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【特別企画】評論家・大橋伸太郎が製品の魅力に迫る

立体音響の裾野を拡げる中堅AVアンプの実力機 − オンキヨー「TX-RZ810」をVGP審査員が実力チェック

公開日 2016/05/27 10:30 大橋伸太郎
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まず音楽ソフトの試聴では、ニューヨークラテン(SACD)と、ソプラノアリア集(96kHz/24bit)を再生したが、前者はエレキベースの野太く強靭な響きを余裕綽々で解き放つ。後者は太く強靭な女声の絶叫でも、些かも歪みが看取されない。ノイズフロアが低く、雑音が皆無で動的なS/Nも優れており、VLSCの貢献の大きさを感じさせる。

映画では、ブルーレイ『エクソダス:神と王』を再生。従来モデルに比べ、スピード感で躍進を示し、立ち上がりと収束、解像力に優れ、ダンピングファクターとトランジェントの改善が如実だ。

もちろんオンキヨーらしい広々した空間表現も健在。ドロドロとした演出がなく、音の動きの描写が俊敏で軽快、しかも量感が豊かで鮮度が高い。風音などSEの情報量も豊かで、スピード感とあいまって音場表現がビビッドで感度も高い。中でも感心したのはセンターチャンネルの充実。分解能が高く量感と、声の地肌のニュアンスの表出が共存している。

一方、ドルビーアトモスは、ドルビーのデモディスクを再生したが、移動表現のスピードが早く、軌跡の動線が引き締まって切れ味が鋭い。ノイズフロアも低く、空間は広々と視界が開け、オブジェクトがくっきり鮮鋭に描き出された。

そして注目の「Accureflex」。オフの状態では、リスナーを中心に正円を描いて移動する鳥の羽音が、前方右で行き止まって奥へと進まないが、オンにすると、美しい正円を描いて右後方から前方右、センター奥(スピーカー背後)、前方左へと滑らかに移動する。細かいSEが引き締まり、くっきり繊細な存在感と正確な定位で音場に現れ、表現のきめ細かさや繊細さが明らかに向上する。ドルビーアトモスの再生において、他社製品に差を付ける大きなアドバンテージといえよう。



【3Dサラウンドの魅力を手軽に楽しむ新機能に注目】
VGP審査員/分科会座長 鴻池賢三


VGP 審査員/分科会座長 鴻池賢三氏
一聴してわかるほどの鮮明な効果を実現!

本機を語る上で外せないのが、新たに搭載された「AccuReflex」だ。本機能はイネーブルドスピーカーを最適に鳴らすために開発された機能で、3Dサラウンドの裾野を拡げてくれる画期的なものだ。

具体的には、イネーブルドスピーカーから放たれた音の成分のうち、指向性の高い高域音と、指向性の低い低域音が、時間差でリスナーに届くことによって感じる違和感を改善し、イネーブルドスピーカーの再現性を高めてくれるものであるが、実際に聴くとその効果は明らかだ。

従来、イネーブルドスピーカーを利用した環境では、高さ方向の表現が曖昧になりがちで、定位も不明瞭なことが多かったが、天井スピーカーを設置するのに比べ、設置性が圧倒的に簡便な分、音場がやや犠牲になるのは致し方なしと諦めていた。

しかしこの「AccuReflex」はそんな不満を一蹴する位の鮮明な効果を実現しており、その違いは一聴してわかるほど。機能のオン/オフを切り替えて聴き比べると、鳥の鳴き声など、頭上に定位する効果音は、機能オフの状態では耳の高さ程度で聴こえていたが、機能をオンにすると耳と天井の間くらいまで引き上がって定位し、移動感もより鮮明になる。頭上方向の空気感が一気に密度を増し、音に包み込まれる感覚が格段に向上するので、イネーブルドスピーカーでも十分に3Dサラウンドの効果を味わうことが可能だ。読者諸氏にもぜひ体感してほしい魅力的な機能だ。


オンキヨーは、天井スピーカーを設置することなく3Dサラウンドを楽しめるイネーブルドスピーカーも充実。音質にこだわった「D-309H(B)」(左:¥64,800 税抜/ペア)とコストパフォーマンスに優れた「SKH-410(B)」(右:予想実売価格¥20,000前後/ペア)の2モデルをラインアップする
※本記事は雑誌『AVレビュー』Vol.256(2016年7月号)に掲載された記事のウェブ版です。

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