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天然のアメリカン・ウォールナット材を使用

デノンのポータブルヘッドホン「AH-MM400」をレビュー - 木製ハウジング採用の上位モデル

公開日 2015/01/20 13:48 中林直樹
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■低域から高域までめいっぱい使ったピアノの演奏を鮮やかに再現する

ではポータブルオーディオプレーヤー、Astell&Kernの「AK120II」とつないでハイレゾファイル聴いてみたい。まずは1950〜70年代にかけて活躍した、ジャズトランぺッター、リー・モーガンの『The Gigolo』だ。

Lee Morgan『The Gigolo』(192kHz/24bit/e-onkyo music)

今からちょうど50年前、1965年の録音である。それをどのようにハイレゾ化したのかは気になるところだが、演奏そのものはモーガンのアルバムの中でも屈指のものだ。彼の持つ、いやジャズに本来的に備わっている不良っぽさが全曲に迸っている。メンバーはモーガンの他、ウェイン・ショーター(テナーサックス)、ハロルド・メイバーン(ピアノ)、ボブ・クランショウ(ベース)、ビリー・ヒギンズ(ドラムス)。冒頭の「Yes I Can, No You Can't」は、これまでいったい何度聴いたことだろう(テーマはもちろん、フロント3人のソロパートまで口ずさめるほどだ)。AH-MM400で聴くと、イントロのベースやドラムスから、すでに演奏が弾んでいるのが感じられた。

ケーブルは着脱式を採用し、マイク付きリモコンを搭載する

特にベースラインのかっこよさがこの曲のポイントのひとつなのだが、それを太く、かつタイトに聴かせてくれる。トランペットとサックスが奏でるテーマ部もそれぞれのつやのあるプレイが耳に届く。さらに、サックスのソロは中高域の伸びの良さが印象的だった。また、モーガンのソロでは、トランペットへの意気の込め方、強弱が鮮明に表現される。それはジャケット写真の表情と結びつくようだ。

しかし、最も良い仕事をしているのはメイバーンである。でっぷりとした体格で、しかも強面なのだが、実に華麗な音を繰り出すことで知られるピアニストだ。彼の低域から高域までを目一杯に使ったプレイを、このヘッドホンで存分に堪能することができた。そして、ここでも中高域に煌めきが乗る。また彼がバックに回った際に、音楽を装飾する細やかでニュアンスに富んだ演奏をしていることも発見できた。これは長年のリスナーとしても大きな収穫である。

ベロア地のキャリングポーチも付属する

ケーブルはL字型のステレオミニ端子を採用

■各パートの音色をカラフルに表現。猛然としつつ決して荒れることがない

さて、先ほどジャズの不良性と言ったが、それをあたかも現代風にアップデートしているかのような日本のバンドがある。SOIL&"PIMP"SESSIONSだ。彼らの最新アルバム『Brothers & Sisters』もハイレゾで手に入る。そこから「Shout!!」を聴いてみる。リズムセクションを敢えてループさせ、その上をサックスやトランペット、ピアノが自由に跳ね回る。ここで強く感じたのは、ホーンセクションの立ち上がりの良さだ。耳の奥までぐっと迫ってくる。また、各パートの音色がカラフルで、猛然としていながら、サウンド面でも非常に練られていることも確認できた。十分に迫力を感じさせるが、決して荒れることがないのもこのヘッドホンの長所だろう。

SOIL&“PIMP”SESSIONS『Brothers & Sisters』(88.2kHz/24bit・e-onkyo music)

ハチスノイト『Universal Quiet』(24bit/44.1kHz・e-onkyo music)

以上の2組は以前から知るアーティストだ。しかし、ハイレゾ配信サイトを何気なくスクロールして、思いもよらない才能に出くわすこともある。つい先日のこと、ototoyでハチスノイトという女性アーティストを見つけた。彼女のアルバム『Universal Quiet』は、これまで僕が全く体験したことのない音世界が広がっていた。少しばかり戦慄を覚えたほどだ。というのも、すべての楽曲が彼女の声やブレス、ささやきなどを中心として構成されているからだ。おごそかでありながら、官能的でもあり、密やかでありながら、聴く者を包み込むようなパワーも感じる。特に「matematika」は、耳をくすぐられるような感覚に誘ってくれる。音場も豊かだ。また、微細な音の積み重ねでハチスノイトの世界が構築されていることもひしひしと伝わってくる。それは本機がアラウンドイヤータイプで密閉型であること、そして遮音性能が高いことにも起因しているはずだ。

誇張がなく、丁寧にサウンドを描き出すAH-MM400。そのスタンスはデノンの他のコンポーネントとも重なり合うものだ。音楽再生に対するアプローチが全くぶれない、名ブランドならではの品格さえ感じさせた。

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