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9chパワーアンプを独立構成し、徹底したノイズ対策を施す

デノン「AVR-X7200W」を山之内正がレビュー − アトモス対応の最上位AVアンプ

公開日 2015/02/03 10:09 ファイル・ウェブ編集部
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■徹底したノイズの排除とセパレーションの向上

音質を左右するもう一つの重要なデバイスと言えばDACだが、本機は新たに旭化成の「AK4490」を採用した。DSD音源への対応など、ハイレゾオーディオをカバーする能力の高さはもちろんのこと、この最新DACの基本性能には十分な余裕がある。さらに、DAC用に専用基板を用意して映像回路や他のデジタル回路と物理的に離し、干渉を抑えている点も見逃すことはできない。この後で紹介するパワーアンプ基板の構造もそうだが、徹底したノイズの排除やセパレーションの向上が微小信号の再現性を高め、最終的な音質の改善に確実な成果を上げるはずだ。

各チャンネルを独立基板としたパワーアンプ部は左右対称にレイアウト

「9chモノリスパワーアンプ」を採用

9chのパワーアンプ回路をチャンネルごとに独立した基板で構成したモノリスコンストラクションは、各チャンネル間の影響を小さくし、セパレーションを高める効果が期待できる。ドルビーアトモスの3次元表現は微小信号の再現性に大きく左右されるため、セパレーションの改善は筐体の入念な振動対策と並んで音質向上に寄与するはずだ。

■2ch再生では透明感の高い響きを引き出し、ディテールと量感をバランス良く再現

まずはCDなどステレオ音源で本機の再生音を確認する。中低域に豊かなエネルギーがそなわるエルガーのチェロ協奏曲を本機で聴くと、重心の低いバランスを忠実に再現しつつ、AVアンプの再生音としては異例と言っていいほどの透明感の高い響きを引き出すことができた。ディテールと量感をバランス良く再現し、どちらか一方に偏ることがないし、音だけ聴いていると、まるでピュアオーディオのアンプで鳴らしているような質感の高さまで実感できる。

試聴はデノン本社の試聴室にて行った

ジャズボーカルの血の通った潤い豊かな音色と弾力的なウッドベースの組み合わせも見事な対比を見せ、付帯音の少なさと音のインパクトの強さを印象付ける。声や楽器の音の立ち上がりを正確に再現することで、それぞれの音の音色や言葉の発音を色付けなく聴き手に伝えるのだろう。ステージと聴き手の間に介在する再生装置の存在を忘れさせるようなダイレクトな感触も本機の長所に数えることができる。

CD:カティア・ブニアティシヴィリ『マザーランド』

ピアノの独奏から豊かな表情を引き出すことにも注目したい。カティア・ブニアティシヴィリの『マザーランド』は表情の起伏の大きさと音色の美しさをどこまで引き出せるかが再生システムの課題だ。余分な演出を抑えた忠実度の高いオーディオ機器で聴くと、本来の表情が自然に浮かび上がってくるのだが、そうではないシステムで聴くと繊細な表情の一部しか伝わってこない。X7200Wはピアノの音色とダイナミクスの豊かさを自然に引き出す素直な表現力があり、ブニアティシヴィリの演奏の特徴をしっかり聴き取ることができた。

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