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ヘッドホン祭『analog × TopWing』ブースで披露

M2TECH「JOPLIN MK2」を高橋健太郎が聴く。 “20世紀のレコード”を体験するためのフォノADC

2016/04/25 高橋健太郎
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JOPLIN MKIIを単体で使ってみる

外観自体はシンプルでスタイリッシュ。電源を落としていると、筐体が共通するYOUNG DSDなどとほとんど見分けがつかないのが、JOPLIN MKIIだ。電源は付属の15Vのアダプター。入力は2系統。レコード・プレイヤーからの入力を受けるアナログのRCAと、もう一系統はデジタルのCOAXIAL(S/PDIF)だ。出力はUSB、COAXIAL(S/PDIF)、AES/EBU、OPTICALとなる。使い方はPCとのUSB接続を使うか使わないかで異なってくる。

今回はまずは、PCを使わず単体のオーディオ機器として使う場合から試してみた。JOPLIN MKIIはデジタル出力しか持たないから、単体のオーディオ機器として使う場合には、DAコンバーターと組み合わせて使うことになる。組み合わせたのはYOUNG DSD。YOUNG DSDにCOAXIALで入力し、YOUNG DSDのボリュームは最大にして、DAコンバーターとしてのみ使い、我が家のリビングのオーディオセットに接続してみた。


今回、アナログプレーヤーは高橋健太郎氏が愛用するリンのSONDEK LP12で行っている
現在のリビングのオーディオセットはプリアンプにARのLimited2、パワードスピーカーにATC SCM100ASLというのが基本だ。アナログレコードを聴く時には、レコードプレーヤーにLINN SONDEK LP12、カートリッジにLINN ADIKT、フォノイコライザーにJOLIDA JD9を使っている。JOLIDA JD9は米国製の真空管を使ったフォノイコライザーだ。

このJD9のかわりに、JOPLIN MKIIとYOUNG DSDを使う形で、アナログプレーヤーとプリアンプの間にセットアップ。YOUNG DSDとプリアンプの間はキャノン接続で、YOUNG DSDの出力レベルは10Vを選択した。電源を入れてみると、JOPLIN MKIIのサンプリングレートの表示が192kHzになっているのに気づく。JOPLIN MKIIのサンプリングレートは最大384kHzだが、COAXIAL接続やAES/EBU接続ではその規格上、上限は192kHzにとどまるため、JOPLIN MKIIは自動的に192kHzに切り替わるようだ。

レコードプレーヤーにJOPLIN MKII とYOUNG DSDをセットした状態

さて、まずは聴き慣れたLPを聴いてみることにした。普段のフォノイコライザーは完全なアナログ機器だが、現在はアナログのフォノ入力をJOPLIN MKIIとで一度AD変換し、デジタル領域でイコライザー処理してから24bit/192kHzで出力。これをYOUNG DSDでDA変換して、プリアンプにアナログ出力する形になっている。何だか複雑そうだが、一度、接続してまえば、使い勝手はアナログのフォノイコライザーと大きくは変わらない。設定が必要なのはカートリッジのインピーダンス。設定はMM型用が3種類、MC型用が5種類ある。LINNのADIKTは47KΩのMM型カートリッジなので、インピーダンス設定は47KΩに。JOPLIN MKIIの設定はこれだけで終了だ。YOUNG DSDの入力選択でRCA(デジタルのCOAXIALがそう表示される)を選び、ボリュームを0dbまで上げると、簡単に音が出た。

長年、愛聴しているジェームス・テイラーの『One Man Dog』を聴いてみると、ふわっと陽が差し込むような明るさが感じられるサウンドだ。過去にYOUNG DSDを試用した時にも同じような印象を得ていたので、これはM2TECHのサウンドカラーと言ってもいいものだろう。


ジェームス・テイラー『One Man Dog』
アナログレコードの音を一度、デジタル化している訳だが、聴き慣れた『One Man Dog』の再生もごく自然に受け入れられる。ブラインドでこのサウンドを聴いて、デジタルを通っている、と指摘できる人はまずいないだろう。試しにJOPLIN MKIIとの設定でレゾリューションを44.1kHzに下げてみると、なるほど、全体がカッチリして、CDのサウンドに少し近づいたように感じられる。192kHzは滑らかだが、ハードな音圧感が欲しいレコードなどでは、あえて48kHzや88.2kHzあたりを選んでみるという選択もありそうに思われた。

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