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ハイエンドモデルに負けない贅沢仕様

iBasso Audio「DX80」レビュー。4万円台で高音質・多機能を両立したハイコスパDAP

公開日 2016/06/15 10:00 折原一也
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■緻密さとモニタ系の正確さを備えたクラスを超えた高音質

それでは音質レビューを始めよう。まずはSHUREのモニターヘッドホン「SRH440」で宇多田ヒカルの『花束を君に』を聴いてみると、その音情報の豊富さと緻密さを確かに引き出すサウンドがよく聴き取れる。特に歌声の気持ち良くシャープな声の立ち上がりと共に、ピアノの音の緻密さ、オーケストラの演奏という空間スケールを解像感志向のサウンドで引き出す。

藍井エイルの『IGNITE』を聴いても、突き上げる女性ボーカルの声を余裕の解像力で自然に鳴らし切り、音数豊富な曲への対応力も抜群に良い。エネルギー感を出しつつ制動の効いたチューニングで、モニターヘッドホンとの相性も抜群だ。

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック』の『Main Title and The Attack on the Jakku Village』を聴くと、トランペットの躍動感あるサウンドもニュアンス豊かで、弦楽器の奏者の位置感まで把握できるほどである。特に曲後半、ジャクーの戦いパートに入るまでの音の起伏を鳴らし切るレンジ感と、音の刻みの鋭さも秀逸だ。

DSD音源ではDSD5.6MHz版の『Jazz at the Pawnshop』より『High Life』を聴くと、サックスの音が鳴る空間、その音の粒立ちの良さ、奏者の姿が目の前に迫るような音の刻みの鋭さに圧倒される。

なお、DX80には音質関連のカスタマイズとして「high/low」2段階のゲイン(初期値はhighだが試聴の際にはlowに変更している)を備えるほか、Digital Filterの設定として「Slow Roll-off/Sharp Roll-off」(初期値は後者で、今回は後者で試聴)を切り替えられる。より緻密で音場志向を目指すなら「Slow Roll-off」だが、音情報の生々しさと情報量を求めるなら「Sharp Roll-off」を推奨する。

「high/low」2段階のゲイン設定

Digital Filter設定も備える

■イヤホンはもちろんハイエンドヘッドホンも駆動

プレーヤーとしてのサウンドキャラクターが精緻なモニター系は、特に高域までレンジの広い曲が得意で、音数豊富な音も余裕で緻密なサウンドとして引き出すため、イヤホンを変えても音源とイヤホンの相性を良く引き出してくれる。

イヤホンをオーディオテクニカの「ATH-CKR10」に変えると、ハイレゾの高域再生をテーマにした鋭く突き刺さるサウンドキャラクターを、持ち前の緻密な情報量と高域まで丁寧な音再現で鳴らし切る。特にプレーヤーによっては雑な音になりがちな『IGNITE』のボーカルとバンド演奏を、音情報を引き出し正しくならし切った再現力には感心した。

最大出力も260mW+260mW(32Ω)と大きく、OPPOのヘッドホン「PM-3」もゲインを「Low」のままで駆動でき、どこまでも緻密な情報と音場感たっぷりに鳴らす。特に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック』では音の繋がりとオーケストラの空気感の再現が抜群に良く、映画音楽らしいダイナミズムと共に、オーディオ的な情緒感も豊かなサウンドとなった。

■PCとUSB接続、光/同軸対応の「SPDIF」とインターフェースも豊富

もう一つ、DX80のデジタルオーディオプレーヤーとして面白いところは、周辺機器としての接続の豊富さだ。

DX80の本体をぐるりと見ると、本体下面の通常のヘッドフォン出力の隣には3.5mmステレオミニによる「LINE OUT」、本体上面には3.5mm光/同軸コンボの「SPDIF」、そしてmicro USBによるPC接続ではUSB DACとしての機能までも備えている。



今回実際に試したのはmicro USBによるPC接続で、PC接続時には「READER」「DAC」「CHAGE ONLY」を切り替えて使用できる。Windows環境ではiBasso本社のサイトからドライバーをダウンロードすると、PCからUSBオーディオデバイスとして認識し、「foobar2000」などの再生ソフトからハイレゾ音源の出力に使用することもできた。

サウンドはポータブルプレーヤーとして試聴したものと同じ曲を一通り聴いてみたが、再生元のPCの影響を受けることもあり、DX80単体の再生で聴いたサウンドとはひと味違うが、高域までエネルギッシュでレンジ感のあるサウンドを継承している。ふだんはDX80をPCと接続してUSB DAC/ヘッドホンアンプとして使いつつ、外出時にはDAPとして使い倒すスタイルも可能だろう。

DX80を一通り使ってみて気付くのは、この音質、このスペックで実売価格49,800円というコスパの素晴らしさである。特に音質面では、独立クロック内蔵による音情報を緻密さと情報量たっぷりに引き出すモニター系の素性の良さ、そして左右モノラルDACによる優れたセパレーションと音場表現から引き出されるピュアな音性能をみても、明らかに上のクラスに比肩する水準にある。それでいてPCとのUSB-DAC接続、光/同軸デジタル端子でポタアンともつなげられる接続性の良さも持ち合わせている。

5万円クラスで音質と共に接続性を兼ね備えたポータブルオーディオプレーヤーを探す人なら、一度は音質と使用感を体験してみてほしいモデルだ。

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