1となるようオーディオ出力を設定している。

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$ aplay -v -D plughw:0,1 96khz24bit.wav
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6ch(5.1ch)マルチ、96kHz/24bitのWAVを再生したところ、詳細情報には「CHANNELS: 6」と「RATE: 96000」の文字が出現。Moode Audio v3.7では再生すらできなかったところが、画面の情報を見るかぎりでは狙いどおり96kHz/24bitの6chマルチで再生できている。96kHz/24bitの2chも、レート変換なしに再生できているようだ。

Moode Audio v3.8でFLAC 96kHz/24bit/5.1chを再生したところ。ダウンサンプリングされずに信号出力されていることがわかる

では、192kHz/24bitの5.1chマルチは? MPD経由で5.1chのFLACを再生すると? DSDマルチはPCM変換されたうえでマルチチャンネル出力される? 実際にAVアンプへ出力するとどうなる? チェック項目は多岐にわたるため、次回にまとめて検証結果を報告させていただきたい。

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