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ドライブメカからUSB-DACまで刷新

デノンが示すハイレゾ時代のディスクプレーヤーの理想形。「DCD-SX11」レビュー

2015/12/02 山之内 正
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小社主催「オーディオ銘機賞 2016」にて、デノンのSACDプレーヤー「DCD-SX11」が“銀賞”を獲得した。審査会で高い評価を得た本機を、審査員を務める山之内 正がレビュー。ハイレゾ時代におけるディスクプレーヤーのあるべき姿を本機に見い出した。

DCD-SX11

ハイレゾ時代の到来でディスクプレーヤーに求められる性能と機能は各段に高まった

CDのライブラリをこれから先も良い音で楽しむためには、長く使い続けられる良質なディスクプレーヤーを手元に確保しておくことが肝心だ。もちろん最優先は高音質再生、そして耐久性や安定性も重要なポイントだが、いま買うならデータ再生への対応とその中身にも注目しておきたい。

パソコンをつなぐためのUSB入力は、最新のディスクプレーヤーにはほぼ搭載されるようになってきたが、対応ファイル形式はメーカーや世代で違いがある。また、CDとSACDに加えて、音楽ファイルを記録したデータディスクを再生できる製品となると、意外に選択肢は狭くなる。これからしばらくは複数の再生スタイルが併存するので、ディスクプレーヤーに求められる性能と機能は以前よりも格段に高まっているのだ。

デノンから登場した「DCD-SX11」は、そんな期待に真正面から応えるミドルレンジのディスクプレーヤーである。前作に相当する「DCD-SA11」の発売からすでに11年、その間に人気機種の「DCD-1650RE」やフラグシップの「DCD-SX1」など、ラインナップの主要モデルが次々に世代交代を経て進化を遂げ、30万円台後半のクラスにも最新モデルの登場を期待する声が強まっていた。DCD-SX11はそんななか登場した待望の製品と言っていい。ちなみにDCD-SA11に比べるとUSB入力も含めてリアパネルの入出力端子が大幅に増えていて、10年間の進化の大きさを物語っている。

DCD-SX11の背面部。USB端子や光/同軸デジタル端子などを搭載。デジタル入力は「DCD-SA11」から大きく進化した

新型ドライブメカの開発に伺えるデノンの覚悟

ディスクプレーヤーはモーターやピックアップなど可動部品を内蔵する、いまやほぼ唯一のオーディオ製品だが、それだけにメカニズムの完成度は厳しく問われる。DCD-SX11は、デノンが新たに開発したドライブを搭載しているが、性能へのこだわりは上級機譲り。異種金属を組み合わせたトップパネルや重量級のスチール製メカベースなど、振動対策に妥協はない。この新メカニズムは新たにデータディスクの再生にも対応しており、PCMに加えてDSDファイルの再生もサポートする(最大5.6MHz)。新メカニズムは、本機だけでなく今後の製品への採用も視野に入れているはずで、良質なディスクプレーヤーを作り続けていくために、あえて開発に踏み切ったのだろう。

新開発のオリジナル・ドライブメカ「Advanced S.V.H. Mechanism」の搭載などにより制振対策を徹底している

データ再生はUSB入力とUSBメモリの両方をカバーし、特にUSB-B入力は最大11.2MHzのDSD、PCM384kHzまで対応を広げて、現在入手できるほぼすべてのハイレゾ音源を再生できる。パソコンまたはUSBメモリーの音源をディスク並みに手軽に楽しめるだけでなく、もちろん音質への配慮も徹底しており、パソコンからのノイズを遮断するデジタルアイソレーターやUSB-DAC部の専用電源化など、万全を期した。さらに、ディスク再生時にビット拡張とオーバーサンプリングを行うAdvanced AL32 Processing Plusは、ハイレゾ音源に対しても効果が期待できる。

データ再生はUSB入力とUSBメモリの両方をカバー

分解能の高さを誇る一方で肉声感や柔らかさも引き出す

DCD-SX11はPMA-SX11とペアで使うことを想定して設計された製品だが、まずはアキュフェーズのプリメインアンプ「E-600」と組み合わせ、本機単体の音を聴く。スピーカーはエラックの「FS249BE」を使用した。

まずはDCD-SX11単体の音を試聴

ヤルヴィ指揮/NHK交響楽団の演奏で聴いたR.シュトラウスの『英雄の生涯』は、重心の低い安定した低音と、明るくキレの良い高音が鮮やかな対比を見せ、この演奏の特徴であるテクスチャーの豊かさを見事に引き出してくる。細部まで解像する分解能の高さは、まさに情報量に余裕のあるSACDならではのもの。DCD-SX11は、音数が多いR.シュトラウスの管弦楽曲をフォルテシモでも混濁なしに再現できるプレーヤーであることがわかる。

CD再生では、中高音に潤いと柔らかさをたたえたヴォーカルに耳を傾けたい。潤いと柔らかさは、どちらもディスクに本来刻まれている情報だが、その特徴が鮮やかに浮かび上がってきたのは、Advanced AL32 Processing Plusの効用だと思う。解像度志向の強いプレーヤーのなかには声の潤いを失いがちになる製品もあるが、本機はそれとは対極にあり、息遣いなど重要なディテールはキープしながら、肉声感やシルキーな柔らかさも確実に引き出す。声の美しさはSACDで聴いたアノニマス4のアカペラでも聴き取ることができ、CDとSACDどちらを聴いても音色が薄味にならないメリットを実感した。

次ページPMA-SX11との純正組みあわせで見せた進化/真価

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