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【特別企画】リケーブルで音質カスタマイズ

「リケーブル」の効果を検証 − Beat Audio/ALO audioの注目モデルでテスト

公開日 2014/07/08 10:40 記事構成:ファイル・ウェブ編集部/レビュー執筆:高橋敦
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 Beat Audioのイヤホンリケーブル製品レビューText by 高橋敦

●Beat Audioとは?
2010年創業。当初から他の種類のケーブルでもその他のアクセサリーでもなくリケーブル製品に注力しているという、筋金入りのリケーブルブランドだ。彼らはその製品を一貫してハンドメイドで製造している。手作業での製造というだけなら珍しくもないし、有り難くもない。しかし彼らの言う「ハンドメイド」とは、「熟練の手仕事によってのみ得られる品質を求めてのハンドメイド」だ。実物を手にすればその仕上がりを実感できるだろう。日本向けのレギュラーラインナップは3モデルだが、導体素材がそれぞれ異なりバリエーションは豊か。プラグ形状のバリエーション=対応するイヤホンのモデルも幅広く取り揃えている。

▼Supernova

導体に銀を採用した看板モデル。同社ケーブルは外装として透明素材を採用しているが、それを通しての輝きも美しく、ルックス面からもまさに「看板」モデルにふさわしい。

Supernova

Supernovaを装着したところ

聴き始めた最初の小節で、そのスパンッ!とした抜けと切れにおどろかされた。高い音域の楽器のそれ、例えばシンバルのすばらしい薄刃さは、銀線なら…という期待に応えるものだ。しかし低い音域の楽器、バスドラムやタム、ベースの抜けのよさは、こちらの期待を軽く超えてきた。低音楽器といえども特にアタックの瞬間には高域まで含めて多様な成分が含まれており、その部分の再現性の向上がこういったところに貢献しているのかと思う。

もちろん、スネアドラムやハイハットシンバルの超細密複雑なフレーズを描き出す精細感、声やアコースティックギターの鈴鳴り感といった、高域の繊細かつ鋭い再現性の向上も大きい。また低音側だとベースの音像の明確さ、ほどよくゴリッとくる硬質さもよい手応えだ。

AK120IIとNW-ZX1での印象の違いとしては、ZX1との組み合わせの方がZX1の持ち味の適度なメリハリ感を強めに引き出し、高域の鋭さや低域の硬質さをより強めてくれる。AK120IIとの組み合わせでは、2.5mm端子でのバランス駆動もチェック。空間性に余裕が生まれ、音場の余白が広く確保される印象だ。その余白によって音の響きの成分などをより感じやすくなる。またベース等がぐいっと力を入れる瞬間のその力感も、駆動力の向上も感じられる。

AK120IIの2.5mmバランス出力端子と接続したところ

▼Vermilion

高純度無酸素銅にミネラル成分を含ませるというユニークな手法で導体の特性をチューニングしてあるモデル。いまどきのスタイリッシュなレッドとはひと味ちがう、味わい深い赤褐色のような色合いのルックスも魅力だ。

Vermilion

Vermilionを装着したところ

MKV→Supernova→Vermilionという順で試聴したのだが、最後にこのVermilionを聴き始めたときの、何というか「なじみのよさ」は印象的だった。導体素材として一般的な銅ならではの聴き慣れた音調をベースにしているおかげだろう。

しかしもちろんVermilionの魅力はそこにとどまらない。「ミネラル」からの連想であることは否めないが、このケーブルの耳当たりはまるで「天然軟水」のように心地よいのだ。水なので特別な味付けはないが、でも美味しい。高域の自然な伸びやかさでシングルコイルギターの艶や無駄のない響きを生かす。ベース等の低音は余計な膨らみを持たせないことで楽器としてほしい帯域を際立たせ、抜けや太さ、力強さを引き出してくれる。引き算でのチューニングといった感じだ。そういった感触も含めて、どの要素に耳を傾けても強引さはない。

AK120IIとNW-ZX1での印象の違いとしては、ZX1と組み合わせたときの方がよりパワフルだが、これはAK120IIとZX1の、後者の方が少しメリハリ系だというところがそのまま素直に現れたところだろう。「素直」もこのケーブルのキーワードのひとつだ。

▼Silver Sonic MKV

高純度銅に銀メッキを施した導体を採用する、Beat Audioのエントリーモデル。エントリーといっても導体素材の他は、同社オリジナルの小型で美しいプラグ等の基本的な特徴は上の価格帯のモデルと共通しており、仕上げのクオリティも同等だ。

Silver Sonic MKV

Silver Sonic MKVを装着したところ

標準付属ケーブルと比べると、高域の輝きを強めつつも、それを含めてその変化の幅は極端ではない。リケーブルの効果を実感させつつ違和感は感じさせないという、その兼ね合いのチューニングが巧みだ。

高域の変化を具体的に挙げると、シンバルは薄刃になって鈴鳴り感を強める。音色は明るくなり、ニュアンスとしては、キラッとかギラッとかいう強すぎる輝きではなく、シャリンといった軽やかな輝き。ボーカルも同じくよい具合にブライトになる。音がそのほどよい輝きを帯びることでか、音の細かな粒子というか成分も際立つ。そのおかげで例えば、スネアドラムのゴーストノートやバズといった演奏や音色の細かな表現が見えやすくなり、音楽の表情をより豊かに感じやすい。

低域側は、高域側の向上に対して相対的に、量的な存在感は少し控えめにはなる。しかし音色の明るさ、音像の明確さは低域でも発揮される。例えばベースの動きがくっきりと見えやすくて低域のリズムがびしっとするといった、堅実な向上を感じられる。AK120IIとNW-ZX1での印象の違いとしては、後者の方が高域の輝きをより強く感じた。ZX1の高域の表現傾向とこのケーブルで強められる部分が重なったのだろう。

次ページ続いて、ALO audioのイヤホンリケーブル製品徹底レビュー!

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