HOME > レビュー > AKG「N40」を3人の批評家がレビュー。“3つのAKG史上初”イヤホンの実力を徹底解剖

待望の中級ハイブリッドイヤホン

AKG「N40」を3人の批評家がレビュー。“3つのAKG史上初”イヤホンの実力を徹底解剖

公開日 2016/07/29 10:00 岩井 喬/野村ケンジ/山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

野村ケンジがレビュー

K3003を超える部分も持ち合わせた、イマドキの優秀イヤホン

いまや数多のブランドから様々な製品が登場している10万円越え、超ハイエンドというイヤホンのカテゴリーを、AKGのフラグシップモデル「K3003」が作り上げたのは周知の事実。同時に、BA型とダイナミック型という異なる形式のドライバーを組み合わせた“ハイブリッドドライバー構成"というものを高級イヤホンのひとつのスタイルとして確立したことも、「K3003」がもたらしてくれた大いなる功績であるのは確かだ。

しかしながら、残念なことに「K3003」は誰もが手軽に購入できる価格帯の製品ではなく、「せめて半額くらいの姉妹モデルがあればなぁ」と多くの人がいちどは考えたことだろう。そんな、多くのイヤホンユーザーにとって希望の具現化ともいえる待望の製品が、この「N40」なのだ。


「K3003」と同じハイブリッドドライバー構成、とはいっても、肝心のサウンドが受け継がれていなければ全くもって意味がない。デザイン的にも「K3003」とは大きく異なり、近年のAKGがこだわっている装着感&軽快さを重視したミニマム筐体を採用しているため、最初目にしたときは多少心配したのだが、そんな不安は一聴してすぐに吹き飛んだ。ダイレクト感の高いクリアな、そしてとてつもなくダイナミックな抑揚表現を持つ、上質なサウンドを持ち合わせていたのだ。キレが良く、それで細かいニュアンスまでしっかりと拾い上げてくれるあたりは、まさに「K3003」譲り。まるで開放型ヘッドホンのような音場の広さなどはさすがに持ち合わせていないものの、そのDNAはしっかりと受け継がれている印象だ。

そればかりか、数年間も後発なだけに、進化が感じられるところも多々あった。まず最初に気がついたのは音色の自然さだ。ハイブリッド構成であることは、メリットも多々あるいっぽうで、デメリットも存在する。たとえば音色が個性的な印象になってしまうことがある(製品によってはBAとダイナミックがばらばらに鳴っているように聴こえてしまうものもある)のだが、「N40」のサウンドはとてもナチュラルで、ハイブリッド構成ならではの表現力の高さを持ち合わせつつも、ニュートラルな音色に纏め上げられている。このあたりは、「K3003」にもない絶妙さといえる。

ハウジングに2つの孔を設けて空気をコントロールするベンチレーション・システムを採用

そのおかげで、男性ヴォーカルも女性ヴォーカルもナチュラルな、それでいて熱気のこもったエネルギッシュな歌声を楽しむことができる。いっぽうで、弦楽器も得意な印象だ。ボウイングの細かい揺れまでしっかりと拾い上げてくれるので、とてもリアルな演奏に聴こえるし、なによりも響きの心地よさがたまらない。鮮明で心地よい、絶妙なバランスのサウンドを楽しませてくれるのだ。

ただし、こういった音色がAKGらしくない、という人もいることだろう。そんなひとにはメカニカル・チューニング・フィルターを「REFERENCE」から「HIGH BOOST」へ交換することをお勧めしたい。「K3003」譲りのフィルター交換だが、「N40」ではあくまでも3タイプのサウンドキャラクターが用意されているといったイメージ。ニュートラルな音色傾向を持つイマドキの音色の「REFERENCE」に対して、「HIGH BOOST」はこれまでのAKGらしい聴かせ方、キレの良いフレッシュな音色を持ち合わせている。AKGファンのなかには、こちらの方がしっくりくるという人もいることだろう。

3つのフィルターの違い。HIGH BOOSTから順に1層・2層とフィルターの網目が濃くなっている

AKG初の耳かけ型ケーブルレイアウトやMMCXコネクタ採用の着脱式ケーブル、そしてコンパクトな筐体と最新のサウンド。「K3003」の姉妹モデルとしての位置づけだけでなく、ひとつの製品として様々な魅力を持ち合わせた優秀なモデルだ。


次ページ続いて山之内 正がレビュー

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: