HOME > レビュー > 4K/60p・DSD対応、デノンのエントリーAVアンプ「AVR-X1100W」をレビュー

上位モデルと同等の機能性を備えた入門機の実力を検証

4K/60p・DSD対応、デノンのエントリーAVアンプ「AVR-X1100W」をレビュー

公開日 2014/07/01 10:55 野村ケンジ
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■7chアンプ搭載や4K/60p対応など従来モデルから大きく進化

このように、機能の部分では共通化されている兄弟モデル「AVR-X2100W」「AVR-X1100W」だが、価格がそれぞれ81,000円、57,500円(いずれも税抜)という開きがある。この点は拡張性や音質面で差があるところ。ちなみに、どちらのモデルも7chアンプ搭載だが、昨年のエントリー機「AVR-X1000」が5chアンプ搭載と考えると、本機のコストパフォーマンスがより際立つと言える。この価格で、4K/60pやネットワーク再生、Wi-Fi&Bluetooth内蔵など、メディアセンターとしての機能の充実は、はっきりいってエントリークラス、5万円台の製品としては望外の内容と言ってよいだろう。

その他の機能についても確認したい。HDMIについては、入力が1つ増えて6系統となった(出力は1系統)。フロントのUSBコネクターからの音楽再生についても、2.8MHzまでのDSDに対応した。音質面についても、ディスクリート7chアンプの搭載やコンデンサーやオペアンプなど各種パーツを厳選するなど、エントリー機ながら様々な配慮がなされている。


ディスクリートアンプを採用し、高品位パーツを用いるなど音質にもこだわりを見せる
■素直なキャラクターが好ましいサウンドでパワー感も十分

さて、実際のサウンドクオリティはいかがなものだろうか。BDソフトとNASからにネットワーク音楽再生の両方を試してみた。まず、BDは(やや古い作品ではあるが)サウンドチェック用の定番中の定番『ダークナイト』と、テレビシリーズながらも5.1chサラウンドを収録している最新アニメ『シドニアの騎士』。一方、ネットワーク再生に関しては、リニアPCMのハイレゾ音源、DSD2.8MHzの音源などを用意した。


『シドニアの騎士 一(初回生産限定版)』価格:\7,800+税【仕様】AVC/1080P 【音声】リニアPCM/ステレオ、ドルビーTrueHD/5.1chサラウンド、他
まずはBDソフトから。『ダークナイト』のカー・アクションでは、クルマの種類の違いよる走行音/エンジン音の差異などが、豊かな音色表現によってうまく描き分けられている。上位機に比べるとややエッジが丸い傾向はあるものの、決してキレが悪いわけではなく、パワー感も十分。何よりも、制作者の意図をそのまま表現してくれる、素直なキャラクターが好ましい。

そういった特色は、『シドニアの騎士』で一段と活かされている。2話冒頭の戦闘シーンでは、継衛(主人公が乗るロボット)の動きが迫力よく再現されているだけでなく、継衛とガイナ(敵の生命体)の“動き”が“音”によってもキャラクター付けされていることが手に取るように分かり、戦闘の様子が一段と把握しやすくなる。こういった、音響監督を務める岩波美和氏ならではの妙技を、この価格帯のAVアンプでもしっかりと感じ取られるのは驚くばかりだ。

続いて、NASからリニアPCM、およびDSDのハイレゾ音楽ファイルを再生してみる。AVR-X2100Wと比べると、ややS/Nやダイナミックレンジに物足りなさを感じるものの、解像感はしっかり確保されている。何よりも素直で自然な音色傾向がいい。PURE DIRECTモードを活用すれば、音楽ソースも十分に楽しむことができるクオリティーだ。


ネットワーク再生の画面
■クラスを超える素晴らしいパフォーマンス

正直な話をすると、5万円台のエントリーモデルということもあって、機能性はともかく、音質に関してはあまり期待していなかった。しかしながら「AVR-X1100W」はいい意味で予想を大きく覆す、素晴らしいパフォーマンスを垣間見せてくれたのだ。確かに物量投入の高級モデルにはかなわないものの、コンテンツを楽しむのに十分な情報量が確保されているうえ、片意地を張らない素直なサウンドキャラクターによって、映画も音楽も、分け隔てなく楽しむことができる。この価格帯で、ここまで楽しいAVアンプはそうそうない。単にエントリーという位置づけだけではもったいない、ハイクラスAVアンプユーザーのサブシステムとしても大いに活用したくなる、完成度の高い製品だ。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: