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“特別な存在” サージェントの魅力も解説

『サージェント・ペパーズ』50周年記念盤は何がどう変わったのか? ハイレゾやBDなど全曲徹底解説

公開日 2017/05/26 00:00 大橋伸太郎
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■第二章 「50周年記念エディションの構成」

今回の『サージェント…』記念エディションは、日本ではSHM-CDシングル仕様、ダブルアルバム、輸入盤LP二枚組・DVD/BDを含む6枚組<スーパー・デラックス・ボックス・セット>まで、4種類の記念エディションが発売される。

今回は<スーパー・デラックス・ボックス・セット>のCD4枚とBD/DVDをすべて試聴・視聴した。価格は18,000円(税抜)

それぞれのエディションの詳細については公式サイトを見てほしい。今回は<スーパー・デラックス・ボックス・セット>のプルーフ(発売前試聴盤)全てを聴いた。

LP二枚組を除く今回全ての仕様に共通する中核となる存在が、ジャイルズ・マーティン、サム・オケルによる2017年版全曲ステレオミックスだ。モノミックスは<スーパー・デラックス・ボックス・セット>のCD4にのみ収録される。それでは、最新の2017年版ステレオミックスを1987年のステレオミックスCDと比較して聴いてみよう。

全曲を聴いた印象は、旧盤は高域寄りのバランスでやや煩い。ノイズでやや音が曇り量感も損なわれている。ステレオの分離を重視したLPステレオミックスに準拠し、楽器定位が不自然だ。それが新盤は帯域ことにローエンドの拡大が目覚ましく、楽器定位がまともになった。

(1)「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」

旧盤はポールのヴォーカルが右寄り。コーラスはやや左から聴こえる。新盤はのっけから凄い音圧に驚かされる。ベースとドラムが地響きのようだ。ポールのボーカルがセンターへ修正。べースも一緒にセンターへ。シンバルが左。コーラスは水平に広がり、ギターは右に定位。そう、アルバムジャケットの四人の並び通りに変わった!

(2)「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」

旧盤のリンゴのヴォーカルはセンターから。コーラスは均等に広がるがバランス上やや左。シンバルが右から聴こえる。新盤もヴォーカルはセンター、ドラムもセンターで位置が揃った。ベースはやや右に定位しコーラスがきれいに水平に広がる。ポールのベースの硬質な響きが快感。

(3)「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ」

イントロのオルガンは左から。ドラムの打撃も左だ。ジョンのリードヴォーカルはセンター。ポールのベース、コーラスもセンターに定位。新盤でもこの定位自体は変わらない。イントロは左、ジョンのヴォーカル、ベース、シンバルもセンター定位。八拍子のスリーパート目へリズムが変わる予告のスネアもセンター。地響きのようなべース。センターにエネルギーが集まって見事にヘビーロック。

(4)「ゲッティング・ベター」

ギターリフとドラムスは左。ポールのヴォーカルはセンター。コーラスはそれを支えるようにセンターバック。手拍子は右、タンブーラは左から。ベースはセンターで旧ステレオミックスにしては珍しくポールの歌と重なっている。

新盤のイントロはギターが左右で掛け合い。べースがやや右に、シンバル左。ポールのヴォーカルはセンターでコーラスも水平均等。「ベター、ベター、ベーター」は左右から重なるようにハモる。

(5)「フィクシング・ア・ホール」

旧盤のイントロのチェレスタは左。シンバルも左。だから全体にウェイトが左。ポールのヴォーカルはセンター。それに応えるギターのオブリガートが右。ただしベースは左なのでポールの歌と一致しない。ヴォーカルは高々と定位しきれい。ジョージのギターソロは右。

新盤ではイントロのチェレスタを左右に振り分けている。唸るベースのローエンドが伸びて鮮明に。ヴォーカルはセンター。ギターソロもセンター。金属的響きが生々しく生まれ変わった。

(6)「シーズ・リーヴィング・ホーム」

旧盤のイントロのハープは右。ヴォーカルはセンターから。チェロが左。バイオリン、ビオラ加わると水平方向に豊かに広がる。通常のカルテットと逆配置だ。コーラスは水平に奥まって広がる。

新盤でもハープは右。ボーカルセンター、チェロ左は変わらない。低弦の響きが鮮明になりストリングスの解像度が大幅にアップ。楽器の個々の音色と質感が鮮明になった。終盤のコーラスの広がり感が増し、リードヴォーカルを甘く切なく包み込む。

(7)「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」

4月のポール日本公演で披露された曲。旧盤のジョンのヴォーカルは終始右から。ドラムはセンター、ジンタを模したシンバルがセンター。ベースもセンターやや左。コーラス中間部のサーカスの情景を描写した音楽は均等に広がる。

新盤は、旧盤以上に音をセンターに集めた印象。ドラムが切れを増し重量感あるベースとセンターから迫る。シンバルはやや左。中間部のサーカス音楽が奥行きを増す。終盤音場が奥行き方向へ深まり(引っ込み)過度なステレオ感は自重。

次ページ「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」までを一気に聴く!

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