チタンコート振動板を採用

【レビュー】エレコム初のハイレゾ対応ヘッドホン“EHP-R/OH1000”シリーズを聴く

高橋 敦

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2015年12月01日
チタンコート振動板を採用した“EHP-R/OH1000”シリーズ

“EHP-R/OH1000”シリーズ

“EHP-R/OH1000”シリーズの音質は、ベーシックな設計、ベーシックな技術を用い、音のチューニングを丁寧に行っている印象。独自技術を新規開発したり、特殊な素材を利用したりせずに音質を高めているというのだが、そのやり方だからこそ、価格を抑えつつ、この高音質を実現できているのではないかと推察する。

その中でもあえて少し特別な部分といえば「チタンコート振動板」だろうか。振動板のベース素材自体は一般的なPETで、PETボトルと同様の樹脂素材のようだが、それにチタンをコーティングすることで応答性や中高域の特性を高めているとのこと。

チタンコート振動板を採用

中低域の再生能力ということでポイントになる振動板口径は43mmと大きめに確保してあるので、大口径にしつつ剛性も維持し、正確な動作を実現するためのチタンコーティングということだろう。

また、ケーブルの導体素材は高純度無酸素銅に銀コーティングを施したものを採用している。極端な高純度銅や全体が純銀の導体となるとお値段が跳ね上がってしまうが、ここでもエレコムはコストパフォーマンスの高い素材選びを行った。結果、銅の素直な音調をベースに、銀らしいきらびやかなシャープさも加わっている。

さらにケーブルは、内部で左右それぞれの信号だけでなくグラウンドも左右が別の線に分離した4線構造。プラグは3極でケーブルは非着脱式なのでバランス駆動対応は無理だが、左右のセパレーションの改善、それによるステレオの空間表現の向上を得ている。

ケーブルとプラグ部

リモコン部

実際の音質だが、バランスを崩さない範疇でしっかりメリハリを効かせたサウンドだ。低音は緩まず、抜けのよい音色で、全体の空間性にも余裕がありすっきりとしている。解像感や空間性といった「ハイレゾらしさ」を、過剰演出にならない程度にわかりやすく引き出してくれる。ハイレゾ入門機として納得のチューニングだ。

たとえば相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」冒頭では、バスドラムの音の本体がタイトにドンッと抜けてきて、その周りに低音の空気感が響いていく様子が見えやすい。ハイハットシンバルもシュッとした抜けは確保しており、バスドラムとのコンビネーションでのリズムが際立つ。このあたりのほどよいきらびやかさは、導線の銀コーティングが効いているのかもしれない。

それに続いて入ってくるギターの定位やエフェクト処理による空間性の表現も秀逸だ。グラウンド分離の効果が大きいのだろうか、音色の透明感も問題なく、帯域の癖や歪みもない。

やくしまるえつこさんの声の感触もしっかりと表現される。嫌な刺さり方がなく、だがぼやけたりもしない。やくしまるファンとしても納得の表現だ。

山下達郎『GO AHEAD!』(「BOMBER」収録)

リズムのガツンとした曲も聴いてみようと、山下達郎さん「BOMBER」を聴いてみると、ベースのスラップの素直なアタック、ドラムスのタイトな抜けで、リズムのソリッドさとその中でのグルーヴをしっかり再現してくれる。

また、音を分離させすぎず、全体がまとまって馴染んでグルーヴを叩き出す、アナログ録音の強みを生かした(現代的ハイレゾ的ではない)録音についても、しっかり引き出すことを確認できた。音を無理やりカチッとさせて分離をさせてしまうようなこともない、素直な再現性も備えている。



エレコムのイヤホンやヘッドホンの強みは、むやみに個性的であろうとしない姿勢にあると思えてならない。「スタンダードで十分なクオリティのものを、適切な価格で提供する」という思想、そしてそれを実際の製品で成し遂げていることには大きな価値がある。

(高橋 敦)

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