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名機の魅力を高橋敦が再検証

実売約4千円、“定番中の定番”機。フィリップス“キューナナ”「SHE9710」レビュー

公開日 2014/07/15 11:00 高橋 敦
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そしてSHE9700の成功は、開発において厳しい取捨選択が必要となる低価格帯の製品だからこそ、こうしたフィリップスの姿勢がより純粋に結晶した大きな成果と言えるかもしれない。

■ターボバス孔によって低音再現を高める

今回紹介する「SHE9710」シリーズは、そのSHE9700の後継モデルだ。型番末尾がカラーバリエーションを示している点も同様で、SHE9710がブラック、SHE9711がホワイト、SHE9712がレッド、SHE9713がブルーとなる。

外観や内容は大きな変更はなく、いわゆるマイナーアップデート機だ。変更点は、ケーブルは0.6m+延長0.6mというやや古い仕様だったところを普通に1.2mに、プラグをストレートからL字に変更というくらい。使い勝手の面でのちょっとした改善だ。マイナーアップデートというとつまらなく感じたかもしれないが、逆にそこが本機の強み。基本部分には手を加える必要なし、マイナーアップデートで十分と判断されたその事実が、本機の完成度の高さを示している。


「SHE9710シリーズ」は名機SHE9700をブラッシュアップしたモデルと言える(写真はSHE9713)

イヤーピースを外したところ
確認程度に触れておくと、特徴的な技術としては、密閉型の筐体に設けられた「ターボバス孔」によって低音の再現性を引き上げている。ドライバーは中口径のダイナミック型だ。微妙な角度設定など人間工学に基づいたデザインと軽量さによって装着感と遮音性も確保する。

■実際に視聴してみて、改めて気づいたこと

実際に聴いてみると、聴き始めたときは低音の弱さが少し気になった。ところが試聴用の曲を進めていくとその印象がどんどん薄まっていく。そして最初の曲に戻ると「あれ?低音しっかり出てるし全体にいいバランスじゃん!」となった。推測するに必要な帯域は実は十分には出ていて、それが耳になじんでくると人間の感覚の方からもそれに寄り添い、良好なバランスに落ち着くのではないだろうか。

その上で印象的なのは、スパンとしたキレと抜けだ。ドラムスはまさにそれで、無駄な膨らみや広がりがなくてスピード感がある。そのおかげか手数が極端に多い場面でも、その膨らみや響きが滞留して音場に残りそれを狭苦しくすることがない。

次ページ普通に良い、しかし物足りなさも感じない

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