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【特別企画】

“Bluetoothの常識をくつがえす”高CPヘッドホン・TDK Life on Record「WR780」を試す

公開日 2014/08/04 11:00 山本 敦
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約2年ぶりに登場したオーバーヘッド型ヘッドホンは
高CPなBluetooth対応モデル!


TDKといえば、筆者にとっては幼少の頃からカセットテープなど憧れのオーディオ記録メディアのブランドだった。家庭用Blu-rayレコーダーの時代が幕を開けた頃には、いち早くコンシューマー向けの記録用BDディスクを発売し、先駆的なポジションから市場をリードしてきた。2007年に新たなスタートを切ったTDK Life on Recordブランドからは、“プレミアムシリーズ”に代表されるフラグシップのイヤホン・ヘッドホンが発売され、これに“Boomboxシリーズ”をはじめとした、音質・デザイン・コストパフォーマンスの三拍子が揃ったスピーカー製品が加わり、デジタルオーディオ時代の高品位ブランドとして、また新たなファンを獲得してきた。

そのTDK Life on Recordから、約2年ぶりにオーバーヘッドタイプのヘッドホン新シリーズが登場する(関連ニュース)。今回レポートする「WR780」は、Bluetoothワイヤレスヘッドホンの最上位モデル。大口径ドライバーや肉厚イヤーパッドの採用、NFCへの対応や、有線ヘッドホンとしても使える利便性を備えつつも、実売9,500円(税抜)前後という価格を実現。コストパフォーマンスの高さにもぜひ注目したい製品となっている。

「WR780」¥OPEN(予想実売価格・税抜9,500円前後)

独自のサウンドチューニングで
あらゆるジャンルの音楽をオールマイティに高品位再生


音づくりの面では「TDK Life on Recordシグネチャーサウンド」のコンセプトを基本とした高音質化を図った。開発をリードしてきた米国イメーション本社のチームは、各帯域間での良好なバランス感覚と、あらゆるジャンルの音楽をオールマイティに高品位再生できる柔軟な対応力をアピールしている。

密閉型のイヤーカップには40mm口径の高磁力ネオジウムマグネット採用ドライバーを搭載。ノイズに対する高い遮音性を確保しながら、タイトな低域とエネルギーに満ちた中域のサウンドを実現している。

目を惹く肉厚なイヤーパッドは、ソフトで着け心地が良い。さらに密閉性が高く音漏れも防いでくれる。

ヘッドバンドは無段階で調整可能なタイプ。

肉厚なイヤーパッドの個性的なルックスに目を奪われるが、実のところは密閉感を高めながら音漏れを防ぐとともに、柔らかな肌触りのイヤーパッドによる心地良いフィット感が得られるよう熟考を重ねた末に辿り着いたデザインである。身に着けてみると、耳元をソフトに覆うイヤーパッドが非常に心地良い。オン・イヤーの密閉性と、包み込まれるようなアラウンド・イヤーの安定した装着性を絶妙に兼備している。見た目の重厚さとは裏腹に、本体がとても軽量につくられていることも助けて、長い時間リスニングしてみても耳元や頭への負担はほとんど感じられなかった。ヒンジの部分から本体をコンパクトに折り畳めるので、可搬性も高い。

左側のハウジングには曲送り/曲戻しや音量調整、着話ができる操作ボタンを備えている。

右側のハウジングには電源ON/OFFボタン、充電用USB端子を備えている。

Bluetoothの規格はVer.2.1+EDR対応。HFP/HSPのプロファイルもサポートしたことでハンズフリー通話も行える。便利なNFCによるワンタッチペアリングをサポートし、スマートフォンなどポータブルオーディオ機器との連携性も高い。付属するマイクコントローラー付ケーブルを使わなくても、本体のボタンだけで音楽再生やボリューム調整が行えるので、ワイヤレス接続しているプレーヤー機器はバッグの中に入れたままで大抵の操作がまかなえる。ボタンはクリック感がしっかりとしていて、操作のレスポンスも俊敏だ。

折りたためるので持ち運びにも便利だ。

NFC対応機器とならワンタッチでペアリングが行える

内蔵充電池はフル充電で最大約8時間の連続リスニングができる。さらにバッテリーをONにしなくても、付属の着脱式ケーブルをつなげばワイヤードで音楽リスニングが楽しめるので、不意に電池が切れたときも安心だ。

付属のリモコン付きケーブルを装着すれば、通常のヘッドホンとして使うこともできるのは非常に便利。


気になる音質をチェック。
低音の充実ぶりは同価格帯でもトップクラス

Bluetooth接続時と有線接続時の音質変化もテスト

はじめにiPhone 5sでBluetoothワイヤレス試聴を行った。TOTOのアルバム「Falling in Between」からタイトル曲『Falling In Between』は、スティーブ・ルカサーのツヤのあるエレキギターのフレーズを力強く、かつ丁寧に再現。パワーのみなぎるボーカルはハイトーンの伸び方も消え入り際まで濃厚だ。分厚く重なる中低域がダイナミックなロックのステージを描き出す。全体的に情報の密度が濃いのに、一方で特定帯域の強調感がなく自然なバランスを備えた音づくりだと思う。

Madonnaの『Hung up』では立体的な音像が浮かび上がる。低域は余計な付帯音がなく、幾層ものレイヤーが積み重なるようにうごめく複雑な模様が見えてくる。そこに鋭く切れ込んでくるようなボーカルの鮮やかさにも注目した。強弱のコントロールに長けた弾力のあるビート感はダンスナンバーにピタリとフィットする。

Bluetooth機器とのペアリングは、中央の「機能操作」ボタンを6秒ほどプッシュ。ビープ音が鳴り、一番上のインジケーターが赤と青の交互点滅になったら接続機器検出モードになる。一度ペアリングした機器は記憶されるので、使用2回目からは自動的に接続される。

なお、同じ楽曲をケーブルをつないで聴いてみても、音質の傾向にブレはなかった。電池が切れてしまってもワイヤレスと変わらない音質で楽しめる安定感がある。

ハイレゾ音源はケーブルをつないでAstell&KernのAK100でテストした。はじめにマイケル・ジャクソンのアルバム「XSCAPE」から『Slave To The Rhythm』(96kHz/24bit FLAC)を試聴。各帯域の情報量と強弱の濃淡を余力たっぷりに再現。終始激しく躍動するリズムが飽和することなく、タイトで輪郭の引き締まった筋肉質な演奏が展開される。ボーカルも鮮度を保ったまま、まっすぐ耳の奥に届いてくる。鳴らし込むほどにサウンドのユニフォーミティはさらに向上しそうだ。

山崎まさよしのアルバム「LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾」から『ベンジャミン』(192kHz/24bit FLAC)では、まるで耳元で謳っているようなボーカルの臨場感。ハイレゾならではの解像感や立体感はいわずもがな、リアリティに偏重するのではなく、花の香りがふわっと漂ってくるような、山崎まさよしの優しく柔らかい声のタッチが絶妙なバランスで再現さる。アコースティックギターのアルペジオも、伸びやかな旋律を奏でながらゆったりと空間に膨らんでいく。長音のサスティーンも消え入り際の柔らかなニュアンスに本機の良さがある。厚手のブランケットに包まれたように、穏やかな人肌の温もりを感じさせる。

Daft Punkのアルバム「Random Access Memory」から『Doin' It Right』(88.2kHz/24bit FLAC)も聴いた。重厚な低域だが、足取りは決して鈍重ではなく、歪みがなくストレートでスピード感もある。シンセサイザーとボーカルが分厚く重なり合うパートもそれぞれの音が輪郭を保ちながら正確で均整の取れたバランスの良い演奏を奏でる。

同時発売となるワイヤードヘッドホンの「ST560s」よりも、音の密度感という観点では本機が一枚上手という感触を得た。特に低域の充実ぶりは同クラスのヘッドホンと比べてもトップクラスと言えるだろう。ハイレゾ再生は音の密度感やエネルギーの再現力に本機ならではの特色を感じさせる。方や細部のニュアンスによりフォーカスして聴きたいならST560sも良い選択肢になる。TDK Life on Recordから選び甲斐のあるヘッドホンのラインナップが一気に充実したことを歓迎したい。

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