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質感の高いナチュラルな表現が魅力

音質と使いやすさを両立した先進的5.1ch対応AVアンプ「AVR-X1000」

公開日 2013/05/10 00:33 鴻池賢三
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本機はDENONブランドのAVアンプ製品群でエントリークラスに位置する5.1ch対応モデルである。同時に発売される7.1ch対応のAVR-X2000と比較すると、チャンネル数の違いの他に、パワーアンプ1チャンネル当たりの定格出力が80W(X2000は同95W)、HDMI入力数が5系統(X2000は同7系統)などの点で仕様が異なっている。

AVR-X1000

今回のAVアンプ新モデルの特徴であるデジタル系の音質対策は、本機も共通だ。聴感テストによって厳選された192Hz/24bit対応の新型DACの採用、周辺回路に高品質なシリコンウェファーで音質向上を狙ったオペアンプ、本機のためにチューニングされたカスタム仕様のオーディオ用コンデンサーを用いるなど、細部のブラッシュアップが図られている。

AVR-X2000が4Kアップスケーリングおよび4Kパススルーに対応する一方で、本機は4K非対応となっている。GUIもAVR-X2000と異なるが、音量調整や入力ソースの切り替えなど本機のステータス情報やセットアップ画面がHDMIで入力された映像にオーバーレイ表示でき、映像ソースの視聴を継続しながらメニューによる調整や状態の確認を行える点は同じである。

また、グラフィック表示が可能なGUIを活かし、本機の接続から初期設定までをテキストとイラストでガイドする「セットアップアシスタント」機能も新たに搭載された。画面に映し出されたガイダンスに従ってウィザード方式で進めることができので、AVアンプ入門者にも分かり易い。上位AVR-X2000と共通する美点だ。

自動音場補正は上位のAVR-X2000と同じく「Adyssey MultEQ XT」を採用し、付属のマイクを使ってスピーカーの有無やサイズ、距離、音量をなどの基本的な調整値を自動的に設定できるほか、最大8か所で測定し、解析および最適化することで、視聴者が多い場合も部屋の広範囲で平等に良好なサラウンド音場が得られる。

本機の背面端子部

まずはBDプレーヤーを光デジタル接続し、CD再生でベースとなる音質の素性を確認した。上位のAVR-X2000と同様に、デノンらしさでもあった低域の押し出しはやや控えめとなり、スッキリと端正で、キレや解像感に優れた表現をする。もちろん、低域のドライブ能力が低下したという意味ではない。音作りの方向性がよりニュートラルな方向となった印象で、筆者にはナチュラルで好ましく感じる。基本音質はAVR-X2000と似た傾向で、AVアンプとしてはウォームかつボーカルをふくよかに再現できる質の高さを持つが、厳密にAVR-X2000と比較すれば定位がやや曖昧で音量を上げるに従い、高域がやや耳触りになっていく感がある。しかし、本機の価格が55,650円であることを考慮すれば充分すぎるコストパフォーマンスである。

サラウンド再生はBD映画『ダークナイト ライジング』を視聴した。2chに再生に比べると重厚感が印象的である。オーケストラは重心が低く、地を這うような安定感で鳴らし切る。サブウーファーと各スピーカーの繋がりが良く、セリフの厚みを上手く引き出せているのが印象的だ。Adyssey MultEQ XTによる音場補正も効果を上げている。AVR-X2000が定位と移動感のクリアさを得意とするならば、本機は音場の繋がりによる包囲感が持ち味と言えるだろう。

マルチチャンネル収録の音楽BDとして『Legend of Jazz』から「They Can't Take ThatAway from Me」を試聴した。ギターの余韻に透明感があり、ホールトーンも感じられる。S/Nが良く解像感も申し分無い。楽器の音色に温かみと豊かさが感じられ、質の高さが伺える。

ネットワーク再生は、カーペンターズの「We’ve Only Just Begun」(FLAC 96kHz)を試聴。AVR-X2000に比べると高域が元気でハイレゾらしい音調だが、カレンの歌声はやや固く荒さも見える。これも価格帯を考えれば弱点と言うレベルではないので、AVR-X2000との差と捉えて、製品を選ぶ際の参考にして欲しい。

もうひとつ、エントリーモデルである本機で注目すべきは、セットアップの分かり易さだろう。スピーカーターミナルは横一列に配置されて結線がしやすく、色分けがされているので接続先を間違えにくい。加えて、前述の『セットアップアシスタント』機能も搭載している。こうした親切機能の相乗効果で、ホームシアター環境の構築を身近にしてくれる。

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