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高橋敦が実力に迫る

【レビュー】ケンウッドの新イヤホン「KH-CRZ70/CRZ500」両者の音質傾向の違いをチェック

公開日 2015/08/27 10:45 高橋 敦
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2009年春以来の新モデルで、イヤホン&ヘッドホン分野において改めてのスタートを切るケンウッド。イヤホンは「KH-CRZ700」と「KH-CRZ500」の2モデルをラインナップしている。なお、ヘッドホン2機種に対してもレビューしているのでそちらも参照してほしい。

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「KH-CRZ700」(左)と「KH-CRZ500」(右)

さて、イヤホン2モデル共通の要素としてはまず、本体からケーブルまでをつなぐパーツが「スタイリッシュスタビライザー」として長めに作られているところが特徴的だ。着け外しするときのつまみやすさ、装着中の安定感を高める狙いとのこと。メインハウジングは「高密度ハウジング」とされており、素材は明らかにはされていない。例えば高比重に配合された樹脂等ではないかと思うが、いずれにせよ制振性を高めることが狙いだろう。

外観デザインとしては、まず配色は新生ケンウッドイヤホン&ヘッドホンの全モデルがブラック&レッドで統一されている。またヘッドホンのハウジングのスピン加工(同心円の刻み込み)とは異なるがイヤホンのハウジングにもラインが刻まれており、そこでも統一感を出している。そして「KENWOOD」ロゴから印象したRED(赤▼)マークがポイントだ。機能面では1ボタンのリモコン&マイクを搭載しており、スマートフォン対応も抜かりない。

「KH-CRZ700」はイヤホンの2モデルのうち、技術とコストをより投入した上位モデル。スタンダードモデル「KH-CRZ500」に対する上位モデルならの「上乗せ」部分は何かというと、主なところでは3つある。

KH-CRZ700

まずはドライバーが「ダブルネウジウムマグネットドライバー」となること。磁力の強化や配置の変化によってドライバーの駆動力、その力強さと正確さを高める狙いだろう。

続いての「アンチバイブレーションステンレスリング」は、ステンレス材の質量やハウジングとの素材の違いによる異種効果で制振性を高めるパーツと考えらえる。

最後はメインハウジングに追加設置された「バス・ポート」だ。ハウジングを内外での空気の流れや圧力を適切に制御することで低域を調整、主に増強させる手法。前述の二つの技術が音をソリッド傾向で強化させそうなタイプのものなので、それらとのバランスも考慮してチューニングされているのではないかと思われる。

KH-CRZ700の構造図

聴き始めてすぐに驚いたのだが、ベーシックな部分を共有するスタンダードモデルCRZ500との音の違いが想像以上に大きい。CRZ500はソフトタッチで中低域重視という印象だが、こちらCRZ700はそのソフトタッチのニュアンスは残しつつ音像の明瞭度を高め、全体としてもクリアな印象を出してくる。

相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」だと、バスドラムの柔らかく豊かな空気感は出しつつ音像本体をぼやけさせず抜けも確保といった感じだ。ハイハットシンバルの刻みも、やはりソフト傾向ではあるが、その音色やリズムの精密さをより感じさせてくれるものとなっている。全体のバランスも低域から高域まで過不足なく、極端な得手不得手はなさそうな整ったサウンドだ。

一方の「KH-CRZ500」は2モデル構成のうちのスタンダードモデルだ。外観的には上位モデルとほぼ同等だが内部技術面での差異は小さくなく、結果、音の面でも個性が分かれている。

KH-CRZ500

サウンドの方向性としては、なかなか大胆に中低域側に寄せている印象だ。ベースやバスドラムのさらに下で空気感を醸し出す重低音的なローエンドではなく、ベースやバスドラムの音の本体の太さや厚みを出す帯域に重心がある。例えば、現代的なグルーヴやサウンドよりも、ファンクやディスコのグルーヴやサウンドに合いそうなイメージだ。ベースの音像をでっかくして力ずくで踊らせてくれそうな中低域。

KH-CRZ500の構造図

ただその中低域も高域も明瞭さが少し足りないことは否めない。なので音の情報量が必要な現代的な曲を相手にするとそこは少しきびしい。ただ代わりに女性ボーカル等の耳に刺さる成分をソフトに抑え込んでもくれるので、それらが苦手な方には合うかもしれない。

土台を同じくしつつもここまでのサウンドバリエーションを展開してくるとは、嬉しい予想外として歓迎したい。

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