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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第151回】5千円以下でイイ感じなイヤホンがまた登場!「Auglamour R8」を聴く

公開日 2016/04/01 10:30 高橋 敦
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■いよいよ音質レビュー! 違和感がない“好ましいかまぼこ型”

ではその音を聴いての印象。

これは…違和感がない!「低音強化型」でも「モニターライク」でも「リッチなハイエンドサウンド」でもない、ごく普通のイヤホンの音として違和感がない!

例えばよくある周波数グラフを脳内に想像してみてほしい。低音を太く感じさせる盛り上がりも、中域をすっきりさせるカットも、高域の超高域までの伸びも、どれもない。では全帯域フラット、平坦なのかというと、それより「低域も高域もきれいになだらかに落ちている」と表現した方が適当な感触と言える。

このイヤホンの周波数グラフの「イメージ」はそんな感じだ。オーディオアイテムの周波数特性を表現する際に「かまぼこ型」がよい意味で用いられる場合の典型と言えるだろう。好ましいかまぼこ型なのだ。

この「ごく普通のイヤホンの音として違和感がない」「好ましいかまぼこ型」というのは、サウンドの個性を重んじるならば弱みになるかもしれない。しかし付属イヤホンや1.000円や2,000円のイヤホンからステップアップしたユーザーが「…いい音なのかもしれないけど、何か自分には合わないかも…」みたいになる危険性は少ない。まだ音の好みの自覚がはっきりしていないエントリーユーザーにとってハズレになる可能性を下げられる。

でも、とはいえかまぼこ型なんでしょ? 低域も高域も伸びてないんでしょ? と言われればそれは価格なりなのだが、一般的な楽器のおいしい部分はカバーしており、それプラスαの部分も、薄れはすれども、なくなりはしていない。少し感触が変わる場合もあるが、「これはこれでよいかも」とも思える方向性と範疇の変化に収まっている。

例えばQ-MHz feat. 小松未可子さん「ふれてよ」で見ていこう。

歌の下に潜り込んで曲の土台を構築するベースのその沈み込みっぷり、冒頭のアコギとパーカッションのボディの響きの深みなど、低域から超低域の存在感はやはり薄れる。しかしベースの重心が上に大きくずれて歌と重なってしまうようなことはないし、それでいて、その音色をほどよくウォームに表現することで、曲全体のなじみは良くなっている。

曲冒頭、小松未可子さんのブレスのはっとさせるような鋭さは少し甘くなる。ギターの音色も、エレクトリックの歪みとクリーンの境界でのエッジのニュアンスも、アコースティックの明るさも、やはり表現が甘くなる。だが「甘くなる」という印象は上の価格帯のイヤホンと比べればの話だ。そこがほどよく甘くなることで、聴き疲れない耳当たりが生まれてもいる。そしてそういった要素も含めて、全体のバランスは常に良好なのだ。

「4,500円で販売できる製品」という制限の中で、どのような音作りにするのか。どこは諦めてどこで勝負するべきなのか。無理して周波数帯域を広くフラットに確保しようとはせず、かまぼこ型になるならば逆に強みになるようにしていけばいいじゃないか。このモデルはそういった狙いで音作りされたのかもしれない。そんな風に思える。

ということで、音としては前述のように、1,000円や2,000円のイヤホンからステップアップするユーザーも違和感なしの向上を得られる素直なタイプ。このサイトに目を通しているようなマニア層の方ご自身のメイン機としては物足りないかもしれないが、安い本体に高いケーブルを奢ってどこまでいけるかを試すのも楽しいかもしれない。また、マニアックではない友人におすすめする候補として頭に入れておくのもよいのではないか。

マニア以外に薦めるときの注意点としてはまあ、イヤモニ流の装着方法や装着感という部分が大きいだろう。そこはエントリーユーザーからは「何か面倒そう…」と思われるのか、それとも「何かかっこいい!」と思われるのか。どちらもあり得そうだが。

何にしても5,000円前後イヤホンの基準は、RHA「S500」がまず突出し、この「R8」もそれに食らいついたことで、水準がずいぶん上がってしまった。作る側、売る側の方々は大変とは思うが、使う側、買う側としては今後も楽しみだ。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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