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サウンドと機能性をさらに強化

マランツ「NR1608」レビュー。さらに高まった「リビングのメディアセンター」の実力とは?

2017/06/26 大橋伸太郎
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■鮮明な定位と十分なFレンジで快感に浸れるステレオ再生

次に、ステレオ音楽ソフトの再生をチェックした。組み合わせたのは、アキュフェーズのSACDプレーヤー「DP-560」。アナログ入力からのSACDのピアノ曲では、奥行きと立体感豊かなステレオ音場で倍音の再現も十分だ。キップ・ハンラハンのニューヨークラテンはエレキベースの野卑で太い音圧から金属的な音の芯をつかみ出す手際が見事だ。

次にデジタル音楽ファイル再生に移ろう。ハイレゾ再生は、USB-A端子によるUSBメモリー再生と、DLNAによるネットワーク再生から可能。他にも、iPhoneやiPadの音源をストリーミング再生できるAirPlay、そしてBluetooth経由によるワイヤレス再生にも対応する。ネットワーク再生も、内蔵するWi-Fi経由で行える。HEOSも含めてこうした機能の充実は、リビングで家族がスマホやタブレット内の音楽ファイルを持ち寄って本機で再生するシーンをイメージすると正しい選択だ。

デザイン/機能の両面から、リビングへのマッチングが配慮されている


■HEOS搭載でさらに統合的に運用できるネットワーク再生

本機は新たにHEOS機能は、同グループのDENOブランドが手がけるワイヤレス/ネットワークオーディオ規格で、対応機器を連携させてのマルチルーム再生に対応するだけでなく、Spotifyなどの音楽ストリーミングやDLNAネットワーク再生を統合的に運用することも可能にする。結果として今回から、DLNAのネットワーク再生やUSBメモリー再生もHEOSの一機能として、HEOSアプリ(AVアンプ用アプリと連携する)から操作することができる。

NASに保存したノラ・ジョーンズ「I wish I could」(flac 96kHz/24bit)は鮮度があり、加えて定位が鮮明で出音の瞬間から快感に浸れる。楽器の分離、チェロの倍音成分の放つ艶、肉声のハスキーな地肌の解像感、声の近さ、Fレンジも十分なものを備えている。

スティーリー・ダンの大名盤「aja」(PCM 192kHz/24bi)では、タイトでのびやか、滲みのない表現が聴ける。陰影感はないが、ピアノのずっしりした量感、シンバルの硬質な響き、終盤のアルトサックスの激しい息づかいなど、多彩な楽器群の音色を散りばめたアレンジの同作。そのカレイドスコープのような音響を視聴室に花開かせた。



NR1608は、ホームシアターでの活用はもちろん、リビングで多様なソースを楽しみたいユーザーにとっても格好の製品だ。従来のマランツのAVアンプの音の質感とはやや異なるが、AVアンプに求められる映像/音響の動的表現にフォーカスした明るく躍動的、立体感豊かな音場で楽しませてくれる。イマーシブサウンドの再現力も、上位機の開発経験が活かされていて確かだ。本機は7chなのでオブジェクトオーディオは5.1.2再生に限定されるが、その範囲でイマーシブの効果に不足はない。ステレオ再生能力についても、上述のように優れた資質を備えている。

そして、HDMI入力はもちろんワイヤレスオーディオからハイレゾまで幅広いソースをカバーしていて、操作アプリも充実している。こうした機能性は、リビングにおいてファミリーで利用する際にも重宝するだろう。NR1608は、現代の家庭に求められる多彩な再生ニーズに応えた、多芸多才「使えるAVアンプ」といえよう。

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