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装着感からサウンドまで詳細レポート

フィリップス“Fidelio“「X2」レビュー − 進化したフラグシップ開放型ヘッドホン

公開日 2014/12/26 10:42 長谷川教通
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開放型らしい素直さと量感を両立させた低音再現に驚いた

そうした音作りの方向性は、“Fidelio”X2を聴きはじめて最初に気がつくところで、まずカサンドラ・ウィルソンのアルバム『ニュー・ムーン・ドーター』から「奇妙な果実」。1995年録音のジャズ・ボーカルの名盤を192kHz/24bitのハイレゾ音源で聴く。これは参った。ロニー・ブラキシコのベースがズシッと腹にこたえる。ベースの野太さをこういう音で聴かせてくれるのか。弾けるようなピチカートに重みが加わり、ベースのボディ感がリアルなのだ。低域はそうとう伸びているだろう。いかにもオープン型らしい素直さだが、その一方で量感を十分に感じさせる。このあたりが音作りの肝だ。


そしてブランドン・ロスの冴えたギターが右chから、グラハム・ヘインズの吹くコルネットがいくぶん左chの奥の方から抑えた音色で入ってくる。この立体感のある音場は、ヘッドホンではなかなか聴けない。そしてカサンドラのボーカル。このダークでジャジーな音像は、中低域の解像度が高くないと描き出せない。

ゴールデンイヤーが大切にする音質評価のスタンダード

フィリップスには、製品の品質や音質を評価し、開発をリードするゴールデンイヤーと呼ばれる音のエキスパートが重要な役割を担っている。厳しいトレーニング項目と評価基準をクリアし、最終試験に合格した者だけがゴールデンイヤーとして活躍することができ、全世界に46名しかいない。

世界に46人しかいない“Golden Ear”の1人であるマシュー・ドーレ氏の来日時の1枚

もちろん“Fidelio”X2も、ゴールデンイヤーがその開発に徹底的に関わっている。彼らの音への感覚はきわめて鋭いが、だからといってそれぞれが個人的な好みで音質を評価しているわけではない。何より自然で拡がりのある音場、ディティールの再現とノイズ感のなさ、明瞭で伸びのある低音といった音質評価のスタンダードがきわめて大切にされている。それは、相反する要素をいかに高次元でバランスさせるかという困難な課題を克服するプロセスにほかならない。

バランスを最優先させながら鋭さやスピードが不足することがない

そこで宇多田ヒカルの『シングルコレクション』や木村カエラの『ROCK』などの96kHz/24bit音源を聴いてみる。もっとブルンブルンとブーストされたベースの鳴りが欲しいというリスナーもいるだろう。あるいはもっと鋭くて耳に突き刺さるメタリック感が欲しいリスナーもいるだろう。しかし、フィリップスのゴールデンイヤーはあくまでバランスを最優先させる。だからといって、鋭さやスピード感が不足するのかといえば、そんなことはない。どんなにハードな音楽であっても、難なく鳴らしてしまうのだ。この万能性や柔軟性こそX2の最大の特長と言えそうだ。

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