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【特別企画】USB-DAC接続も対応のオーディオNAS

fidataの最上位オーディオサーバー「HFAS1-X」を聴く − 従来モデルと徹底比較

公開日 2016/12/06 10:20 山之内 正
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ネットワーク再生では、余韻や楽器の音色の再現においてXS20が一歩出た

上位機種XS20の再生音を、現行モデルのH40、S10と比べながら聴いていくことにしよう。fidataの現行機種2製品はドライブ以外の基本的な回路と筐体は共通なので、H40とS10の音の違いはドライブに由来するものということになる。

ちなみに筆者はH40を自宅試聴室で使っているが、購入時にS10との比較試聴を行ったうえで、最終的にH40に決めた経緯がある。そのときに聴き取ることのできた音の違いは、遠近感など空間表現ではS10が優位に立つ半面、低域の量感や瞬発力ではH40に良さがあるという具合で、製品ごとに個性が異なるという印象を受けた。そうした音の違いを考慮しつつ、容量に余裕のあるH40を選んだのである。

ネットワークプレーヤーにはスフォルツァートの最新モデル「DSP-02」、スピーカーシステムには「TAD-ME1」を用意して、まずはNASとしての3製品のパフォーマンスを検証した。


音元出版の試聴室に設置したHFAS1-XS20
弦楽四重奏とピアノで演奏したモーツァルトのピアノ協奏曲を聴くと、音色やディテールの表現力を左右する基本的な情報量については、3機種の間に大きな違いはなく、いずれの製品も解像感、音色の描き分けどちらも高い水準を確保していることがわかる。

一方、音場の見通しの良さや余韻が広がる空間の大きさについては、わずかだがSSDモデルの方が有利という印象だ。ショスタコーヴィチの交響曲第15番のDSD音源で聴き比べると、オーケストラのなかでの各楽器の位置関係や奥行方向の遠近感に違いを聴き取ることができる。低弦がスピードの乗った音を出したとき、その余韻が一番遠くまで届くのはXS20で、S10とH40がそれに続く。

ジャズのライヴ音源(ジャズ・アット・ザ・ポーンショップ)ではそこまで違いは大きくないものの、全体的な臨場感ではXS20のリアリティが一歩踏み込んでいるように感じた。発音の瞬間のエネルギーの違いによるのか、XS20がヴィブラフォンの音の特徴を最も正確に再現していたことに注目したい。


ネットワーク再生については、スフォルツァートの最新ネットワークプレーヤー「DSP-02」を組み合わせて試聴を行った
ウェーバーのクラリネット協奏曲では、独奏楽器の音像をどこまで立体的に再現できるか、にじまずにクリアなティンパニの低音を引き出せるかという2点に注目して聴き比べた。クラリネットのイメージを3次元で表現するのは3機種共通だが、楽器の周囲に広がる柔らかい余韻まで意識してさらに詳しく比べてみると、ここでもXS20が精度高く立体感を引き出しているように感じられた。その差は大きなものではないが、一度気づくと確実な違いとして聴こえてくる。ティンパニの締り具合はXS20、H40、S10という順で、XS20とH40の間の差の方が、H40とS10の違いよりも大きく感じた。

USB-DAC接続では、XS20におけるアタックのエネルギー感やスピードが際立つ

次にアキュフェーズのDC-950をつなぎ、USB接続の音を聴き比べた。前述のモーツァルトは非常にS/Nの優れた録音で、空間の透明感に特徴がある。そこに注目して聴き比べたときの音の違いは、ネットワーク再生よりも拡大した印象で、3機種のなかではXS20の澄んだ音場再現と奥行きの深さに魅力を感じた。

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