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アトモス/DTS:X対応の第二世代モデル

【レビュー】デノン「AVR-X2300W」を聴く。クラスを超えた実力のハイコスパAVアンプ

公開日 2016/09/12 12:41 岩井 喬
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続いてマルチチャンネル環境のチェックでは、『スカイ・クロラ』からチャプター15・空戦シーンを視聴する。“スカイウォーカーランチ”でのサウンドメイクを行っていることもあり、SEの緻密さや空間性の高さが秀逸な一作だが、特にこの空戦シーンにおけるシームレスで立体的な音場感はDTS-HD Master Audio 6.1chフォーマットを生かしきっている。

本機の自動音場補正の画面。アトモスは5.1.2に対応。トップスピーカーの柔軟なアサインが可能であることも特徴だ

飛行機は実体感が高くスムーズに動き、質感は滑らかで密度も十分だ。エンジン音は軽いものの粘り良い。銃撃音は歯切れ良く、BGMのストリングスは厚みと分解能が高く、すっきりと空間へ馴染む。セリフの肉付き感も良く、澄んだクリアな際立ちだ。ローエンドの押し出しもたっぷりで音像のキレ良い浮き立ちとの対比が素晴らしい。

今回のリニューアルで効果の高さが際立ってくる、空間性の表現を評価する上で最適な『エクスペンダブルズ2』からは、チャプター9・市街地での戦闘シーンをチェックする。DTS-HD Master Audio 7.1chというフォーマットの効果もあるのだが、ジュークBOXから流れるBGMの自然な浮遊感がAVR-X1300Wよりもスムーズに感じられる。上方向への浮き上がり感もより高く、微細音の再現性も見事だ。

セリフは厚みを確保しつつ、輪郭感も明確で切れ味も良い。銃撃音は各々を細やかに描き分けながら、音の厚み感もより良く表現する。弾筋も鮮明で、ショーウインドウのガラスが手前側へ割れて倒れ込んでくる様も空間性高くリアルに描き出す。空間性のシームレスさは、ミドルクラス機としてはかなりの実力を持っているようだ。

ドルビーアトモス再生では、従来機からの音質的な飛躍を改めて確認することができた

そしてドルビーTrue HD・アトモス仕様『エクスペンダブルズ3』では、冒頭の装甲列車襲撃シーンをチェック。アトモス方式ならではの空間の密度感を上下に引き延ばす効果が明確に現れており、どっしりと深く響く低域が壁のように迫りくる。BGMの重厚さも増しており、高域方向の切れ味高く煌めき良いタッチを含め、全体のリッチさが際立つ。銃撃音のきめ細やかさ、移動感もよりリアルに実体を感じ取れる。

列車内で聴こえるヘリのホバリング音も、上方向から的確かつ自然に聴こえ、空間表現力の高さを実感。音場の密度と定位フォーカスのキレ、鮮やかな音像の浮き立ち、そしてスムーズな移動表現を高次元でバランス良くまとめあげ、ナチュラルな空間性と豪勢な鳴りっぷりの良さを両立した、グレードの高いサウンドだ。



AVR-X1300Wもオブジェクトオーディオ時代にふさわしい、非常に完成度の高いハイコスパモデルだと感じたが、このAVR-X2300Wは軽くその上を行く空間表現力と密度感、シャープな音像の鮮明な描写力を兼ね備えている。その完成度の高さは、デノンAVアンプの新時代を切り拓くけん引役としてふさわしい内容だと言える。ミドルクラス機というポジションを感じさせない極上のサウンドクオリティをぜひとも味わっていただきたい。

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