海上忍のラズパイ・オーディオ通信(35)

ラズパイ・オーディオの “HDMI経由” でハイレゾ/マルチ再生環境を構築(前編)

海上 忍

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2017年08月15日
オーディオで「音が変わる」要素があるとすれば、それはハードウェアそのものかアクセサリーという考え方が支配的だ。確かに、コンポーネントを入れ替えれば音は一変するし、ケーブルやインシュレーターを換えても音の表情は変わる。

しかし、ソフトウェアはどうだろう。音源としてのソフトで音が変わることは言わずもがなだが、デジタルオーディオにおいてはプログラムという意味でのソフトも、音を変える材料となりうる。符合化(エンコード)されたオーディオソースを復号化(デコード)する「コーデック」は、その代表格と言っていいはず。アップサンプリングやビット拡張といった処理も、オンボードチップで処理されることが多いとはいえソフトの仕事だ。

ラズパイ・オーディオでは、「音が変わる」要素はより強くソフトウェアに現れる。MPDと関連するデコーダ(ffmpegなど)もそうだが、Linuxにおけるオーディオ再生の基盤「ALSA」、そしてLinuxカーネルそのもので音は変わる。プロプライエタリな技術を中心に構成されるWindowsやMacでは、カーネルやサウンドフレームワークに手を入れることは不可能に近いが、ほぼオープンソースソフトウェアから成るLinuxは、そこに誰でも入り込める。

第32回で紹介した「I2Sで384kHz/32bit再生」(関連記事)は、その好例だ。Linuxカーネルの総本山「Kernel.org」で公開されている最新安定版v4.12.4のソースコード(ALSAのソースコードも一部反映されている)では、I2Sで192kHz/24bitを超える信号はサポートされないが、開発者コミュニティに提案されているパッチ(ソースコードの差分)を適用したソースコードをもとにカーネルを再構築すると、I2Sで384kHz/32bitレディな環境を実現できる。

現行のLinuxカーネルには採用されていない、先進的/実験的機能を追加する差分(パッチ)が開発者コミュニティには存在する

そのようなパッチの存在は、Raspbery Pi財団が管理する開発者向けソースリポジトリ(詳細はこちら)やメールマガジンに目を通すなど、日々情報のアンテナを張る以外に気付く術はない。自力でカーネルを再構築するスキルも必要だ。しかし、意欲ある開発者が手掛けるLinuxディストリビューションを使えば、その限りではない。Moode Audioの「Advanced Kernel」は、実験的なパッチを当てたカーネルの入手性を容易にするという点で、注目すべき存在といえるだろう。

間もなく量産開始となる「DAC 01」を使い、I2SでFLAC 352.8kHz/24bit(最大384kHz/32bit)を再生しているところ。これもパッチのおかげだ

実は、ここしばらく検証を重ねていたテーマがある。ズバリ、「HDMI経由でのハイレゾ・マルチチャンネル再生」だ。ラズパイ・オーディオはディスプレイを接続しないヘッドレス運用が常道、HDMIは長らく“押し入れの中”にあったが、ようやく日の当たる場所へ出せそうだ。

Raspberry PiのHDMI端子(写真は「CASE 01」の最終試作品)。これまで利用する機会はなかったが……

ふつうは48/16になってしまうHDMIで192/24、5.1chを実現する方法

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