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【特別企画】ミックスウェーブがプロデュースする高品位デジタルオーディオの世界

“日本限定”仕様の秘密とは? Unique Melody初ユニバーサルイヤホン「MAVERICK」「MASON」に迫る

公開日 2014/11/28 11:30 記事構成:ファイル・ウェブ編集部/レビュー執筆:高橋敦
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【3】 <製品レビュー>MAVERICKとMASONを聴く

ダイナミック+BAのハイブリッド機 「MAVERICK」を聴くText by 高橋敦


イヤーモニター系では珍しいハイブリッド型。しかも低域にダイナミック型+BA型を割り当てるという独特の構成。その音を聴く前からすでに興味深いイヤホンだ。

そして実際に聴いてもやはり興味深い。僕の印象だと、ハイブリッド構成機の多くはダイナミック型をベースにその弱みをBA型の追加で補強するコンセプトで実際にそういった音調だ。しかし本機はBA型マルチ構成をベースにその弱みをダイナミック型の追加で補強している印象。いかにもな「ダイナミック型感」は強調されておらず、全体の印象は単に良質なマルチBAに近い。しかし加えてやはり、それだけでは得られない低域の感触も備えている。

高域は極めて良質なシャープさ。坂本真綾さん「30minutes night flight」相対性理論「上海an」など刺さる成分を強めに出して歌われている曲でも、それを下手に和らげずに出しつつ、しかし心地よいと感じさせる。シンバルの薄刃の美しさも文句なし。音色と空間の透明感、左右の広がりと余白の確保によって、細部の見え方や全体の空間性、その中での解像感も見事だ。

中低域は太さ量感は不足はさせないが強く押し出しもしない。おかげで無駄なく、ドラムスのスパンとした抜け、ベースのクリアな見え方といった要素をハイレベルに確保。それでいて、でしゃばらずさりげない厚みや深みも無理せず余裕で備える。この「無理せず余裕で」感を支えているのがダイナミック型ドライバーなのだろう。

ここまでの説明だと繊細系の印象かもしれない。しかし例えば喜多村英梨さん「掌 -show-」「凛麗」の高密度メタルサウンドにもさらりと対応。高域の特徴はディストーションギターのエッジ感、シャープさに生かされる。高密度サウンドに対しても空間の余裕を残し、情報量を損ねない。キレてクリアな中低音は低い音域で複雑に動くベースとドラムスを綺麗なアタックでクリアに描き出し、厚み深みも自然に備える。同じくでPerfume「GAME」とも相性がむしろよい。率直に言って実によい。癖が強いわけではなく「普通にハイレベル+α」なモデルだ。

12基のBAドライバー搭載モデル 「MASON」を聴くText by 高橋敦


発売直後にチューニングの見直しという異例のBA型12ドライバー構成モデル(関連ニュース)。超多ドライバーモデルのチューニングの難しさと同時に、ギリギリまで追求する開発の熱意も感じる。ギリギリというか間に合ってないのだが、とにかく熱い。

もちろん今回はチューニング後の最新アップグレード版の試聴を行ったが、その熱さに比例せず、サウンドは冷静。音調はやや暖色で全体の雰囲気も淡白ではない。それでいての「冷静」という印象はそのフラットさ故だ。抜けた帯域がなく濃厚、しかし過剰な厚みはない、広くそして見事な帯域バランス。それだけではない。例えばシャープさや抜けやキレはMAVERICKと比較すればそれを強く意識させるようなものではない。他の要素についても同じだ。すべての要素すべての感触においてハイレベルだがどれかを突出させてはいない。つまりフラットだ。

高域はMAVERICKがシャープとすればややソフトでほぐれた印象。相対性理論「上海an」坂本真綾さん「30minutes night flight」のボーカルも少し優しく感じる。エレクトリックギターの音色も硬質な透明感ではなく温かみを帯びた艶。といってもMAVERICKと比べればであって、イヤホン全般として見てソフトすぎることはない。余白をすっきりと生かすMAVERICKに対して、背景を空気感で満たすような空間表現も印象的だ。空間の広さはこちらも広い。

中低域の厚みや深さはMAVERICKよりむしろこちらの方がわかりやすい。良し悪しではなく質が異なり、MAVERICKはガツンと骨太の芯、こちらMASONは広がりのある豊かさといった感じだ。高域の傾向も含めて、高密度メタルサウンドの喜多村英梨さん「掌 -show-」との相性は個人的にはMAVERICK。一方MASONの方が合うと感じたのはDaft Punk「Get Lucky」。攻撃的でなく暖かくおおらかなグルーヴ感、多弦ベースの低い帯域までの充実した厚みの確保などがそれにフィットする。

参考までに最終チューニング前、初期出荷分の音も確認してみた。そちらはアップグレード版よりも音色と音声が少し明るい印象で、またベースの太さやドライブ感にプッシュを感じた。なお、本機を取り扱うミックスウェーブでは、初期出荷モデルを購入したユーザーに対して、チューニング後のアップグレード版と無償交換するキャンペーンも期間限定で実施している(関連ニュース)。もし初期出荷モデルを購入した方は、機会があればぜひアップグレード版と聴き比べてみてほしい。

■まとめ

耳とのフィットが万全であり設計意図通りの音質、装着感、遮音性を発揮できることがカスタムの優位でありユニバーサルの不利だ。しかし、相性の問題を多分に含むので誰でも安心というわけではないが僕に対しては、この両モデルはユニバーサルとしては十分以上にうまくフィット。このあたりにはカスタムで培ったデータや経験も反映されていることだろう。であるので両モデルの性能をおおよそ存分に確認できたと思う。

日本市場の期待に応えての初のユニバーサル型モデル。それを全く異なるドライバー構成の2モデル同時開発で進め、それぞれにそれぞれの意義、個性を(「フラット」もその高みに達すれば個性だ)持たせることに成功している。実感し、納得できたのはそこだ。ハイエンドユニバーサルにまたひとつ、いやふたつの新たな有力選択肢が生まれた。

(レビュー執筆:高橋敦 / 記事構成:編集部 杉浦みな子)


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