山之内 正が現場レポート

ベルリンフィル デジタルコンサートホール制作現場は7年でどう進化した?パナソニックとの協業でどう変わる?

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山之内 正

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2016年09月21日
パナソニックとベルリンフィルの協業が合意したことを受けて(関連ニュース)、9月2日、ベルリンにあるフィルハーモニーで今後の予定などについての説明会が行われた。そして、その後でホール内のスタジオなど、デジタルコンサートホール(DCH)の製作現場を見学する機会があった。私はDCHが開始した直後の2009年に、当時の制作現場を取材したのだが、約7年間で制作を取り巻く環境は大きく様変わりしていた。

本稿では2009年と2012年のレポートを参照しつつ、今回の取材で得た最新情報を紹介することにしよう。

ベルリンフィルハーモニーホールにうかがい、DCHの舞台裏を取材した
[2009年取材]「デジタルコンサートホール」のリアルタイム配信を支えるシステム群を覗く
[2009年取材]運営者が語る「デジタルコンサートホール」− ライブ感を届けるDCHの魅力と今後の展開


開始以来規模を大幅に拡大したデジタルコンサートホール

DCHの製作現場を見学するのは7年ぶりだ。最初に取材した2009年に比べると、年間のライヴ中継の数が増え、製作チームも強化されるなど、規模が大幅に拡大していることにまずは注目したい。当初は年間約30回のコンサートを3チームのローテーションでこなしていたのに対し、現在は約50回の演奏会を6チームで担当しているというから、中継・収録の数の増加に対応するため、人数が倍増したことになる。

そこまで規模が拡大したのは、フィルハーモニーで行われるベルリンフィル以外のオーケストラのコンサートをライヴで中継するなど、DCHがカバーする演奏会が増えているためだ。たとえば今年の9月には『ムジークフェスト・ベルリン』の中継が新たに加わった。今年はネルソンス指揮ベルリンフィルのほか、イヴァン・フィッシャー指揮コンツェルトハウス管、ハーディング指揮バイエルン放送響、ゲルギエフ指揮ミュンヘンフィル、ドゥダメル指揮シモン・ボリバル管、ペトレンコ指揮バイエルン国立管など豪華な布陣で、なかでもペトレンコの指揮は、次期首席指揮者の就任が決まってから初めてのベルリンでの演奏会とあって、大きな注目を集めている。

毎年9月に開催される「ムジークフェスト・ベルリン」。今年はDCHで中継された。次期首席指揮者に就任が決まったペトレンコなど、豪華な顔ぶれが集結した

同音楽祭はIFAとほぼ同じ時期に毎年開催されており、著名なオーケストラやソリストが聴き応えのある演奏を連日繰り広げる。意欲的なプログラムが多く、この機会を逃すと二度と聴けないような作品も含まれる。筆者は時間の許す限り出かけているが、チケットが入手できなかったり、予定が重なってしまうこともある。これまではそこであきらめるしかなかったが、今年はDCHのライヴやアーカイヴで聴けるようにになり、環境が一変。その気になればホテルの部屋で楽しむことさえできてしまう。

聴きに行けなかったコンサートなどもDCHで楽しむことができるのは大きなメリットだ


DCHの取材に出かけた日はちょうど同音楽祭の開幕日に当たり、フィルハーモニーではハーディング指揮バイエルン放送響によるウォルフガング・リーム《トゥトゥグリ》のリハーサルが行われていた。ステージ上に並ぶ楽器の数は半端ではなく、特に主役を担う打楽器の数の多さに目を奪われる。

取材を行ったのは9月2日。リーム作曲《トゥトゥグリ》は大編成で、ステージ上にところ狭しと椅子や楽器が置かれていた

ホールの音響の良さに感心していたら、クリエイティブ・プロデューサーのクリストフ・フランケ氏がステージ近くの客席で手を叩き、開放的でクリアな残響に特徴があることを説明してくれた。また、空席時と満席時の残響時間の差が少なくなるように当初から工夫されていることにも、フィルハーモニーの設計の巧みさが感じられるという。それは筆者が同ホールでこれまで体験した響きの印象ともピタリと一致している。録音と実演の両方で優れた音響が得られるのはそこにも理由がありそうだ。

クリエイティブ・プロデューサーのクリストフ・フランケ氏(右)

7年前の取材時と変わった点とは?収録の舞台裏を覗く

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