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9chパワーアンプを独立構成し、徹底したノイズ対策を施す

デノン「AVR-X7200W」を山之内正がレビュー − アトモス対応の最上位AVアンプ

公開日 2015/02/03 10:09 ファイル・ウェブ編集部
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■映画BDのサラウンド再生は充実したエネルギー感が魅力

誇張のない自然な音調で音楽を表情豊かに再生する一方で、映画BDのサラウンド再生では内側から溢れ出るような充実したエネルギー感が聴き手に強いインパクトを与える。『007 スカイフォール』で地下鉄が飛び込んでくるまでのシーンをいつもの音量で再生していたのだが、その場面のクライマックスで到達する音圧感が思いがけないほどに大きく、ウーファーやサブウーファーから放たれる空気の物量の大きさに圧倒されてしまった。ダイナミックレンジとスケールの大きさはもちろんだが、効果音の立ち上がりに強いエネルギーが乗っているため、衝撃音に強烈なリアリティが生まれるのだろう。金属同士がぶつかり、きしむ音の恐怖感をこの場面からこれほどリアルに味わったのは初めての体験だ。

デノンのユニバーサルプレーヤー「DBT-3313UD」と組み合わせて、BDソフトの視聴を行った

絶対的な振幅の大きさはそのまま表現の起伏の大きさにつながる。ヴェルディの『ドン・カルロ』では合唱の重層的な響きがオーケストラと見事な対比を見せ、劇的な緊張の高まりをストレートに伝えてくる。オペラやオーケストラのライヴ演奏をサラウンドで再生したときのスケールの大きさは、まさにフラグシップ機ならではの余裕を示している。

映画BD『007 スカイフォール』

アトモス再生では心理描写までを繊細に再現してくれる

ドルビーアトモスによる表現領域の広がりは、『トランセンデンス』の象徴的なシーンから聴き取ることができる。台詞に加えた音響効果がウィルとエヴリンの間に生まれる心理的な葛藤を巧みに引き出し、二人の間の距離や隔絶を見事に表現しているのだ。

映画BD『トランセンデンス』(Dolby Atmos収録)

トップスピーカーを活用すれば、物量と移動感で聴き手を圧倒するのは難しくないが、心理描写や感情の動きを音で表現する方がずっと深い刺激を与えてくれる。本機が再現する高さと広がりの描写はとても繊細で、強い説得力を持っていると感じた。

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